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【星と月の撮影の基本④】あける?しぼる?F値(絞り)の設定方法

星空のきれいな景色(星景)を見ると撮影したくなるもの。カメラが好きな人にとって、一度は挑戦してみたい!被写体です。星や月、惑星など撮りたい気持ちはあるのだけれど、「難しい!」「真っ暗!」「星が映らない!」など撮影方法の悩みは尽きません。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。カメラを通してきれいに撮る方法やテクニックをご紹介いたしましょう。

 

 

絞りを開ければレンズを通過する光量が多くなり、絞り込むと光量は少なくなります。また、絞りを開けるとボケが大きくなり、絞り込むとピントの合う範囲、つまり被写界深度が深くなってボケは小さくなります。故に、絞りを絞ると近景から遠景までピントが合って見えるパンフォーカス表現を得やすくなります。

光量とピントの合う範囲を調整するのが絞りの大きな役割です。絞りを開けたいときはF1.4やF2.8など小さい数値を選び、絞り込みたいときはF11やF16など大きい数値を選択します。

光量の少ない星では、絞りを開けて撮影するのが基本ですが、1時間を超える長時間露光で撮る場合には光量を落とすために絞り込むこともあります。一方、月は明るく、遠景にある月を地上の風景とともにシャープに見せるためには、絞り込んで撮影するのが有効です。

 

【 星空の撮影モード 】絞りを開けて撮影する

星を点像で捉えたいときは露光時間を短くするため、絞り開放のF1.4やF2.8で撮影する。絞り開放では周辺画質が乱れたり、周辺光量が落ちてしまったりする場合は、一段絞って撮影すると画質面で有利になる。赤道儀を使った撮影でも追尾の誤差を防ぐため、開放付近で撮影することが多い。

 

【 月の撮影モード 】地上の風景と月を絡めるときは絞り込む

月と地上の風景を一緒に撮るには、絞り込んでパンフォーカスで捉えたい。無限遠にある月までは距離差が大きいため、F11やF16まで絞り込む必要がある。特に望遠撮影では月がぼけないように注意を払おう。なお天体望遠鏡には絞り機構はないため、焦点距離と口径とで決まる固定されたF値での撮影となる。

 

絞りF11で紅葉も月もシャープに捉える

ライトアップされた紅葉の夜らしい臨場感を出すため、満月を点景として取り入れた。広角26ミリレンズで紅葉にピントを合わせ、F11まで絞り込むことで背景の月までほぼシャープに捉えることができた。

26ミリ相当 絞り優先オート (F11 13秒) ISO800 WB:5000K

 

カメラ上級者にとっては、マニュアルモードも苦なく選択することが可能ですが、カメラ初心者にとっては、「マニュアル=難しい!」という気持ちになってしまいます。ですが、そんなカメラ初心者でも、星や月を撮影する時は、マニュアルモードの設定をある程度覚えておいて、あとは、撮影時に試写しながら微調整を行えば、素敵な撮影ができるでしょう。

 

写真・解説/深澤武