伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年5月号 アザーショット【前編】
今回は、近接撮影に強みを発揮するマイクロフォーサーズマウントの単焦点レンズをピックアップ。OM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」は、最短撮影距離22.4cm、最大撮影倍率2倍 (35mm判換算4倍相当) まで近寄れ、目には見えないものまで再現する。そんなスーパーマクロレンズの描写力をチェックした。
- M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO 実写チェック
- LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH. 実写チェック
OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
[マウント] マイクロフォーサーズ [最大径×長さ] 約φ69.8×136mm [重さ] 約453g [レンズ構成] 13群18枚 [最短撮影距離] 0.25m / S-Macro時 0.224m [最大撮影倍率] 1.0倍 / S-Macro時 2.0倍 (35mm判換算 2.0倍相当 / S-Macro時 4.0倍相当) [絞り羽根枚数] 7枚 (円形絞り) [フィルター径] φ62mm
参考価格 184,800円 (税込)
2倍相当以上の手持ち撮影で花粉までシャープ
花には詳しくないので、もう少し引きで撮影した写真をGoogleレンズで検索してみると、どうやらディモルフォセカの筒状花らしい。もう少し寄れたと思うが、少なくとも等倍 (35mm判換算2倍) は軽く超える倍率の手持ち撮影でも、5軸シンクロ手ブレ補正の威力でフレーミングは安定している。拡大してみても花粉の1粒1粒まで写っていてビックリだ。
ワーキングディスタンスが長く撮影者などの影が入りにくい
吹きだまりに集まっていたソメイヨシノの花びらを俯瞰で撮影。花びらのサイズから推測すると等倍 (35mm判換算2倍) より少し手前の撮影倍率だと思うが、180mm相当の望遠マクロなのでワーキングディスタンス (レンズ先端から撮像面までの距離) が長く、撮影する被写体に撮影者やカメラの影が出にくいのが特徴だ。そのぶん被写界深度は浅く、ピントが合う範囲はかなり狭い。
高解像、高コントラストにもかかわらず素直な微ボケ
高倍率マクロだからといって必ずしも高倍率で撮る必要はなく、むしろ一般的な倍率で撮影する機会のほうが多い。このサボテンの写真も特に高倍率ではなく、トゲでボケ具合を見るために撮影したカット。フルサイズのように大ボケはしないので微ボケがうるさくなりやすいが、このレンズは高解像、高コントラストにもかかわらず素直な微ボケで、色づきもなくスッキリとした描写だ。
ゴチャゴチャしている背景でもスムーズにぼける
最大撮影倍率2倍の望遠マクロを必要とするのは昆虫写真家など一部の層で、一般的には既存の60mmマクロでも十分対応できる。ただこのレンズは、180mm相当の望遠レンズとして優れた描写性能を誇り、特にピント面の高い解像と、素直なボケ味を両立させているのが特徴。クリーミーというほどは柔らかくないが、ゴチャゴチャした背景でもスムーズにぼけてくれる。
木漏れ日のボケに縁取りはなく口径食も少なめ
シャープなレンズはボケの輪郭に縁取りが出やすいが、このレンズは木漏れ日の玉ボケが柔らかく、周辺の口径食も大きく欠けた感じはしない。絞り開放でも被写界深度が適度に深く、前後をぼかしつつもピントを合わせたい部分をクッキリ見せてくれる。ただブレには要注意で、この写真も被写体ブレしにくいシャッタースピードで撮影している。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
後編では「パナソニック LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.」の描写力をチェックします。