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【月景の撮り方④】月齢に合った写真撮影のベストな時間帯がある!?

星空と同様に、月のある景色(月景)もフォトジェニックです。カメラが好きな人にとって、こちらも挑戦してみたい!被写体です。月も星の撮影と同じく、撮影方法の悩みは尽きません。ですが、やはり満月や三日月だと絵になりますしカメラを向けたくなります。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。月と地上風景を絡めた月景写真の撮り方やテクニックをご紹介いたしましょう。

 

 

月景写真は月齢によって印象が変わる。
このほか、おぼろ月や月暈も狙ってみよう

月景写真は月の出と月の入りの時間帯の、月が低いときに撮るのがベターと述べましたが、この時間帯に撮るメリットはほかにもあります。それは、空の表情が狙えることです。月は深夜にも見られますが、空は真っ暗で黒一色のため、空の表情は乏しくなります。
そして、月齢による表情も月景ならでは。満月だとインパクトが出て、三日月なら繊細さや寂しげな印象を引き出せます。さらに、おぼろ月や月暈(げつうん)などの天体現象を狙うのもおすすめです。ここでは、これらの撮り方を解説します。

 

基本テクニック

月齢ごとのベストな撮影の時間帯を知ろう

月齢によって月の出、月の入りの時間は変わる。故に、撮影タイミングも月齢で変える必要がある。丸い月は満月の前の日に撮影すると実はいい。真円の月ではないが写真的には問題ない。月齢14夜(満月の前の日の月)は空の明るさと月の明るさのバランスがよく撮りやすいのだ。14夜のベストな時間帯は日没直後。そして、新月前の有明月(26夜)は早朝、三日月(3夜)は夕方が撮影の狙い目となる。

 

薄暮の時間帯に14夜を撮影

満月のような14夜。日没約30分後に撮影したので、空に程よい明るさが残る。月の高度が低くて地上風景と絡めやすいが、この日は雲が流れていたので、空を広くフレーミングして大胆に雲を写し込んだ。さらに、マイナス1.3補正して暗さを引き出している。

24ミリ相当 絞り優先オート(F8 4秒) -1.3補正 ISO200 WB:太陽光

 

空が色づき始めた早朝に25夜を撮影

下弦の月の2日後(25夜)の早朝。諏訪湖に御神渡(おかみわたり)が現れたという情報を聞きつけて、夜に移動して撮影した。朝焼けの兆しが東の空に現れてきれいだった。主役である御神渡に広角レンズで近づいて大きく捉え、画面のアクセントとして月を添えている。

21ミリ相当 絞り優先オート(F8 8秒)-1.7補正 ISO100 WB:太陽光

 

 

応用テクニック①

おぼろ月はおぼろの中の輪郭がポイント

おぼろ月とは、薄雲や霧などに隠れた月のことをいい、きちんとそのイメージを写し止めることが重要になる。薄雲に隠れた月は、雲自体が白とびをすることがあるので注意しよう。黒い夜空に白くとんだ部分がポッカリ空くのは体裁が悪い。雲の薄くなるときを見計らってマイナス補正を行い、おぼろの中に月の輪郭がわかるように撮ること。

 

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雲が厚いと白とびしやすい

雲の動きに合わせて、肉眼で輪郭が見えるときに撮影するのがポイントのひとつ。上写真のようにタイミングを誤ると、マイナス補正をしても白とびしてしまう。下写真は雲が薄くなったときに、マイナス1.7補正した。

 

応用テクニック②

月暈はプラス補正をして暈をしっかり捉える

月や太陽の周りに光の輪ができる現象を「暈(かさ)」と呼ぶ。一般的に月暈ができると、天気は下り坂だ。月暈を撮影するときは、月ではなくて暈に露出を合わせる。通常の月景撮影ではマイナス補正が中心になるが、薄雲にうっすらと見える暈は、補正なしからプラス補正が必要になる。ただし、プラス補正しすぎると白ちゃけるので注意が必要だ。

 

プラス3補正で暈はもちろん薄雲も描き出す

日の出にはまだ早い深夜に大きな暈が出現。北斗七星と燧ヶ岳も見えていたので、魚眼レンズを使って広範囲をフレーミングした。ここでは暈はもちろん、薄雲のトーンも写るように、プラス3という大幅な補正をして撮影している。

15ミリ相当 絞り優先オート(F5 30秒) +3補正 ISO1600 WB:太陽光

 

月齢ごとに撮影するベストな時間帯をご紹介いたしました。基本的には、月が低い時に撮影するのが、空の表情も豊かで、おもむきのある撮影が可能になります。月齢や天候などを考慮しながら、撮影してみましょう。

 

写真・解説/秦 達夫