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【ビルの撮り方①】無骨な高層ビルをフォトジェニックに撮るコツ

都市風景として思い描く写真の多くは、ビルが建ち並ぶ光景ではないでしょうか。高層ビルやシンボリックタワー、坂道や路地といった街の情景、みなさんが学校や仕事に通う日常的な街並みも、ふとカメラを通せば、非日常の世界に変わってしまう。そんな都会ならではの被写体の撮影テクニックやコツをご紹介いたします。

 

撮影:藤井智弘

 

ビル写真のよくある失敗

ただの記録写真で目を引くものがない

高層ビルが建ち並ぶエリアの、中層階の窓越しで撮影。ビルの高さ、建ち並ぶ様子、展望の景観……何を撮りたかったのかが、まったくわからない。これではただの記録写真だ。

 

ここが残念 ×

① 単調でインパクトがない → 解決法①
② 少しだけ抜けはあるものの、いまひとつ平面的 → 解決法②
③ 無機質で色彩に乏しい → 解決法③

 

高層ビルを目の前にして、カメラを向けることはありますが、このような単調で、インパクトに欠ける写真になってしまうことは多々あります。どうすれば、ダイナミックな高層ビルの景色を撮ることができるのでしょうか。

 

ビルが持つかっこいいイメージを光や構図で引き出そう

都市発展の象徴でもあるビルは、高くて大きいのでかっこいいイメージが似合います。しかし、何も考えずにカメラを向けると、そんなイメージは皆無な写真になってしまいがち。それは色味が乏しいうえ、カタチが単調だからです。ビルを印象的に捉えるには、光に注目して明暗のメリハリをつけたり、前景を取り入れて画面に奥行き与えたり、ビルの高さを強調したりすることが欠かせません。ただし、ビルは夜になると様相が一変し、きらびやかな被写体になります。

 

残念ポイント①単調でインパクトがない
【解決法①】画面のアクセントを強調して見せる

そもそもビルは、被写体としてはとても単調なもの。それだけを狙ってもすてきな写真にはなりにくい。そこで、光の反射や窓ガラスに映り込む景色などの光に注目してみよう。そして、それらを強調するように画面に取り入れて描写すると、印象深いビル写真になる。

 

撮影:藤井智弘

マイナスの露出補正で反射する光を強調する
東京駅の赤レンガの近くを通りかかると、駅舎よりその隣のビルに反射する光が印象的だった。そのまま撮影すると東京駅がはっきりわかるものの、光の印象は弱い。そこで1段アンダーに設定して撮影。駅舎よりもビルに反射する光が強調され、イメージどおりに仕上げることができた。

 

残念ポイント②少しだけ抜けはあるものの、いまひとつ平面的
【解決法②】前景を入れて奥行きを出す

写真は平面で見るものなので、いかに被写体を立体的に捉えるかは重要なこと。立体的に捉えられると、被写体が画面から迫ってくるように見え、それがインパクトや印象深さにつながってくる。立体的に見せる方法はいくつかあるが、ビル撮影では前景を入れて奥行きを出す方法が最も容易でおすすめだ。

 

撮影:藤井智弘

手前の幹を画面上部に入れる
東京・新宿の高層ビル群を見上げ、15ミリ相当の超広角域で撮影した。広角レンズは遠近感を強調する効果があるので、普通に撮ってもそこそこ奥行きは出るが、手前の枝が画面に入ったことでより奥行きが強調されている。

15ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/500秒) ISO100 WB:オート

 

撮影:藤井智弘

前後にある新旧の建物を狙う
手前に歴史を感じさせる建物があり、後ろに現代的な高層ビルが並ぶ。そのギャップに引かれ、中望遠レンズを使って無駄なものが入らないように切り取った。このように被写体が前後にある構図だと奥行きを引き出せる。その際、被写体の大きさに違いがあるほどいい。

86ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/1600秒) -1補正 ISO200 WB:オート

 

残念ポイント③無機質で色彩に乏しい
【解決法③】きらびやかな被写体に化ける夜に狙う

昼間は色がなくて無骨なビルだが、日が暮れて窓に明かりが灯りはじめると、フォトジェニックな被写体に一変する。高層ビルが連立するような場所では、夜景として広く捉えることもおすすめで、見上げて撮っても、俯瞰で見下ろしても、きらびやかな夜景写真に仕上がる。その際は、三脚を使って低感度で撮るといい。

撮影:川北茂貴

ビルの明かりが多い平日の夜がおすすめ
オフィスビルや官公庁の窓の明かりは、休日にはほとんど消えて寂しくなるので、特に都会で撮るときは平日が望ましい。

24ミリ相当 絞り優先オート(F11 10秒) +0.7補正 ISO200 WB:太陽光

 

高層ビルを撮影する際は、ビルの高さや奥行きなどダイナミックさを感じられるような構図やアングルをとるようにしましょう。また武骨なビルを情景深く撮りたい場合は、撮影する時間を少し変えてみましょう。フォトジェニックな撮影が可能になります。