機材レポート

ハーフマクロもいける50mmからの超望遠ズームを実写チェック! タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD

伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2022年12月号 Other Shots

伊達淳一のレンズパラダイス Other Shots 2022年12月号
ソニー α7R IV + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (左)、タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD (右)

伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2022年12月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、小型軽量でワイド側に広い焦点域を持つタムロンの大口径標準ズームレンズ「20-40mm F/2.8 Di III VXD」と超望遠ズームレンズ「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の描写性能をチェックしてみた。

後編では、「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の描写を実写作例で見ていこう。

目次

  1. タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD 実写チェック
  2. タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック

スペック
[マウント] ソニーEマウント [最大径×長さ] φ88.5×183.4mm [重さ] 1155g [レンズ構成] 18群24枚 [最短撮影距離] 0.25m (W) / 1.5m (T) [最大撮影倍率] 0.5倍 (W) / 0.25倍 (T) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ67mm

参考価格 165,000円 (税込)

繊細な解像ながら微ボケは滑らか

多摩動物公園のルリコンゴウインコ。羽根の色がきれいなので、ついついカメラを向けてしまう。羽根の細部まで解像しやすく、どのレンズでもそこそこの解像が得られるが、差が出るのは羽根の微ボケ。繰り返しパターンなので、解像一辺倒なレンズだと騒がしいボケになりやすいが、このレンズはピント面は線が細く繊細な解像で、それでいて後方の微ボケは非常に滑らかにぼけていく。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/800秒 F6.3 ISO250 WB : 太陽光 400mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

ワイド端の画面周辺部まで緩さのない高精細な描写

羽田空港第1ターミナル展望デッキからワイド端の50mmで撮影。開放から2/3段絞られてはいるが、6100万画素の「α7R IV」のピクセル等倍でもまったく緩さが感じられない高精細な描写にビックリさせられる。左下のJAL機の尾翼 (左側) にわずかに青ハロが浮いているが、それ以外はまったく隙のない描写だ。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/1000秒 F4.5 ISO125 WB : 太陽光 50mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

テレ端開放でも解像低下は感じない

羽田空港第2ターミナル展望デッキから、離陸機がゲートブリッジと絡む瞬間を狙う。秋とはいえまだ13時台なので、空気の揺らぎがあり少し霞んでいて、視程もあまり良くなくコントラストは低めだが、離陸機の機体の文字や窓枠もクッキリ解像していている。400mm開放でも解像性能の低下は感じない。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/2500秒 F6.3 ISO640 WB : 太陽光 400mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

幅広い焦点域をカバーし動物園での撮影に最適

多摩動物公園のコツメカワウソをガラス越しに撮影。このレンズは超望遠ズームにもかかわらず50mmまで引けて、しかも最短撮影距離がワイド端で25cmと超近寄れる。このカットは148mmで撮影しているが、カワウソの気分次第でガラスのすぐ傍まで近寄って来ることもあり、そんなときでもレンズを交換せずに撮影できるのが強み。動物園での撮影に最適だ。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/2000秒 F5.6 +0.7補正 ISO6400 WB : 太陽光 148mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

AF-Cのフォーカス速度は速くシュッとピントが合う

多摩動物公園のチーターの放牧場が工事中で、動体追従性を確認するまでは至らなかったが、AF-Cのフォーカス速度は速く、距離の異なる被写体にカメラを向けても、シャッターボタンを半押しし直すと、シュッとピントが合う。ダルマワシが飛び立っ瞬間を狙ったが、飛び出した後の2~3カットまでは追従できていた。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/2000秒 F6.3 -0.3補正 ISO4000 WB : 太陽光 358mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

テレ端で撮影すれば檻はほとんど目立たなくなる

多摩動物公園のサーバル。F6.3開放で檻がどの程度抜けるかの確認。全身を撮ろうとすると焦点距離が短く、檻の存在が気になるが、400mmでアップにすれば、ボケに檻のパターンが浮くものの檻はほとんど目立たなくなり、サーバルの毛並みもしっかり解像する。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/400秒 F6.3 +0.7補正 ISO1250 WB : 太陽光 400mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

ワイド側が広いのでポートレート撮影にも使える

一般的な超望遠ズームはポートレート撮影には画角が狭すぎるが、このレンズは50mmスタートなので、開放F値はそれほど明るくはないものの70-200mmや70-300mmの画角を完全にカバー。背景に困るようなシチュエーションで狭い画角で背景を単純化でき、絞り開放でも睫毛や眉毛、産毛までしっかり解像。それでいて、肌の荒れは目立たないという絶妙な解像性能だ。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 絞り優先オート F6.3 1/640秒 +0.3補正 ISO1000 WB : 太陽光 287mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

ワイド端の最短撮影距離は25cm、後ボケは滑らか

超望遠ズームで50mmスタートというだけでも希少価値なのに、50mmの最短撮影距離は25cmと短く、50~70mm域ではハーフマクロ撮影が楽しめるのも強み。このカットもワイド端50mmの絞り開放で撮影したコスモスで、最短撮影距離まで寄ればコスモスの花一輪をド・アップで撮影できる。特筆すべきは後方のボケ。Photoshopでガウスぼかしをかけたように滑らかにぼける。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/640秒 F4.5 ISO400 WB : 太陽光 50mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

テレ端はあまり寄れないが大きなボケ表現は楽しめる

ワイド側で思いっきり寄れるのに対し、テレ端の最短撮影距離は1.5mと一世代前の超望遠ズーム並。このくらいの位置から撮れるかな? とテレマクロ撮影を試みて、一歩後ずさることも。とはいえ画角が狭く、ぼけも大きな望遠、超望遠ならではの撮影が楽しめ、絞り開放の解像性能も抜群だ。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/800秒 F6.3 +0.7補正 ISO1250 WB : 太陽光 326mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

高感度撮影時の解像性能も必要十分

テレ端の開放F値はF6.3。開放F5.6よりも1/3段暗いが開放F7.1よりは1/3段明るく、約1155gというレンズの軽さを考えれば、開放F6.3という選択は正解だろう。夜の飛行機がどれだけ撮れるのか試してみたが、ある程度被写体ブレを抑えられるシャッタースピードにすると、やはり5桁ISOに突入。ただ解像とコントラストがしっかりしているので、高感度NRに飲まれることなく、しっかりと細部まで再現できている。アンコリが光った瞬間でもゴーストが目立ちにくい。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
ソニー α7R IV タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD シャッター優先オート 1/13秒 F6.3 ISO12800 WB : 太陽光 296mm域
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD 実写チェック
部分拡大

 

※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。