伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2022年12月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2022年12月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、小型軽量でワイド側に広い焦点域を持つタムロンの大口径標準ズームレンズ「20-40mm F/2.8 Di III VXD」と超望遠ズームレンズ「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の描写性能をチェックしてみた。
前編では、「20-40mm F/2.8 Di III VXD」の描写を実写作例で見ていこう。
目次
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD 実写チェック
- タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD
スペック
[マウント] ソニーEマウント [最大径×長さ] φ74.4×86.5mm [重さ] 365g [レンズ構成] 11群12枚 [最短撮影距離] 0.17m (W) / 0.29m (T) [最大撮影倍率] 0.26倍 (W) / 0.20倍 (T) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ67mm参考価格 88,000円 (税込)
20mmまで引いた広がり感のある風景が撮れる
山中湖パノラマ台から。一般的な標準ズームだとここまで画角は広くないので、斜面のススキのボリュームが不足する恐れがある。このズームなら20mmまで引けるので、広がり感のある風景写真を撮れるのが強み。F13まで絞れば中遠景はほぼパンフォーカスで撮影でき、ススキの穂や遠くの樹木のディテールまでしっかり解像している。
コスモスの細部までキレの良い描写
佐倉ふるさと広場にて。ゆっくり昼食をしてから午後2時ちょっと前に到着。まだ雲が多かったものの、到着して10分くらいで小雨混じりながら日が差してきた。ふと後ろを見ると虹が架かっていたので、急いで風車とコスモス畑、そして虹がうまく収まる撮影ポジションに移動。ワイド端で撮影したのがこのカット。手前のコスモスも非常にキレの良い描写で大満足。とにかくビックリするほどよく写る。
驚くほど鋭く解像し背景の富士山も自然な存在感
背景に富士山を入れてパンパスグラスを撮影。絞り開放だとパンパスグラスの一部にしかピントが合わず、富士山も少しぼけすぎるのでF8まで絞ってみた。光の当たった穂に色にじみはなく、手前の穂はゾクゾクッとするほどシャープに解像している。背景の富士山も自然な存在感でぼけてくれた。
F11まで絞ると光条もきれいに伸びる
佐倉ふるさと広場にて。それまで曇っていたものの、日没直前に雲の切れ間から太陽が顔を出し、夕陽に照らされてコスモスが浮かび上がってきた。F11よりも絞り込めば光条もきれいに伸びる。ハーフNDを使うと風車が暗くなって不自然なので、ソニーの必殺技Dレンジオプティマイザー [LV5] でシャドー部を思い切り持ち上げて、HDR的な効果を狙ってみた。
近接時の解像は上々でボケ味は柔らかく自然
花マクロといえば中望遠というイメージがあるが、これはワイド端の20mmで撮影したカット。最短撮影距離はワイド端で17cm (テレ端は29cm) と短いので、広い画角で花にグッと寄った撮影が楽しめる。F2.8と明るいので、絞り開放で撮影すれば20mmとは思えないほど背景をぼかせ、ボケ味も柔らかくて自然だ。ピント面の解像も近接撮影としては上々だ。
テレ側開放では解像に少し緩さが出るが微ボケは滑らか
これは35mm域で撮影。ワイド側に比べると、テレ側の開放描写はわずかにエッジの鋭さに欠けるが、ピント面の解像は特に乱れはなく、F2.8ズームレンズの開放描写としては水準以上の解像とボケ味だ。もう少し至近距離になると少し解像に緩さも出てくるが、そのぶん微ボケも滑らかで柔らかだ。
絶妙な解像力と自然な後ボケでポートレート撮影に好適
超広角のパースペクティブの強さをできるだけ感じさせず、垂直の線ができるだけ斜めにならないようカメラを水平に構え、顔の形があまり歪まないように配慮して撮影。中望遠に比べ、広がり感のあるポートレート撮影が楽しめる。眉毛や睫毛はクッキリ、それでいて肌荒れや毛穴が解像し過ぎることもなく、絶妙な解像力と自然な後ボケが魅力だ。
画面周辺近くの顔が開放から乱れなく解像
チルトモニターを跳ね上げ、ローレベル・ローアングルで撮影。垂直線の倒れに惑わされないように、カメラの水平に気を付けつつパースペクティブの強さを利用し、脚を長く、顔は少し小顔に写してみた。周辺部に顔があるにもかかわらず絞り開放から乱れのない解像で、肌も滑らかに再現されていて女性に優しい描写だ。
F2.8ズームとしては優秀な点像再現性能
横浜大桟橋からみなとみらいの夜景を撮影するにはワイドすぎるので、羽田空港第2ターミナル展望デッキで夜の飛行機を撮影してみた。長辺の両端は、ワイド端絞り開放でもキレのいい解像を保っていて、四隅に近い周辺部は点光源が少しだけ歪むが、羽を広げたり街灯の周りにパープルフリンジが目立つこともなく、F2.8ズームとしては優秀な点像性能だ。
悪条件でない限りゴーストフレアは目立ちにくい
河口湖大石公園のコキア。光条の出方を確認するため、太陽を直接画面内に入れて、F11まで絞ってみた。樹の隙間などに太陽を被せなくてもきれいな光条が伸び、太陽のある対角線上に小さく淡いゴーストが認められるが、相当に意地悪な撮影をしない限りゴーストやフレアは目立ちにくい。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
後編では「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の描写力をチェックします。