猛暑が続く今年の夏ですが、もうそろそろ夏休みですね。登山シーズンを迎え、山の花と背景の壮大な山々との撮影で登山者を楽しませてくれます。夏山の花々は、どのタイミングでどのように撮影すれば臨場感あふれる雄大な写真が撮れるのでしょうか。テクニックやちょっとしたコツと合わせてご紹介します。
登山シーズンでもある夏。登山者たちの目を楽しませてくれるのが、夏山の花ではないでしょうか。高山らしい景色を背景に見せて、雄大な花写真に仕上げましょう。
夏山の花写真でよくある失敗 ×
山岳写真なのか夏山の花狙いなのか……
画面手前に花が咲いていて、背景の山も雄大で一見、見応えがある。しかし、目線が山(空)のほうへ向かうこともあり、花の存在感が弱い。光が乏しくてメリハリがないのも原因だろう。
ここが残念 ×
① ガス(霧)が湧いていて視界が悪い → 解決法①
② 花の存在感が弱い → 解決法②
天候の変わりやすい夏山。花風景は早朝に撮影。霧が出てきたらクローズアップに切り替える
夏山ではハクサンイチゲやミヤマキンポウゲなど比較的大きな花から、コマクサやチングルマ、イワツメクサなど5cm足らずの花までたくさんの高山植物が見られます。天候の変わりやすい夏山では、ガスが湧きにくい早朝に花風景を撮影し、霧が出てきたらクローズアップ撮影に切り替えるのが通常です。特にコマクサのような小さな花では三脚を縮め、ときにはカメラを地面に置いて撮影します。花の目線に合わせたアングルで撮影すると、夏山に咲く可憐な花の魅力を引き出せます。
残念ポイント①ガス(霧)が湧いていて視界が悪い
【解決法①】花風景を撮れるのはガスが発生する前の早朝のみ
夏山の日の出は午前5時ごろなので、花畑を撮影するなら午前7時ごろがゴ ールデンタイムとなる。朝の赤みのある光が取れてクリアになり、夏山特有のガス(霧)が湧いてくることもない。早いときには8時ごろにはガス(霧)が湧き始め、霧が花畑のよいアクセントになるのはほんの一瞬で、あっという間に視界を閉ざしてしまう。
霧が出る前の午前7時に撮影
午前7時、すっきりとした青空が広がり、宝剣岳の鋭鋒とともに千畳敷カールの花畑を撮影した。 朝の時間は空気が澄み、朝露をまとった花畑はみずみずしく見える。右後方からの斜光線で立体感を出せた。
22ミリ相当 絞り優先オ ート(F11 1/80秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター
残念ポイント②花の存在感が弱い
【解決法②】高山植物は花が小さいので低い姿勢になって花に近づこう
高山植物は背が低い花が多く、立ったまま撮影すると花が小さくしか写らずに目立たない。コマクサやチングルマなど5cm足らずの花では、しゃがみ込むようなローアングル撮影が基本だ。花の目線に合わせるなら、地面にカメラを置いて撮影する。ローアングル対応の三脚は必須であり、アングルファインダーや可動式の背面モニターも活用したい。
×
コマクサが一面に広がっていたので、立ったまま三脚を立てて撮影した。花が小さくて目立たず、花風景というより、普通の山岳写真になってしまっている。
20ミリの超広角レンズで花に迫り、背景の山並みも広く写し込む
カメラを地面に置き、コマクサに近づいて撮影。低いポジションから花を大きく見せることでコマクサの存在感が際立った。また、20ミリ超広角レンズで背景に山並みを広く写し込み、高山に咲く花の雰囲気を引き出した。
20ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/40秒 ) - 0.3補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
しゃがみ込んで撮影。標準レンズで高山に咲く花畑の様子を捉える
しゃがみ込んで花に近づき、42ミリ標準レンズで花畑を広く切り取った。ポジションを低くすることで花を大きく見せ、左上に谷を入れて高度感や傾斜感も生かしている。厳しい環境に咲く高山植物らしさが伝わってくる。
42ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/125秒) -0.3補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
望遠レンズでローアングル撮影。青空も上部に取り込む
登山道から少し離れて咲く花を、420ミリ相当の望遠レンズで切り取った。コマクサは高さ5cmほどの花なので、地面にカメラを置いて撮影すると花と同じ目線を得られる。ローアングルにすることで背景に青空が写り込んで爽やかだ。
420ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/640秒) -1.3補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
山での撮影は、背景の壮大な山々を撮っているのか、夏山の花を撮っているのか、しっかり考えながらカメラを向けましょう。花を撮影する時は、被写体である花の位置まで低く構えて撮影するのがベストアングルです。
写真・解説/深澤 武