伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2022年4月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』人気連載の「レンズパラダイス」。2022年4月号の「レンズパラダイス」Other Shotsでは、ニコンの標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」と標準単焦点レンズ「NIKKOR Z 40mm f/2」をピックアップ。手ごろな価格で手に入る2本の描写性能をチェックする。
目次
ニコン NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
スペック
[マウント] ニコンZマウント [最大径×長さ] 約φ84×118mm [重さ] 約630g [レンズ構成] 13群16枚 [最短撮影距離] 0.35m [最大撮影倍率] 0.39倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ77mm参考価格 139,700円 (税込)
周辺まで緩さを感じさせない圧倒的な解像感
横須賀のソレイユの丘にて。画面左下の周辺部分を切り出しているが、絞り開放でもこの解像。カメラ内である程度の収差補正は行なわれていると思うが、4575万画素の「Z 7II」のピクセル等倍表示でもまったく解像の緩さや色にじみを感じない。
軸上色収差による花びら輪郭の色浮きもまったくない
今年はウメの開花が遅く、なんとか早咲きのウメを探して近郊の公園へ。画面下部に前ボケを入れ、テレ端絞り開放で主題となるウメを浮き立たせてみた。軸上色収差があると、ボケ気味になったウメの白い花びらの輪郭に色が浮くが、そうした気配はまったくない。
微ボケ領域でもうるさいボケになりにくい
これもテレ端開放で撮影したカットだが、撮影距離がそこそこ遠く、前後が大きくぼけないので、中途半端な微ボケが多くなりやすいシチュエーション。二線ボケの傾向が強いと、微ボケになった枯れ枝や幹が騒がしくなるが、このレンズは解像とコントラストが高い割に、微ボケはさほど騒がしくない。
パンフォーカス的な描写でナノハナ畑と青空を狙う
ソレイユの丘のナノハナ畑。真っ青な空に白い雲、そして目映いばかりのナノハナの黄色がキレイだったので、ワイド端までズームを引いて縦位置構図で撮影。手前のナノハナを中途半端にぼかしたくなかったのでF14まで絞って、画面中央よりも少し手前のナノハナにピントを合わせ、パンフォーカス的な描写を狙ってみた。
鋭い光条がしっかり伸びてくれるのも特徴
このレンズは逆光でゴーストやフレアが出にくいだけでなく、F11~16まで絞れば太陽に木の枝などを重ね合わさなくても、鋭い光条が伸びるのも特徴。この写真も、少し薄雲がかかっているにもかかわらず、細く鋭い光条がしっかり伸びてくれた。
極めて鋭い解像ではないぶんボケは穏やか
カリカリにエッジ立つような鋭い解像というわけではないものの、ピント面ににじみもなく、4575万画素の「Z 7II」でも解像性能にまったく不足は感じない。むしろ、カリカリし過ぎていないぶんボケも穏やかで、非球面レンズの輪線ボケや球面収差の過剰補正による二線ボケ傾向もほぼ感じない。
後ボケした葉の輪郭がにじみ、柔らかなトーンに再現
なんとなく撮ったカットだが、パソコンの大画面モニターで見ると、背景が大ボケしているわけでもないのに、ピントを合わせた葉が浮き上がって、なんともいえない立体感がある。後ボケになった葉っぱの輪郭が少しにじみ気味で、しかも階調が軟らかくトーンがよく出ているので、主題をジャマしないのだろう。
周辺部の点光源においても収差は生じていない
絞り開放の色収差や点像性能をチェックするため、横浜大桟橋からみなとみらい方面を撮影。開放F4とそれほど明るくないこともあり、周辺部の点光源も羽根を広げることなく、ほぼ点像に写っている。灯りが付いているビルの窓枠やネオンサインを見てもパープルフリンジは生じていない。なかなか優秀なレンズだ。
高輝度部においても色にじみはなく周辺まで高精細
かなり暗かったので、素直に三脚を使って撮影。通常なら1~2段絞って撮影するところだが、レンズの開放画質も見たかったのであえて絞り開放で撮影している。窓のサッシに色浮きがあるが、これは光源自体に色が付いているためだろう。輝度差の大きな輪郭部でも色にじみはなく、周辺まで高精細な描写が得られている。
艦首の塗装の細部までしっかりと再現されている
横須賀の三笠公園にて。昼過ぎから雲に覆われていたが、日没直前に雲の隙間から記念艦「三笠」の艦首に日が射し込んできたので、マンションなど周囲の建物を入れないように艦首部分を切り取って撮影。艦表面の塗装の微細なテクスチャーまでしっかりと再現されている。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。