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【花撮影の基本①】写真の明るさをコントロールする露出補正

春夏秋冬、いつでも被写体として私たちを楽しませてくれる「花」。撮影する際、「こんな風に撮りたい!」とイメージするかと思いますが、それを写真で再現するためには、カメラ操作における基本的な知識やテクニックが必要になってきます。基本的な撮影のコツを押さえておきましょう。

 

露出補正とは、写真の明るさをコントロールする機能です。カメラは白と黒のちょうど中間にあたるグレーの濃度に露出を合わせようとするので、露出をカメラ任せにすると、白いものや黒いものがグレーに写ってしまいます。そこで露出を意図的に調整するのが露出補正の役割です。
花の色はさまざまで、白や黄色、ピンクなどの淡い色は暗く写り、逆に、赤や紫のような濃い色は薄くなりがちです。淡い色の花はプラスの露出補正を行って明るくし、濃い色の花はマイナス補正して暗く写すことで、見た目の色が再現できます。
デジタルカメラは再生すれば現場で写真の明るさをチェックできるので、露出による失敗は少ないでしょう。しかし、明るさを変えて撮り比べることで、ベストの露出がわかりやすくなります。露出に迷ったら、段階的に複数枚撮っておくことをおすすめします。

 

 

花の色に合わせて露出補正をする

カメラは光の反射率によって、被写体の明るさを判断している。白は光を多く反射する反射率の高い色で、黒は光を吸収する反射率の低い色だ。花の色によって、露出補正値は変わるが、背面モニターで確認できるのでさほど心配することはない。おおまかに「淡い色はプラス、濃い色はマイナス」と覚えておこう。

 

淡い色の花の場合はプラス補正をして明るく仕上げる

白は反射率の高い色だ。補正をかけない(± 0)状態ではグレーの濃度になるため、色が濁って写ってしまった。ここではプラス 1.3 補正をかけて、きれいな白に写った。

 

濃い色の花の場合はマイナス補正をして見た目の色彩に

赤や紫のような濃い色の花はマイナス補正が必要だ。補正なし(±0)では赤色が抜けたように、やや白っぽく写ってしまった。マイナス1の補正をかけて、濃度を高めた。

 

 

 

背景の明るさに合わせて露出補正をする

カメラは画面全体の明るさ(反射率)から露出を判断しているので、花の色だけで露出補正を行うと失敗してしまうこともある。主役が白い花でも背景を暗い色が占めていればマイナス補正が必要になる。画面内の明るい色と暗い色を足して割り、明るい色が多ければプラス補正、暗い色が多ければマイナス補正しよう。

 

背景が明るい、または、明るい背景が画面を占める場合はプラス補正

明るい木漏れ日を背景にして黒いクリスマスローズを撮影。画面内の白と黒を足して割ると白い面積が多いので、ここではプラス補正をかけるのが正解。補正なし(± 0)では暗いが、プラス 1.3 補正すると自然な明るさになった。

 

背景が暗い、または、暗い背景が画面を占める場合はマイナス補正

白いシャガが主役だが、日陰を背景にしているため暗い部分の面積が画面を占めている。案の定、補正なし(±0)ではオーバー気味に。マイナス 1 補正するとシャガが適正露出になった。

 

 

ハイキー調やローキー調に仕上げる

写真は明るさによってイメージが左右される。明るい調子の画像を「ハイキー」、暗い調子の画像を「ローキー」という。しかし、露出オーバーやアンダーの失敗写真と区別しなくてはならない。コントラストが低めの場所で撮ると、花が白とびしにくいのでハイキーが成立しやすい。反対に、コントラストのあるところで暗めに写すと、ただ沈むのではなくメリハリのあるローキーが作れる。

 

わびしい雰囲気にはローキーが似合う

全体は暗い調子だが、花弁はやや明るく、背景は暗くと、多少のコントラストがある状態。明るく写すこともできるが、ここでは日陰に咲くわびしさを引き出すため、マイナス 1 補正してローキー調に仕上げた。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/2000秒) -1補正 ISO400 WB:5000K

 

ハイキーに仕上げてふんわり花写真に

花びらが白とびしにくい。最も暗いガクの部分がグレーよりも明るくなるようプラス 2.7 補正した。さらに、ソフト系のフィルターを掛けて、よりふんわり感を演出している。

90ミリ相当 絞り優先オート(F1.8 1/1000秒) +2.7補正 ISO200 WB:曇天 フィルター機能:ファンタジックフォーカス

 

 

露出補正で明るさをコントロールすると、写真の印象は大きく変わります。花の種類や季節に合わせて、意図的に明暗を操作することができれば、自由自在に写真が楽しめそうですね。

 

 

 

写真・解説/吉住志穂