都市風景において、タワーの存在感は絶大です。それだけを狙っても、風景の一部として広く撮っても絵になります。構図にタワーが入るだけで、アクセントのついた素敵な一枚をとることも可能です。この万能な被写体であるタワーの撮影テクニックやコツをご紹介いたします。
求めるタワー写真を撮るためには光線状態の見極めが大事
屋外で写真を撮る際は、太陽の位置を確認する必要がありますが、タワーの場合はそれが特に重要です。同じ被写体を撮った場合、太陽の位置と被写体との関係でその描写は変わります。これが人物撮影なら、太陽の位置にあわせて人物に最適な場所に動いてもらえばいいのですが、タワーはそれができません。また遠景のタワーを撮る場合、光線状態を変えるために自分が動くとなると大移動です。撮りたいイメージがあれば、それに合った光線状態の時間帯に訪れる必要があるのです。
基本テクニック
青空を生かすためには順光で シルエットで描くなら逆光で捉える
順光でタワーを狙うと、しっかりとその細部まで見せることができる。特によく晴れた日は、空とタワーの露出差も少なく、露出補正で迷うこともないうえ、青空の色もきれいに捉えられる。反対に、逆光では空とタワーの露出差が大きくなり、カメラ任せで撮影すると空は明るく、タワーは暗いという中途半端な結果になりがちだ。そんなときは思い切って空に露出を合わせ、空を主題にしつつ、タワーをシルエットにして表現してみよう。
順光の平面的な描写を超広角の遠近感で立体的に表現する
タワーの質感や描写をしっかり見せたいときは順光がおすすめだが、順光は画面がフラットな印象になりがちなので、広角レンズを使って遠近感を表現してみるのが有効だ。上の写真は、抜けるような青空だったので、エッフェル塔を順光+広角で狙った。空の青さと広角特有の遠近感で、開放的な1枚に仕上がっている。
24ミリ相当 プログラムオート(F5.6 1/640秒) ISO200 WB:太陽光
シルエット描写ではマイナス補正をして黒を締めるのがコツ
夕日が沈む様子を捉えていたら、タワーと重なった。ド逆光の状態だったので、タワーは完全にシルエットとして描写する。この際、補正なしでは空が明るくなり、太陽の存在感やタワーのシルエット感も弱かったので、マイナス1.7の露出補正をしてアンダーめに仕上げた。
70ミリ相当 シャッター速度優先オート(F13 1/4000秒)-1.7補正 ISO200 WB:太陽光
応用テクニック①
画面に太陽を入れるときはフレアに注意しよう
太陽にカメラを向けると、厳密にはどんな高級なレンズでもフレアが必ず入る。フレアとは、強い光の影響で写真がぼやっと白くなる現象だ。特に太陽光度の低い夕日は、強い直接光となりフレアが現れやすい。フレアが入ると、被写体が不鮮明になるので要注意だ。ハレ切りしたり、太陽を建物で隠したりして防ぐようにしよう。
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太陽の位置やその強さ、そしてレンズによってフレアの出方やその強弱は変わるが、フレアが発生すると、このようにもやっとした描写になってしまう。
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応用テクニック②
周囲を暗く落としてタワーを強調する
周囲が暗く落ちれば画面内の情報量が減って、自然と主題であるタワーは強調される。しかし人物や小物撮影などと違って、最適な光となる位置にタワーを動かしたり、フラッシュを使って明るくしたりすることはできない。自然の光によるスポットライトがタワーを照らす瞬間を狙おう。逆光なら周囲は暗くしやすいが、タワーもシルエットになる。
雑然とした街並みを逆光によってシンプルに描く
東京スカイツリーの周辺には、今も下町風情たっぷりな路地が残る。ここを順光で撮ると、民家が明るく写し出されるため雑然としがち。逆光で撮れば、このとおり露出差によって民家が暗く落ちて、スカイツリーに目が向かう。
24ミリ相当 マニュアル露出(F8 1/320秒) ISO200 WB:オート
西日の強い光でスポットライト効果を生かす
雲が低く立ち込めた日。突然、雲の切れ間から真っ赤な夕日が現れ、スカイツリーを照らし出した。このように、西日も天気次第でスポット光のような効果を生む。暗い雲が背景となり、一瞬だけ光のスペクタクルを見られた。
34ミリ相当 マニュアル露出(F8 1/200秒)ISO100 WB:太陽光
シンボルタワーの撮影で最も重要なのは、太陽との位置関係になります。太陽と被写体であるタワーとの位置関係で、まったく違う印象の一枚になります。ですので、撮りたいイメージがあれば、時間帯や撮影場所をしっかり考慮する必要があります。タワーの場所は動きませんので、カメラを構える自分自身が動いて、撮影場所を見極めましょう。