特集

【阿波おどりの撮り方③】ダイナミックな「男踊り」はスローシンクロで動感を引き出す

「阿波おどり」の最大の魅力は艶やかな「女踊り」だが、うちわや弓張り提灯を手に激しく舞う「男踊り」も見逃せない。「男踊り」は揃いの法被を着た男衆が隊列を組んで踊っていたかと思うと、観客の目の前まで迫ってきて、勇ましく踊り、キメのポーズを見せてくれる。この「男踊り」はダイナミックな動きが命。ストロボの光で一瞬を止めて撮るのもいいが、スローシンクロで動感を引き出す撮り方がオススメ。

 

スローシンクロでブレの中に被写体を浮かびあがらせる

スローシンクロ撮影は、シャッター速度を遅く設定して、周囲をブラしつつ、ストロボ光が照らす被写体だけ、ピタッと止めて写す撮影手法。激しく舞う踊り手の姿をスローシンクロで撮ると、ブレた画面の中に鮮明に写った被写体を浮かびあがる。シャッター速度は1/8秒以下に設定すると、周囲のブレが大きくなり、ダイナミックな表現になる。

なお、後幕シンクロ撮影で撮ったほうが、ストロボ光が当たった被写体がより鮮明に写るが、シャッターを切るタイミングが難しいので、通常の先幕シンクロ撮影のほうが撮りやすい。

 

商店街を踊り歩く「連」(踊りのグループ)を沿道から撮っていると、カメラに向かって1人の踊り手が向かってきた。自分の“いなせ”な姿を撮ってくれと言わんばかりに、激しく踊る。これはシャッターチャンス。思い切ってシャッター速度を1/2秒に設定し、体の動きと顔の見え方をファインダーでしっかりと確認しながら撮影した。

40ミリ相当 シャッター優先オート(F3.2 1/2秒) −0.3補正 ISO200 WB:オート ストロボ使用

 

弓張り提灯を手に踊る「連」の男性を横から寄り気味に撮影。左から右へと移動する踊り手を流し撮りするようにカメラで追いながら、シャッターを切った。タイミングを見計らって撮ってはいるが、失敗も多い撮り方。たくさん撮って、その中から好ましいカットを選んだ。

105ミリ相当 マニュアル(F7.1 1/2.5秒) ISO100 WB:オート ストロボ使用

 

演舞場を踊り歩く「男踊り」の女性を狙う。被写体との距離が目まぐるしく変化するため、機種によってはTTL自動調光で露出オーバーになることもある。そこで、背景の明るさに合わせてシャッタ−速度、絞りをマニュアルで設定しておき、ストロボは外光オートモードで撮影した。

48ミリ相当 マニュアル(F7.1 1/2.5秒) −0.7補正 ISO120 WB:オート ストロボ使用

 

シャッター速度は1/8秒〜1/2秒が面白い

スローシンクロ撮影では、シャッター速度の設定により、背景や光源の写り方が大きく変わる。「閃光」であるストロボ光に照らされた被写体は静止した状態で写るが、背景の町並みや光源はシャッター速度が遅いほど、大きくブレ、流れたように写る。シャッター速度が1/30秒〜1/15秒のときは、ブレが小さく、スローシンクロ撮影らしい撮影効果は得られない。1/8秒になると動感の感じられるブレとなり、1/2秒では光のブレの中に被写体が浮き上がるような写真になる。

 

「鳴り物」(お囃子の奏者)の中の1つ、「鉦(摺鉦)」の奏者をアップで狙う。背景が大きく流れることを期待して、シャッター速度は1/2秒に設定して、スローシンクロで流し撮りした。

105ミリ相当 マニュアル(F5.6 1/2秒) −0.7補正 ISO200 WB:オート ストロボ使用

 

飛び跳ねるように踊りつつ進む「女踊り」の一団を低いアングルから流し撮り。背景のブレは控えめにし、スピード感のあるブレが生じるようにシャッター速度はあまり遅くせず、1/5秒とした。

70ミリ相当 マニュアル(F5.6 1/5秒) ISO200 WB:オート ストロボ使用