星空と同様に、月のある景色(月景)もフォトジェニックです。カメラが好きな人にとって、こちらも挑戦してみたい!被写体です。月も星の撮影と同じく、撮影方法の悩みは尽きません。ですが、やはり満月や三日月だと絵になりますしカメラを向けたくなります。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。月と地上風景を絡めた月景写真の撮り方やテクニックをご紹介いたしましょう。
オート露出では明るく写りがち。マイナス補正で夜の雰囲気を引き出そう
月景撮影の露出でポイントになるのがシャッター速度です。焦点距離によって適切なシャッター速度は異なりますが、望遠になればなるほどシャッター速度を速くする必要があります。シャッター速度が適切でないと、月が被写体ブレを起こすので要注意です。
そして、月がぶれないシャッター速度にするには、絞りとISO感度で露出を整えます。高感度に設定すると絞り込んでの撮影が可能になり、ピント合わせも楽になりますが、ノイズの発生が懸念されます。特に暗い夜空ではノイズが目立つので、 ISO感度は低めに設定するのが基本です。
また、カメラが導き出した露出そのままで撮影すると、明るい写真になってしまいがちです。露出補正をマイナス1~2程度すると夜の雰囲気を引き出せます。
基本テクニック
月がぶれないシャッター速度を知ろう
当たり前だが月は動いている。なので、シャッター速度を誤るとぶれて写ってしまう。止めて写すための目安は、広角レンズなら10秒以内、200ミリの望遠レンズであれば2秒程度である。日が落ちて間もない時間帯であれば、これらのシャッター速度はISO感度をあまり上げなくても得られる。感度が上がりすぎるときは、絞りを開けて調整する。
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長時間露光にしてしまい、おまけに三脚を蹴ってしまい、月が何重にも重なって写ってしまった。
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5秒露光で飛行機の軌跡が目立たないように写す
絞りを絞って10秒くらいの露光で撮影したかったのだが、飛行機が複数飛んでおり、軌跡が中途半端に入ると嫌だったので、絞りを開けて5秒で撮影した。飛行機は止まりはしないが、目立たないように撮影できた。
50ミリ相当 絞り優先オート(F4 5秒) -1補正 ISO500 WB:太陽光
応用テクニック①
絞りは開けて撮るのが基本
電球などの点光源を絞り込んで撮影すると、光の筋が現れてキラキラとしたイメージになる。これを生かして、太陽も絞り込んで光条を発生させ、ギラギラ感を演出したりするが、月にギラギラの印象は似合わない。だから特に小さく月を捉えるときは、絞りは開けて撮影しよう。開放でもよいが、1~2段絞って撮影するのが通例である。開放F値がF2.8ならば、F4かF5.6となる。シャッター速度も速く設定できるので一石二鳥だ。
光条があると太陽のように見えるので月は開けて撮ろう
写真を見るとわかるように、月にギラギラとした演出は似合わない。F11に絞り込んで撮影した左の写真は光条が発生し、太陽のようにも見える。レンズによって光条の発生の仕方は異なるので、自分のレンズは絞りいくつから光条が発生するか確認しておきたい。
応用テクニック②
月景の露出補正はマイナスが基本。暗めに写して月の中のウサギも描写しよう
先にも述べたとおり、月景をカメラ任せの露出で撮ると、かなり明るい写真になる。そこで撮影者が露出補正を行い、適切な露出にする必要がある。基本はマイナス補正だ。焦点距離にも影響されるが、広角レンズで撮影したときでマイナス1~2補正、望遠レンズのときはマイナス2~4補正ほど必要になる。
マイナス3補正で適正露出となった
カメラ任せの露出からマイナス1補正したのが左の写真。シャッター速度は1/4秒で、夜の撮影にしてはかなり明るい状態であることがわかる。結果、マイナス3補正して適正になった。
太陽は、ギラギラ感を演出することもあるが、月にはギラギラ感は似合わない。月の演出は、露出補正をマイナスに設定し、しっとりした雰囲気を表現してみましょう。
写真・解説/秦 達夫