春夏秋冬、いつでも被写体として私たちを楽しませてくれる「花」。撮影する際、「こんな風に撮りたい!」とイメージするかと思いますが、それを写真で再現するためには、カメラ操作における基本的な知識やテクニックが必要になってきます。基本的な撮影のコツを押さえておきましょう。
レンズは焦点距離によって広角、標準、望遠と大別できます。広角は広い範囲を、望遠は遠くのものを引き寄せて写せるという特徴がありますが、クローズアップ撮影時には背景の写る範囲やボケ量の違いも考慮してレンズを選びたいものです。
自分が花に近づけば広角も望遠もある程度大きく写すことはできますが、広角は背景の写る範囲が広がり、咲いている周囲の環境を写し込むことができます。一方、望遠は背景の写る範囲が狭いので、すっきりと見せることができます。また、望遠はぼけやすく、広角はぼけにくいという特徴もあります。クローズアップ撮影をメインにするなら、マクロレンズも必須といえます。通常のレンズよりも大きく写すことができるので、小さな花や花の一部に迫る楽しさがあります。レンズごとの特徴を知り、シーンに合わせて使い分けましょう。
クローズアップならマクロレンズが必須
クローズアップが得意なマクロレンズは、標準系、中望遠系、望遠系と焦点距離の違いによって分けられる。いずれも等倍や1/2倍程度の最大撮影倍率が得られるので、小さな被写体を大きく写すことが可能だ。望遠だから大きく写せるということはなく、焦点距離の違いはボケ量や撮影距離に出る。望遠系マクロほどボケが大きくなり、背景の写る範囲も狭くすっきりするが、レンズ自体が大きくて重いのがデメリットだ。標準マクロはコンパクトさが魅力だが、ボケは少なめ。両者の間をいくのが中望遠マクロで、ボケ量も撮影距離も程よいので使い勝手がよい。初めの1本なら中望遠マクロがおすすめだ。
中望遠マクロはほどほどのボケ具合と撮影距離で使い勝手No.1
マクロレンズを買うなら中望遠マクロがおすすめだ。背景がぼけすぎず、撮影距離も離れすぎず、近づきすぎずの距離で、使い勝手がよい。各メーカーともにモデルチェンジが頻繁にされている人気の焦点域だ。
90ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/20秒) +1補正 ISO100 WB:太陽光
タムロンSP AF90ミリF2.8 Di MACRO 1:1
望遠レンズは離れた花を撮るときに最適
遠くの花を狙うなら望遠ズームレンズが便利だ。焦点距離が長いので離れていても大きく写せるし、近接撮影ではないので望遠マクロでなくてもピントは合う。望遠ズームで最も大きくぼかしたいなら、いちばん望遠側の焦点距離を選ぼう。そして、画面内の花の大きさは自分が寄ったり引いたりして決める。ズームで花の大きさを決めてしまうとボケ量が変わってしまうので要注意。
近づきにくい水生植物も大きく写せる
スイレンやハス、ハナショウブなどの水生植物は近づきにくいので、望遠レンズで引き寄せよう。焦点距離の長さによって遠くの花も大きく写すことができる。寄り引きができないシーンなので、単焦点の望遠マクロよりも、ズームのほうが細かいフレーミングが行えて便利だ。
300ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/160秒) -0.7補正 ISO100 WB:太陽光
木に咲く花にも望遠レンズの出番
水生植物と同様に、高いところにある木に咲く花も近づきにくいので、望遠レンズが便利。また、背景に枝が入ると直線的なボケがうるさくなるが、大きくぼかせるというのも木の花で望遠を使うメリットだ。
220ミリ相当 絞り優先オート(F3.5 1/400秒) +1補正 ISO200 WB:晴天
ソニー FE70~300ミリF4.5-5.6 G OSS
周囲の状況も写し込むなら広角レンズ
広角レンズの魅力はその画角の広さから、背景の写る範囲が広いことだ。また、遠くのものと近くのものの大きさの差が広がり、遠近感が強調されて写る特徴もある。ただし、花畑などの広い風景を何のポイントもなしに狙うと、つまらない写真になってしまう。ポイントを決めて、それに近づいて大きく捉えることで、広角レンズの画角の広さや遠近感が生かされて、迫力のある写真になる。
ヒマワリに近づくことで生まれる背景描写とのメリハリ
ヒマワリに近づけばアップで写せて、広角には望遠にはない広がりも出せる。周囲の花々や、青い空と雲を入れると、背景で咲いている様子も伝えられる。また遠近感も強調されるので、迫力のある画面を作り出すこともできる。
24ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/6400秒) ISO200 WB:晴天
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED7~14ミリF2.8 PRO
マクロレンズ、望遠レンズ、広角レンズなど、レンズの特性を理解しておけば、花の撮影環境に合わせた撮影が可能になります。
写真・解説/吉住志穂