伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2022年11月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2022年11月号の「レンズパラダイス」Other Shotsでは、軽量コンパクトでお手ごろ価格のレンズとして発売された、キヤノンの「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」と「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」をピックアップ。有効約4500万画素の「EOS R5」と組み合わせて、描写性能をチェックしてみた。
前編では、大口径広角レンズ「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」の描写を実写作例で見ていこう。
目次
- キヤノン RF24mm F1.8 MACRO IS STM 実写チェック
- キヤノン RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 実写チェック
キヤノン RF24mm F1.8 MACRO IS STM
スペック
[マウント] キヤノンRFマウント [最大径×長さ] 約φ74.4×63.1mm [重さ] 約270g [レンズ構成] 9群11枚 [最短撮影距離] 0.14m [最大撮影倍率] 0.5倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ52mm参考価格 96,800円 (税込)
周囲の状況を取り込んだマクロ撮影が可能
広角レンズでは珍しいハーフマクロなので、クローズアップ撮影でもピント面ににじみはなく、シャクの白い花の輪郭やボケを見ても軸上色収差による色付きも気にならないレベルだ。背景の写り込む範囲が広いので、標準~中望遠マクロに比べるとその処理が難しくなるが、そのぶん周囲の状況を感じさせる情報量の多いクローズアップ写真が撮影できる。
軽量なのでアクロバットな撮影も可能
長野県佐久穂町の白駒の池にて。まだキノコの時期には少し早かったようで、ようやく見つけたキノコも、手を目一杯伸ばしてもアップで撮影できない位置。そこで、一脚にカメラを取り付け、両手で水平に保持しつつ、同伴者に頼んでスマホからリモートライブビューでシャッターを切ったのがこれ。レンズが軽いので、こういったアクロバットな撮影も可能だ。
微ボケが穏やかで自然な奥行き感が表現できる
広角レンズは焦点距離が短いので、標準や中望遠レンズに比べると、同じ絞りで撮影してもボケ量は少なめ。微ボケ領域が多く、そのぶんうるさいボケが目立ちやすい。このレンズはピント面の解像が必要以上にエッジ立ってはなく、前後の微ボケも穏やかで自然な奥行き感だ。
ボケに縁取りもなく、フレアやゴーストも目立たない
埼玉県日高市の巾着田にて。開花状況はまだ3割程度だったので、きれいに咲いているヒガンバナをローアングルから狙い、その隙間に太陽を絡めて輝き感を演出してみた。レンズの逆光耐性が問われるシチュエーションで、フレアは少し出ているが、絞り開放ならゴーストはほとんど目立たない。木漏れ日のボケも口径食や輪郭の縁取りが少なくきれいだ。
光条の出方はあまり鋭くはない
光条の出方をチェックするため、樹の隙間に太陽を入れてF11まで絞って撮影。絞り羽根は9枚なので光条は18本と多く、しかも1本1本の光条が細かく裂けていて鋭さに欠ける。ただ、木漏れ日の隙間や川面の反射を見ても色ズレはなく、倍率色収差はしっかり補正されているようだ。
画像周辺部の微ボケはやや乱れ気味
埼玉県日高市の巾着田。全体としては3割前後の開花状況だったが、夕陽が差し込むこのエリアはほぼ満開。逆光で光るヒガンバナと手前に伸びる樹の影がきれいだったので、縦位置に構え太陽も入れてF2.5で撮影してみた。ピントを合わせた手前のヒガンバナはキリキリにシャープ。木漏れ日のボケは周辺ということもあり少し乱れがあり、軸上色収差による色づきも少し浮いている。
生地の布目までクッキリ解像している
巾着田エリアの田んぼには、ユニークな案山子が展示。カメラを少しだけローポジションに構え、案山子と青空、はさ掛けされた稲を絡めてみた。F2.5まで絞っているので案山子の上半身はほぼ被写界深度内で、生地の布目までクッキリ解像している。周辺のボケは少しだけ乱れを感じるものの許容範囲だろう。
広角レンズのボケとしては自然な部類
長野からの帰り道、山梨県北杜市・清里の萌木の村に立ち寄り、小雨混じりの園内を散策。画角が広い広角レンズなので雨模様の白い空が入りやすく、少しハイアングル気味に雨に濡れた木馬を撮影した。とろけるような柔らかいボケではないが、広角レンズのボケとしては自然な部類だろう。
パンフォーカス気味の撮影では手前から中遠景まで非常にシャープ
清里の萌木の村にて。たくさんのカボチャを並べて描かれたジャックオーランタンの顔を撮影ポイントの展望台から撮影。パンフォーカス気味に撮影するため、F8まで絞ってみたが遠景は少し被写界深度外。手前から中遠景までは周辺までクッキリと解像している。
画像周辺部の点像再現性をチェック
「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」はミラーレスの強みを生かしたショートバックフォーカス設計で、後玉もかなり大きめ。そこで開放F1.8を使った星景撮影にも適しているのでは? と、大桟橋から見たみなとみらいの夜景で、周辺の点像性能をチェックしてみた。
■全体 (F1.8)
■F1.8
■F2
■F2.2
■F2.5
■F2.8
■F3.2
■F3.5
■F4
万全を期すならF3.5まで絞って点像は撮影したい
残念ながら絞り開放ではコマフレアで周辺の点光源は羽根を広がりまくり。F2.8まで絞れば実用範囲内だが、より完璧を期するならF3.5~F4まで絞って撮影する必要がある。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
後編では「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の描写力をチェックします。