機材レポート

モトローラのSIMフリースマホ「Moto Z2 Play」+光学10倍ズームのカメラユニット「Hasselblad True Zoom」で実写!

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)

 昨今のスマートフォン(以後、スマホ)の普及と、そこに搭載されるカメラの性能向上により、既存のコンパクトデジタルカメラ(以後、コンデジ)の存在価値はかなり薄れてしまった。しかし、スマホのカメラには、基本的に単焦点レンズが採用されている。一部、光学ズームを採用する製品もあるが、その倍率は3倍くらいなので、たいした望遠効果は期待できない。だから、スマホのカメラだと、遠くの風景や離れた被写体を“高画質で捉える”のは難しくなる。ということで、そういう撮影機会では「やっぱり、高倍率ズームを採用したコンデジの出番だよね」ということになる。

 ……だが、そんな常識を覆すような、斬新でユニークなスマホのカメラも登場している。いや、スマホのカメラというより「スマホ+カメラユニット」と呼ぶ方が正しいだろう。それが今回紹介するモトローラのSIMフリースマホの「Moto Z2 Play」と、それに取りつけて使う「Hasselblad True Zoom(ハッセルブラッド・トゥルー・ズーム)」である。カメラユニット側には、広角25mm相当から望遠250mm相当までカバーする「光学10倍ズームレンズ」が搭載されている。なお、このカメラユニットも含めた各種の拡張ユニットは「Moto Mods」と呼ばれる。

 ちなみに、ハッセルブラッドは、プロフェッショナル仕様の中判一眼レフなどで名を馳せた、スウェーデンのカメラメーカーである。あ〜、自分も500CシリーズとかSWCシリーズとかに憧れたよなぁ。その伝統のあるメーカー(ブランド)は、現在のデジタルカメラの世界にも脈々と受け継がれている。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
スマホ「Moto Z2 Play」の厚みは約6mm。カメラユニット「Hasselblad True Zoom」のベース部の厚みは9mm。合体後の厚みは、レンズ部を含めても20mm以内に収まる。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
スマホ(左)とカメラユニット(右)は、カメラ側の強力なマグネットにより装着される。そして、手前に見える双方の電子接点により各種の情報が伝達される。

 通常、カメラ本体に撮影アクセサリーやユニットを装着する場合、情報伝達を行う接点部のカバーを外したり、ロック機構を操作したり、といった準備が必要になる。だが、今回のカメラユニット「Hasselblad True Zoom」にスマホ「Moto Z2 Play」を装着する際には、そんな手間は一切いらない。お互いの背面を合わせると、自動的にマグネットで固定される。面倒なペアリングも不要である。

 そして、カメラユニット部の電源ボタンを押すと、カメラが起動して(レンズが繰り出し)スマホの画面にカメラからの映像が表示されるのである。その後は、カメラユニット側でズームやレリーズ(シャッター)の操作を行い、スマホ側で各種の機能設定や再生操作を行う。

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< 操作や設定の基本 >

 実際のカメラ操作もいたって簡単。カメラユニット上部のシャッターボタン脇の電源ボタンを押して起動させる(レンズバリアが開いて鏡筒が伸びる)。そして、シャッターボタンの周囲にあるズームレバーで好みのズーム域に設定。そして、オレンジ色のシャッターボタンを押して撮影。普通のコンデジと何ら変わりない。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)

 もちろん、撮影モードや各種機能の設定を変えたい場合もある。その時には、まず撮影画面の右上外にある“縦に並んだ3つの白い点”をタッチして、表示される4つの撮影モード(写真、ビデオ、パノラマ、プロフェッショナル)から、使いたいモードを選択する。さらに、撮影画面の左上外にあるハッセルブラッドのロゴ(H)をタッチすると、画質モードとシーンモードが選択できる(写真モード時。プロフェッショナルモード時は、モノクロ(JPEG)を除く画質モードのみが選択でき、シーンモードは表示されない)。

 また、セルフタイマーやフラッシュ発光の機能も、撮影画面の左外に表示されるアイコンをタッチして設定する。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
写真モード選択時に、ハッセルブラッドのロゴ(H)をタッチすると表示される設定画面。写真モードでは、プロフェッショナルモードのような、きめ細かい設定や調整はできない。しかし、適切なシーンを選べば、満足度の高い仕上がりが得られる。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
静止画の撮影モード(写真とプロフェッショナル)では、一般的な画質モードであるJPEG形式の他に「RAW形式」にも設定可能。これによって、パソコン上でRAW現像が行えるようになり、画質劣化を伴わずに思い通りの画像に仕上げることができる。

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< 光学10倍ズームの効果&メリット >

 当然、スマホ本体の「Moto Z2 Play」にも、カメラは搭載されている。センサー画素数も「1200万画素」と十分な仕様である。しかし、冒頭でも述べているとおり、レンズは広角単焦点レンズ。そのため、望遠効果を得ようと思ったら、最大8倍のデジタルズームを使用することになる。……だが、コンデジを使ってきた人ならわかると思うが、どうしても“画質劣化”が避けられない。まあ、2倍くらいなら許せるかもしれないが、十分な望遠効果を得ようと8倍近くまでズームすると、かなりキビシイ結果になってしまう。

 だが、カメラユニットの「光学10倍ズーム」を使用すれば、デジタルズームのような画質劣化を気にせずに、十分な望遠効果を得ることができる。そして、離れた被写体が大きく写せるだけでなく、前後のボケ効果も高めることができるのだ。デジタルズームの場合は、写真の見た目は望遠撮影っぽくても、レンズの焦点距離自体は変わらないので、ボケ効果は変わらないのである。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
光学10倍ズームを、望遠端(250mm相当)までズームした状態。

■Hasselblad True Zoomで撮影

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    広角端

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    望遠端(10.0x)

■Moto Z2 Playのカメラで撮影

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    広角端

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    望遠端(8.0x)

■Hasselblad True Zoomで撮影
Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
中望遠域

■Moto Z2 Playのカメラで撮影
Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)
中望遠域

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Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True ZoomとMoto Z2 Playの重さは、いずれも145g(合計290g)。両者の上質な材質感と相まって、手にした際の“重厚さ”が感じられた。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom(撮影:吉森信哉)
付属のケースは“カメラユニット収納用”としても使用するのがベストだが、Moto Z2 Playに装着した状態でも収納できる。

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< 仕様や性能をチェック >

 搭載レンズの仕様は、カメラに求められる重要な要素だが、それ以外の仕様や性能にも注目したい。連写性能やマクロ能力、そして動作のレスポンス。こういった部分の実力も見極めたい。連写(連続撮影)やマクロ能力に関しては、下の作例写真とコメントを見ていただこう。動作のレスポンスに関しては、起動:2秒強、シャッター半押しAF:爆速ではないがスムーズ、ズーミング(広角端→望遠端):1秒台と速く作動音も小さめ。……と、概ね良好で好印象だった。

■連続撮影
シャッターボタンを押し(全押し)続けると、連続的にシャッターが切れる。まあ、いわゆる“高速連写”のようなスピード感はないが、ここで狙っているような、あまり速くない列車や自動車、普通に動き回る動物、といった被写体なら十分対応できるだろう。

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

共通データ:Hasselblad True Zoom 218mm相当で撮影 プログラムオート F6.2 1/250秒 WB:オート ISO400

■マクロ撮影
一般的にコンデジのズームレンズは、広角端で最も接近して撮影できる。このHasselblad True Zoomも同様で、望遠端だと1.5mまでしか接近できないが、25mm相当の広角端だと「5cm」まで接近できるようになる。だから、容易に接近できる被写体では、広角側で肉薄して撮影したい。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
こんな小さな花も、アプローチ次第では大きめに写せる。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 25mm相当で撮影 プログラムオート F3.5 1/200秒 WB:オート ISO100

■シーンモード
一般のカメラの「撮影モード」に該当する機能は、このカメラでは「キャプチャモード」と呼ばれている。そのキャプチャモードは、前述の通り写真、パノラマ、ビデオ、プロフェッショナルに分かれており、「写真」を選択した場合には、さらにシーンモードで「風景写真」に設定することで、より鮮やかでメリハリの効いた仕上がりを得ることができる。

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    自動

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    風景写真

共通データ:Hasselblad True Zoom 25mm相当で撮影 プログラムオート F3.5 1/125秒 WB:オート ISO140

■フラッシュ撮影
Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

暗い夜間撮影や、逆光で被写体が暗く写ってしまう状況では、搭載される「キセノンフラッシュ」を発光させることで、被写体を明るく描写することができる。フラッシュを発光させたい場合は、撮影画面の左外に表示される“稲妻のアイコン”をタッチして「ON」に設定する。

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    フラッシュ使用

  • Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

    ノンフラッシュ

共通データ:Hasselblad True Zoom 36mm相当で撮影 プログラムオート F4 1/200秒 WB:オート ISO100

■Hasselblad True Zoom(HB4116)仕様
撮像センサー 1/2.3インチ 1200万画素 BSI CMOS
ビデオ解像度 1080pフルHD(30fps)
レンズ 光学10倍ズームレンズ 4.5〜45mm(35mm判換算 25〜250mm相当) F3.5〜6.5 ※4倍デジタルズームも可能
ファイル形式 静止画:JPG、DNG(RAW) 動画:MPEG4
マクロ撮影 5cm(広角端)〜1.5m(望遠端)
フラッシュ キセノンフラッシュ
手ぶれ補正 静止画 OIS(光学式)、動画 EIS(電子式)
感度(ISO相当) オート、100、200、400、800、1600、3200
ホワイトバランス オート、白光、蛍光、太陽光、影
色彩効果 カラー、白黒
キャプチャモード 写真、パノラマ、ビデオ、プロフェッショナル
シーン 自動、スポーツ、夜間の人物写真、逆光の人物写真、夜間の風景写真、風景写真
ストレージ スマートフォン本体:32〜64GB スマートフォンmicroSD:最大2TB クラウド:Google Photos により無制限
バッテリー駆動時間 スマートフォンにより異なる
サイズ 152.3×72.9×9.0〜15.1mm
重量 145g
付属品 携帯ケース

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< プロフェッショナルモードの活用 >

 どのキャプチャモードを選択するか? とっさのスナップ撮影や、シーンモードが選べる「写真」も便利である。だが、じっくり作画するなら「プロフェッショナル」がオススメ。このモードを選択すれば、露出補正、ISO感度、WB(ホワイトバランス)、といった、クリエイティブな撮影には欠かせない機能が使用できるようになる。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
「プロフェッショナル」モードでは、画面上部に、露出補正、ISO感度、WB、などの機能アイコンが並ぶ。画面タッチ操作によって、各項目を呼び出して設定するが、すべての項目を表示させて設定することも可能。

■ISO感度設定
当然、最も低いISO100が低ノイズで高画質が得られる。だが、2段上げたISO400あたりの画質もなかなか優秀。

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    ISO100で撮影

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    ISO400で撮影

共通データ:Hasselblad True Zoom 133mm相当で撮影 プログラムオート F5.5 WB:オート

■WB(ホワイトバランス)設定
多くの撮影シーンや被写体は、オート(オートホワイトバランス)の設定で自然な色調が得られる。だが、少し違和感を覚えたり、意図的に色調を変えたりしたい場合は、他の設定も試してみたい。

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    WB:オートで撮影

  • Moto Z2 Play作例(撮影:吉森信哉)

    WB:太陽光で撮影

共通データ:Hasselblad True Zoom 133mm相当で撮影 プログラムオート F5.5 WB:オート

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Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)

 子どもの頃、望遠鏡や双眼鏡に憧れていなかっただろうか? まあ、世代や性別で温度差に違いはあるかもしれないが、自分の場合はかなり強く憧れていた(実際に買ってもらったし)。月面のクレーターや、旅先の展望台から見る遠方の風景、動物園で見る猛獣たちの表情。そういった光景や被写体が、あたかも目の前にあるような興奮は、今でも鮮明に覚えている。

 最初に述べたとおり、昨今のスマホのカメラは性能が向上しているので、日常的な撮影なら「このカメラで十分」と感じている人も多いだろう。だが、望遠鏡や双眼鏡で見るような“非日常の光景”を撮ろうと思ったら、高倍率ズームを搭載するコンデジなどの出番になる。そして、この「Hasselblad True Zoom」を使用すれば、日常生活の必須アイテムであるスマホを使いながら、シームレス感覚で“望遠鏡や双眼鏡の世界”に入って行けるのである。

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 250mm相当で撮影 プログラムオート F6.5 1/125秒 WB:オート ISO125

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 250mm相当で撮影 プログラムオート F6.5 1/40秒 −0.6補正 WB:オート ISO100

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 25mm相当で撮影 プログラムオート F3.5 1/125秒 WB:オート ISO160

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 250mm相当で撮影 プログラムオート F6.5 1/125秒 WB:オート ISO160

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 690mm相当で撮影 プログラムオート F4.9 1/100秒 WB:オート ISO100 フラッシュ使用

Moto Z2 Play+Hasselblad True Zoom作例(撮影:吉森信哉)
Hasselblad True Zoom 42mm相当で撮影 プログラムオート F4.2 1/125秒 WB:オート ISO100