機材レポート

ファン待望の初フルサイズ機を実写!!『ペンタックス K-1』その1

PENTAX K-1+HD PENTAX-D FA 24-70mmF2.8ED SDM WR(撮影:吉森信哉)
「ペンタックス K-1+HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR」の組み合わせ。横幅の「約136.5mm」という数値は35ミリ判フルサイズデジタル一眼レフとしては非常に小さいが、高さや奥行きは一般レベル。それゆえに、全体的にはボリューム感がある。ちなみに、この組み合わせ(K-1+24-70ミリF2.8)の重さは1797gになる(フードなしの状態で)。

 今年4月、ペンタックス初の35ミリ判フルサイズデジタル一眼レフ『ペンタックス K-1』が発売された。有効約3640万画素CMOSセンサー、5軸対応の新手ぶれ補正機構「SR II」とそれを応用した先進機能、フレキシブルチルト式液晶モニター、小型堅牢ボディ。こういった特長を持つユーザー待望のフルサイズ機を、数本の交換レンズと一緒に借用することにした。

 さて、どの交換レンズをオーダーしようか? まず、標準域をカバーするレンズを考えよう。このK-1には「レンズキット」と呼ばれる、ボディと標準系レンズを組み合わせた商品は設定されていない(現在のところ)。まあ、同時期に発売された標準ズーム「HDペンタックス-D FA28-105ミリF3.5-5.6ED DC WR」と組み合わせるのが一般的な選択だろうが、すでにほかの仕事で体験済みなのでテンションが上がらない(笑)。

 …ということで、よりグレードの高い大口径標準ズーム『HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR』をオーダーする。そして、望遠ズームも大口径タイプにこだわり『HDペンタックス-D FA70-200ミリF2.8ED DC AW』をオーダーした。これはテンションが上がりそうな組み合わせだねぇ〜。でも、重そうな組み合わせでもあるねぇ〜。K-1ボディ:1010g(バッテリーとSDカード込み)、24-70ミリ:812g(フード込み)、70-200ミリ:2030g(フード+三脚座込み)。合計3852g…か。まあ、気合いを入れて頑張ってみよう!

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PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
機能だけでなく外観も特徴的な「機能ダイヤル」。ちなみに今回は、クロップ切り替えの「Crop」に設定して使用することが多かった。

 後述するフレキシブルチルト式液晶モニターと同様、K-1の外観で特徴的なのが、シャッターダイヤルと見間違えそうな「機能ダイヤル」である。このダイヤル上の機能を選択しておくと、設定ダイヤル(背面の後電子ダイヤルではなく表示パネル横のダイヤル)を操作するだけで、迅速に選択機能の設定が変更できる。この一連の機能は「スマートファンクション」と呼ばれる。もちろん、ダイヤル上の各機能は、メニュー操作でも設定が可能。だけど、頻繁に設定する機能などは、この2つのダイヤル操作で設定した方が直感的かつ迅速!!

 今回、ボクが機能ダイヤルで主に設定したのは、「Crop」という表示のクロップ切り替え機能。35ミリ判フルサイズで36M(メガ)のK-1なら、APS-Cサイズにクロップしても15Mの画素数が確保できるので(いずれも記録サイズ「L」設定時)、同じレンズで望遠効果を高めたい場合にも、あまり躊躇せずにクロップできる。ファインダーを覗いたまま、設定ダイヤルの操作だけでフルサイズとAPS-Cが切り替えられる…これは便利だよ! ただし、APS-Cのクロップ枠(線)が太めなのが、個人的には少し気になるけどね。

  • 35ミリ判フルサイズ

    PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

  • APS-Cサイズ

    PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

雨に濡れるヒマワリ。装着している24-70ミリの標準ズームだと、思うような大きさで撮れない。しかも、この時は望遠ズームを持参していなかった。だが、スマートファンクション機能でフルサイズからAPS-Cサイズにクロップすることで、同じ焦点距離でも花のアップ度を高めることができた。

◆共通データ
ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/250秒 −0.3補正 WB:オート ISO200 JPEG(※オリジナルデータ)

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PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
手ぶれ補正機構SRで、センサーを1画素ピッチで動かしながら4枚連続撮影がおこなわれる「リアル・レゾリューション・システム」。その撮影では”三脚の使用”が必須条件になってくる。

 そして、絵作り(画質)面での大きな特長に「リアル・レゾリューション・システム」を挙げることができる。通常のセンサーは、1画素で1色の情報しか得ることができない。そのため、周囲の画素から他の色情報が補間される。その結果、細部の描写が多少曖昧になったり、規則的な被写体で偽色やモアレが発生したり、といった弊害が生じてくる。だが、手ぶれ補正機構SRの動きを利用した「リアル・レゾリューション」で撮影すれば、1画素でRGBすべての色情報が取得できるため、より高い解像力や色再現性を得ることができるのだ(偽色やモアレも心配もない)。36Mの高画素な画像だと、その描写性能(特に解像力)の違いがよく分かるだろうね。

  • 通常撮影

    PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

  • リアル・レゾリューションで撮影

    PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

◆共通データ
ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA★70-200ミリF2.8ED DC AW(200ミリで撮影) 絞り優先オート F8 0.4秒 −0.7補正 WB:オート ISO100 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ) 三脚

 「リアル・レゾリューション・システム」自体は、APS-Cサイズ機のK-3 IIにも搭載されている。だが、今回のK-1では「動体補正モード」という機能を新たに搭載している。4枚の連続撮影中に動いた領域を検出し、その部分の影響を受けにくいような合成処理がおこなわれるのだ。もちろん、動きのない部分にはリアル・レゾリューションの効果が反映される。実際に試してみると、通行人や自動車のような単純でわかりやすい被写体だけでなく、噴水や風に揺れる木の枝のような複雑な被写体でも、その効果の優秀さが実感できる(まあ、微妙に不自然な描写になる部分もあるけどね)。これならば、建築や静物の撮影だけでなく、一般的な自然風景などにも使えそう!

PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
「リアル・レゾリューション」の高精細な描写は、風景写真にも活用したくなる。だが、ネックになるのが”画面内の動き”である。この噴水のある風景も例外になるが、画面内に”まったく動きのない”自然風景は意外と少ない。そういう部分だと、幾何学的(?)で不自然なジャギーやパターンが発生してしまう。

■部分切り出し

  • PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

    通常撮影

  • PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

    リアル・レゾリューション(動体補正オフ)

  • PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)

    リアル・レゾリューション(動体補正オン)

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PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
縦位置(構図)でのフレキシブルチルト式液晶モニター活用状況。う〜ん、もう10〜15°くらい可動域が広いと、もっと画面が見やすくなるんだけどなぁ。

PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
フレキシブルチルト式液晶モニターを、いろんな方向に可動させた状態。な〜んとなく蟹の甲羅を剥がしたような絵面(笑)。

 液晶モニターの可動方式は、大きく2つに分類できる。上下に可動する「チルト方式」と、自由に可動させられる「バリアングル式」である。チルト方式のメリットは、レンズ光軸から外れずに見られる、操作が単純、といった点。デメリットは、縦構図に対応できない、多くのカメラは自撮りができない、といった点になる。反対にバリアングル方式のメリットは、縦構図に対応できる、自撮りにも対応できる、といった点。デメリットは、モニター位置がレンズ光軸から外れる、操作がチルト方式よりも複雑になる、といった点になる。

 だが、K-1に採用された「フレキシブルチルト式液晶モニター」は、チルト方式とバリアングル方式の”イイとこ取り”を目指した新機軸のモニターである。液晶モニターを4本のステーで保持し、上下左右どの方向にも可動させることができる。これにより、光軸を変えずに、縦構図に対応できるようになる。ただし、縦構図に構えた際の可動域は「上下方向に約35度」とあまり大きくないので、バリアングル方式ほどは見やすくはない。それでも、固定式や一般のチルト式では難しい”縦構図での画面確認”が可能になるのは有り難いよね。

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/100秒 −0.7補正 WB:オート ISO400 4912×7360ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F8 1/100秒 −0.7補正 WB:オート ISO100 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

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PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
K-1ボディ+HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR。HDペンタックス-D FA70-200ミリF2.8ED DC AW。最小限にして最強のセット!

PENTAX K-1(撮影:吉森信哉)
横幅を抑えたぶん奥行きが感じられるK-1ボディと、大口径ズームとの組み合わせ。その重厚な佇まいは、どことなく同社の中判デジタル一眼レフ「645Z」を彷彿とさせる。

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/125秒 WB:オート ISO200 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/100秒 WB:オート ISO200 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/125秒 WB:オート ISO100 3200×4800ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(70ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/100秒 WB:オート ISO100 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA24-70ミリF2.8ED SDM WR(27ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/50秒 −0.3補正 WB:オート ISO400 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA70-200ミリF2.8ED DC AW(200ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/100秒 −1補正 WB:オート ISO800 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

PENTAX K-1作例(撮影:吉森信哉)
◆ペンタックス K-1 HDペンタックス-D FA70-200ミリF2.8ED DC AW(200ミリで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/200秒 −0.7補正 WB:オート ISO800 7360×4912ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)