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【CP+2018/木下光学研究所】設計から製造まですべて日本国内で自社生産するレンズメーカー

 

木下光学研究所はもともと産業用レンズの設計・試作を本業としているそうだが、社長のレンズ好きが高じて写真用レンズの製作を開始。絞り開放では少し甘さは残るが「2~3段絞り込むとシャープになる」という昭和な感じのするレンズを目指しているユニークなレンズメーカーだ。

 

 

 

左から「KISTER 85mm F1.4」「KISTER 35mm F1.4」「KISTER 55mm F1.2」。レンズマウントはKCYマウント(ヤシカ・コンタックスマウント)。

 

レンズは「ピッチ磨き」と呼ばれる昔ながらの研磨方法で磨かれており、反射防止コーティングはシングルコートだ。2年前に初めて製作したのが「KISTER 55mm F1.2」で、名玉「トミノン 55mm F1.2」の復刻版。しかし、当時のレンズは鉛などの重金属を含んでいるため現在では使えない。そこで最新のエコガラスで作り直したそうだ。

 

次に1年前に製作したのが「KISTER 35mm F1.4」。このレンズは最初設計したときには絞り開放からシャープ過ぎてしまったそうで、開放でしっかりと収差が残って滲むようにするのに苦労を重ねたという。ピントを合わせてからライブビューにしたまま絞りリングを動かしていくと、ピントの合っているところのシャープ感が変わっていくのが確認できるので、ぜひとも試してみてもらいたい。

 

そして2017年末に製作したのが「KISTER 85mm F1.4」。この焦点距離では絞り開放でソフトにし過ぎてしまうとピントの山が分かりずらくなってしまうため、特徴である絞り開放時の柔らかさをぎりぎりのところで再現したという。

 

 

社長の木下勉さん。現在会長のお父さんがトミノンの光学設計をしていたため、第一製品の 55mm F1.2 設計時には、トミノン当時の設計思想や手法を学んだとのこと。現在いちばんのお気に入りレンズは 35mm F1.4 とのこと。木下光学研究所のレンズは、レンズ研磨から組み立てまですべて自社内の技術者が行っているため、月産10本程度の小ロット生産。まさに手作りの味わいのあるレンズだ。

 

 

〈写真・文〉青柳敏史