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【花撮影の基本②】ボケ描写をコントロールする“絞り”操作

春夏秋冬、いつでも被写体として私たちを楽しませてくれる「花」。撮影する際、「こんな風に撮りたい!」とイメージするかと思いますが、それを写真で再現するためには、カメラ操作における基本的な知識やテクニックが必要になってきます。基本的な撮影のコツを押さえておきましょう。

 

 

ボケ描写をコントロールすることができるのが、絞りの操作です。絞り値を変えるには、撮影モードを絞り優先オート(AまたはAvモード)にして、ダイヤルやボタン操作で「F○」という数値を変えればOK。数値が小さいほど絞りは開き、ボケは大きくなります。最も小さい数値を「開放絞り」と呼び、そのレンズで最大限のボケを得ることができます。逆に、数値が大きくなるほど絞りは絞り込まれ、ボケは少なくなっていきます。ただし、選択できる絞りの値はレンズによって異なります。単焦点レンズや大口径レンズなどは開放絞りが小さい数値なので、大きなボケが作りやすいといえます。

大きなボケを得るには絞りだけではなく、「望遠系のレンズを使う」「花に近づく」「花と背景が離れている場所を選ぶ」などの要素も大切です。絞りを開けてもぼけないときは、これらも試してください。

 

絞りを絞って“パンフォーカス”で撮る

画面全体にピントが合って見える状態を「パンフォーカス」と呼ぶ。手前から奥までシャープに写り、キリッとした画面になるので、花畑などを撮るときに有効だ。パンフォーカスを作るには、被写界深度の深い広角系のレンズを使い、絞りを絞り込み、花にあまり寄らないこと。奥行きのあるシーンは、望遠やマクロレンズでは絞りを絞ってもパンフォーカスにならないので注意しよう。

 

27ミリ相当、F11

広角レンズを用いて絞りを絞るとパンフォーカスにしやすい

27ミリ相当の広角レンズを使って、ナノハナ畑と青空を広く写した。絞りを F11 まで絞り込んでいるのと、花にさほど近づいていないので、ぼける要素がない。よって、狙いどおりパンフォーカスになった。

27ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/40秒) +0.7補正 ISO100 WB:太陽光

 

300ミリ相当、F18 ×

望遠レンズを使って F18 まで絞り込んでいるが、奥行きがある花畑なのでピント面の前後にボケが生じてしまった。平面的な被写体なら望遠でもパンフォーカスになるが、「望遠」と「奥行き」はボケが生まれやすい要素なので、ここではパンフォーカスにはならなかった。

 

絞りを開けて“ボケ”を生かして撮る

ボケはやわらかな雰囲気を出すことができるほか、主役以外の被写体を曖昧にすることで、主役を引き立たせる効果があるので、花の写真には持ってこい。花にピントを合わせて絞りを変えると、ピント面はいずれもシャープだが、背景のボケ具合に変化が生じる。最適なぼかし具合は、その都度違う。またボケは背景だけではなく、前側にもできる。これを「前ボケ」と呼び、奥行き感やふんわりとした印象を与えることが可能だ。

 

絞り開放F2.8の大きなボケで画面がすっきりした

絞り開放の F2.8 では背景のナノハナが大きくぼけて平面的になった。すっきりとしているし、前の花も輪郭がわからない程度にぼけている。 F5.6、F11 と絞り込むにつれ、背景の陰影が出てきて煩雑な印象に。手前の花も輪郭が見えてきて、うるさい感じだ。

 

広角域でも花に寄ることで背景はぼける

広角レンズは望遠に比べてボケ量が少なくなる。そのぶん絞りを開けたり、花に近づいたりすることが欠かせない。この 2 枚は同じ焦点距離と絞り値だが、キスゲに近づくことで背景をほんのりとぼかすことができた。

 

黄色の花を前ボケにして、画面に彩りを加える

主役の花よりも手前側にある別の花をぼかす前ボケ。背景ボケと同様にやわらかな雰囲気を出すことができるうえ、主役の一部を覆い隠してボケで包むこともできる。色のある花を前ボケとしてぼかせば、彩りを増すこともできるし、奥行きを出すこともできる。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/200秒) +2補正 ISO200 WB:曇天

 

広大な花畑などは、絞りを絞ることでボケることなく全体を撮ることができます。また一つの花にピントを合わす場合は、絞りを開放することで、背景をぼかすことができ、主役を引き立たせることが可能になります。絞り機能を最大限に利用して、奥行きを感じさせる写真を撮ってみましょう。

 

 

写真・解説/吉住志穂