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【日中の展望写真の撮り方①】展望風景は、一歩下がって撮るのもイイ!

7月に入り、働いている方も、学生さんも、もうすぐ夏休みに入るこの季節。気分転換に旅行される方もおられるかと思います。そんな時、シンボリックタワーや高層ビルから街を見下ろすシーンもあるでしょう。何気なくカメラを向けて見下ろす町並みも、実は撮影テクニックがいくつかありますのでご紹介します。

 

日中の展望写真のよくある失敗 ×

ただ広いだけの風景が写っており、描写や構図にメリハリがない

45階にある展望室から撮影した都市風景。よくある写真であり、空のかすみとガラスの映り込みによって、若干描写が不鮮明なのも気になる。

 

ここが残念 ×
① ガラスの映り込みや汚れが目立つ → 解決法①
② 全体をただ漠然と捉えているだけ → 解決法②
③ 遠景がかすんでいる → 解決法③

 

展望台からの街並みの撮影ではよくありますね。ガラスがあるので、映り込みしたり、雨粒の跡があったり……と。どのようにすれば、この残念ポイントを改善できるのでしょうか。

 

ガラスの映り込み、天候によるかすみ、単調な画面などに注意しよう

日中の展望風景を撮るには、ビルやタワーにある展望室を利用するのが最も手軽で現実的な方法です。入場料が必要になる場所もありますが、それでも空撮に比べればずっと安価。ここで注意したいのは、多くの展望室はガラスで囲まれているため、特に室内に光が差し込む逆光や斜光では、そのまま撮ると撮影者の姿や周囲の人影などがガラスに映り込みやすいこと。また、限られた空間内から撮るため、画面が単調になりやすい点や、天候によって遠景がかすみやすい点にも気をつけましょう。

 

残念ポイント①ガラスの映り込みや汚れが目立つ
【解決法①】ガラスの映り込みが入らない位置や角度を探る

映り込みを避けるために、できる限りガラスの表面にレンズを近づけたい。ガラスを押すのはNG だが、ラバーフードをガラスにそっと当てたり、レンズとガラスの隙間を黒い布や紙などで覆ったりするのも効果的だ。ただし、暗幕の使用が禁止されている場所もあるので、確認してから使うように。

 

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映り込みがないと視界が開け、クリアな描写になる

レンズとガラスの間に距離を空けると、×写真のようにガラスへの映り込みまで写ってしまう。できる限りレンズをガラスに近づけると、○写真のように映り込みが目立たなくなる。また、撮影者本人の映り込みは、黒っぽい服を着ると低減できる。

 

残念ポイント②全体をただ漠然と捉えているだけ
【解決法②】前景を入れて奥行きを出す

展望室からの日中風景は、ストレートに撮ると単調な絵柄になりがち。特に広角で撮る全景は、平面的で面白みに欠ける。これを避けるひとつの手段は、少し後ろに下がって、あえて展望室の窓枠を写し込むこと。額縁(フレーム)構図となり、奥行きと臨場感が出る。

 



15ミリ相当の広角レンズで撮影。見た目の印象に近い画面となり、建造物が密集した都会らしさは表現できているが、絵的には少々平凡だ。

 

展望室の窓枠を生かして額縁構図で捉える

上の△写真から少し後ろに下がって撮影。水平を意識しながら窓枠を写し込むことで、額によって風景を切り取ったような写真になった。こうした構図は額縁構図やフレーム構図と呼ばれ、奥行きを表現でき、中央に向かって視線を導く効果もある。

15ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/160秒) ISO100 WB:太陽光

 

観光客の姿を入れて奥行きを与える

窓枠のほかに、周囲にいる人の姿を副題として写し込むのもいいだろう。 これも一種の額縁構図であり、前景によって主題となる風景を際立たせることが可能だ。このときピントは前景ではなく、風景に合わせること。

28ミリ相当 絞り優先オート(F3.5 1/800秒) ISO160  WB:太陽光

 

残念ポイント③遠景がかすんでいる
【解決法③】空気がかすんでいたら、仕上がり設定で描写を調整する

日中の展望撮影では、雲や霧、あるいはスモッグや黄砂の影響で遠景がぼんやりとかすんで写ることがある。これを除去することは不可能だが、カメラの仕上がり設定で目立たなくすることはできる。ポイントは、コントラストまたは明瞭度をプラス側に設定することだ。

 

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仕上がり設定で明瞭度とコントラストをプラスに

初期設定のまま撮影した上の写真は、スモッグによって街全体がかすんでおり、メリハリが乏しい写りだ。仕上がり設定で、コントラストと明瞭度をそれぞれプラス3に設定すると、くっきりとした写りが得られた。

 

展望撮影では、漠然と街を撮ってしまいがちですが、前景を入れると、奥行きを感じる撮影が可能になります。また、前景があるからこそ主役である街並みをより際立たせた撮影も可能になります。

 

写真/解説:永山昌克