先週は皆既月食、今週は火星が大接近、流星群もまだまだ続いて見られるなど、天体イベントが目白押しです。というワケで、星撮影の基本的なQ&Aにお答えしてまいりましょう。どうすれば星空をきれいに撮影できるのか、撮影で用いる機能や構図などのテクニックに加え、赤道儀の疑問についてもご紹介いたします。
Question.1 天体を撮影する専用のカメラってあるの?
Answer. センサーの赤外カットフィルターを特別なものに交換し特殊な光を放つ天体を写せる製品が用意されています
天体撮影用のカメラという意味では、研究用の特注品や改造品なども存在するが、市販モデルでも天体撮影用に作られたカメラが存在する。その多くは、センサーに取り付けられた赤外カットフィルターを特別なものに交換し、近赤外線などの特殊な光に対しての感度を上げたものとなっていて、そうした光を放つ星雲などの天体を色鮮やかに撮影できる。下のニコンD810Aのほか、過去にはキヤノン EOS 60Daなどが発売されていた。特殊用途のため高価だが、天体写真の愛好家には非常に魅力的なカメラになっている。
ニコン D810A
Hα線に対して感度を持ち、星雲などの赤みを引き出せる。機能的にも「M*」モードを搭載し、900秒までの長時間露光に対応するなど、天体撮影に最適な仕様となっている。
Question.2 赤道儀を使ったとき露出時間はどこまで可能?
Answer. 星を正確に追尾できる赤道儀なら一晩中の露光も可能。一般的な赤道儀では広角レンズでも30分程度までがオススメです
赤道儀を使えば、星を追尾しての長時間撮影が可能だが、一般的な赤道儀では30分程度が限度でそれ以上の露光を行う場合は、赤道儀に撮影用とは別の望遠鏡を装着し、その望遠鏡で星を見ながら、手動で誤差を調節して撮る必要がある。一部の高級モデルでは、その誤差調整も自動で行う「オートガイダー」と呼ばれる装置や機能を持った機種があり、これらの製品を用いれば、一晩中の撮影も行える。かなり暗い星まで捉えたいなら、そうした赤道儀を選びたい。
オートガイダー付きなら一晩中の撮影も可能
オートガイダー付きなら、誤差調節も自動で行ってくれる。赤道儀の位置を検出する装置や星の位置を捉えるためのカメラなどが必要となり、 製品は高価。 写真はビクセンのSXP Advance。
高精度で安心して撮影できる
赤道儀を用いて、約6分間の露光を行った。広角レンズ使用なので、ポータブル赤道儀でも撮影できるが、精度の面などを考えると天体望遠鏡用の赤道儀は安心感が高い。
Question.3 惑星や星雲などを大きく写すにはどうする?
Answer. 天体望遠鏡にアイピースが付いた状態でカメラを取り付けることで非常に高い倍率で撮影することができます
望遠鏡に専用のアダプターを介してカメラを取り付けることで惑星や星雲などが撮れる。取り付けは主に、コンパクト機などを用いて、アイピースからの光をカメラのレンズで捉える「コリメート法」のほか、アイピースを使用せず対物レンズからの光を直接一眼カメラのセンサーに導く「直焦点法」、アイピースからの光をセンサーに導く「アイピース拡大法」などがある。倍率の面では、コリメート法やアイピース拡大法が高いが、画質面では直焦点法が優れる。
一眼を使用する場合は直焦点法とアイピース拡大法が一般的
一眼カメラを用い、直焦点法とアイピース拡大法で撮影する場合は、右の図のように専用のアダプターを用いて望遠鏡にカメラを装着する。コリメート法は、一眼でも可能だが、コンパクト機などのほうが倍率を稼ぎやすく一般的で、スマホのカメラでも撮影可能だ。
一眼を望遠鏡に取り付けた例。このシステムでは、アイピースとカメラの両方に光を導けるようになっていて、光路が素早く切り替えられる。
望遠鏡を使って土星を撮影
望遠鏡を用いて、アイピース拡大法で土星を撮影。土星の輪や模様が確認できる。描写は望遠鏡の解像力や明るさ、撮影環境などに大きく左右され、一般に口径の大きな望遠鏡ほど有利になる。
最近、天体関連のニュースでは、火星の接近が話題になっています。その他にも、惑星や星雲など撮りたい被写体はたくさんあります。いろいろなテクニックを利用して撮影してみましょう。