特集

【星景の撮り方②】星空を撮影する時の構図の選択方法

星空のきれいな景色(星景)を見ると撮影したくなるもの。カメラが好きな人にとって、一度は挑戦してみたい!被写体です。星や月、惑星など撮りたい気持ちはあるのだけれど、「難しい!」「真っ暗!」「星が映らない!」など撮影方法の悩みは尽きません。夜の撮影ということで一見難しく感じますが、星景写真は天体として星を捉えるよりも簡単です。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。カメラを通してきれいに撮る方法やテクニックをご紹介いたしましょう。

 

光害がなくて広く空が臨める場所、絵になる地表物がある場所で撮影しよう

星景写真のポイントは、星空の描写をしっかり写し出すことと、地表の表情を引き出すことにあります。星が主役の撮影ですが、地上の取り入れ方を誤ると、作品として成立しなくなることもあります。そんなこともあり、星景写真では撮影場所と構図の選択が重要になります。

この際にまず考えたいのが、光害がなくて広く空が臨める場所であること。さらに、絵になる地表物があることも撮影地の条件になります。また、空と地表物のバランスを考えながら、空を広めに収めましょう。

 

基本テクニック

水準器などを活用して地上の水平をきちんと取る

広角レンズ中心の撮影では、暗い場所でファインダーを頼りに水平を取るのは非常に難しい。そこで水準器を活用しよう。昨今の一眼カメラには、カメラ内に水準器機能を搭載している機種も多い。また、雲台やクイックシューに付いている水準器は、カメラの設置状態で変わってしまうので、外付けの場合はストロボシューに取り付ける水準器を使用したい。

 

カメラ内蔵の水準器なら背面モニターに映し出されるため、暗い中でも確認しやすい。

 

×

暗い中で撮影しているため水平がわからなくなり、画面が傾いてしまった。これでは安定感がなく、せっかくの星空も台無しだ。

山並みの水平が取れていると画面に安定感が出る

写真では山並みがよく写っているが、真っ暗な撮影現場では水平を肉眼だけで判断するのはとても難しい。道具を使用せずに試行錯誤を繰り返して撮影するよりも、撮影効率を考えると水準器を利用したい。水平がきちんと取れると安定感が出て、自然と夜空の印象も高まる。

 

 

応用テクニック①

空に対して地上は画面の下1~2割がベター

基本的に星景写真は空がメインの撮影だ。地表は脇役であり、構図を安定化させるための要素である。特に月のない夜に撮影する場合は、地表物は黒い影にしか写らない。その状況で地表物が多く画面に入ると、星空のイメージを希薄なものにしてしまう。空に対して地表物の割合が1~2割程度になるようにフレーミングしよう。

 



主題を明確にフレーミングすること

△の写真は、山並みが構図の半分を占めている。この日は月明かりもなく、地表物が黒い帯状に写っているだけでつまらない。こんな状況で構図の半分を地表物で占めると、何が主役かわからなくなってしまう。○の写真は、山並みのラインを画面の下1割に収め、星空を9割入れて空の広さを演出した。

 

応用テクニック②

地上の被写体を生かして星空を狙う

基本的には星空がメインの星景写真だが、印象的な地表物を生かして狙う方法もある。形のよい木や岩などは、星空を演出するアイテムとして持ってこいだ。ただし、星景のほとんどは開放で撮影して被写界深度が浅くなるため、カメラと地表物が近いと地表物がぼけてしまう。無限遠に近い地表物を対象として選ぶことが重要になる。

 



樹形のよい林があったので撮影。しかし右上に電線が! 暗い中での撮影は、夜空に意外な邪魔者が潜んでいることがある。昼間のロケハンが重要である。

一本桜と星空を絡めて撮影

山梨県で有名な桜のひとつ、鰐塚の桜を黎明の時間帯に撮影。広角域では30mも離れれば無限遠になるため、絞りF2.8でもぼけずに両者をシャープに捉えられた。薄ら明るい時間帯に撮ることでシルエットが強調されている。

16ミリ相当 マニュアル露出(F2.8 10秒) ISO1600 WB:太陽光

 

星景写真では、「星がしっかり点で写ること」、「地表が地表としてわかること」この2つのポイントを基本として、構図の選択をします。撮影の際、注意するポイントとしては、地表の水平を保つこと、構図内での地表の割合などです。印象的な地表の被写体を見つけて撮影してみましょう。

 

写真・解説/秦 達夫