都市風景において、タワーの存在感は絶大です。それだけを狙っても、風景の一部として広く撮っても絵になります。構図にタワーが入るだけで、アクセントのついた素敵な一枚をとることも可能です。この万能な被写体であるタワーの撮影テクニックやコツをご紹介いたします。
前景を入れて画面に奥行きを与えたり無駄な空間を街の情景で埋めたりしよう
タワーは存在感のある被写体なので、何も考えずに狙ってもそこそこ主張のある写真が撮れるでしょう。しかし、よりよく見せるには光線状態のほか、構図の選択も重要になります。前景を入れて画面に奥行きを与えたり、無駄な空間を街の情景で埋めたりすることで、奥深い写真になります。また、都市らしい雰囲気も表現できるでしょう。
また、晴れた日の夕方は、きれいな夕空が広がります。夕空はタワーの舞台には最高の背景なので、空を広くとってフレーミングしてみましょう。
基本テクニック
周囲の光景も取り入れてフレーミングする
タワーは、下から見上げて狙う方法と、離れた位置から撮る方法に大別できる。特に下から狙う場合は、タワーだけのフレーミングになることも多く、単調かつ平面的に写りやすい。また、遠景のタワーを撮る場合は、タワーだけだと画面に余白ができやすい。どちらも積極的に周囲の光景を取り入れて、立体感を出したり、無駄な空間をなくしたりしよう。
お寺によって周辺環境が伝わり、さらに東京タワーの高さも強調できた
東京タワーを見上げて撮ろうとしたが、それだけではただの観光写真だ。そこで、東京タワーの手前に建っているお寺を入れて撮影。これにより周辺環境を伝えられ、タワーの高さや画面の奥行きも表現できた。また順光のおかげで、青空と赤いタワーの色も鮮やかに再現された。
28ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/125秒) ISO100 WB:オート
下町にそびえ立つスカイツリーらしさを表現できた1枚
スカイツリーを狙って下町を歩いていると、公園に巨大なすべり台とそこで遊ぶ子どもたちを発見した。ちょうど向こう側に太陽があったので、露出を落として完全なシルエットで描く。子ども一人一人の動きとスカイツリーの重なりに注意してシャッターを切っている。
50ミリ相当 マニュアル露出(F11 1/500秒 ) ISO50 WB:太陽光
応用テクニック
日没前後は空の変化に合わせて狙いやフレーミングを変えて撮る
前術したとおり、タワー写真をよく見せるには、背景となる空の状態も重要になる。なかでも鮮やかな色味の青空と夕空はタワーにとって最高の舞台だ。特に夕空は、オレンジから紫、紫から青へと刻一刻とその色彩を変化させていく。ここでは、そんな表情豊かな夕暮れどきにおけるタワー写真のフレーミングを、時間経過に沿って紹介する。
(撮影:川北茂貴)
18:21
遠くまで見通せる空気が澄んだ夕方。遠方には富士山まで見える。だんだんと雲が夕照を浴びて焼けてきた。
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18:22
焼けている雲を大きく入れるため縦位置で切り取る。左奥には富士山を配置し、スカイツリーと富士の共演を狙う。
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18:38
右側に入道雲が沸き立ってきた。フレーミングを広くして、今度はスカイツリーと入道雲の共演に。
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19:00
日没から約20分後の19:00。街明かりが瞬き始め、空はだんだんとオレンジ色からトワイライトに。
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19:07
スカイツリーがライトアップされ、ここからは夜景撮影。まずは空の割合を少なくして、手前に横切る首都高を入れて奥行きを出す。都会らしい雑多な密集感が表現できた。
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19:09
グラデーションの空を主役にしてスカイツリーと富士山を捉える
トワイライトの空がきれいなグラデーションになったので、手前の首都高は省き、空を大きくフレーミング。そして中望遠域の焦点距離で、街風景と富士山を圧縮して捉える。これにより、夜景の密度感もアップした。さらに、WB「白色蛍光灯」に変えて、青みを足している。
95ミリ相当 絞り優先オート(F11 25秒) +0.3補正 ISO100 WB:白色蛍光灯
夕方のタワー撮影では、空の変化に応じた描写を心掛けましょう。夕刻の空は、瞬く間に変化していきます。一秒たりともその瞬間を逃さない!という気持ちで臨めば、トワイライトのきれいなグラデーションとライトアップされたシンボルタワーを捉えることができるでしょう。