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【ヒガンバナの撮り方②】個性的なこだわりの一枚が撮影できる露出補正とは!?

ここ数日“インスタ映え”とばかりに、SNSで可憐な姿を見せてくれているヒガンバナ。ヒガンバナの開花時期は秋の彼岸、9月中旬から下旬。球根生で群生し、日本では田んぼの畔に植えられた姿が見られます。独特の形状を活かしたヒガンバナの美しい撮影テクニックやコツをご紹介いたします。

 

 

見た目の明るさや色に合わせるだけでなく花に対するイメージを露出で表現してみよう

「花の撮り方」で取り上げた花の多くは淡い色をしており、プラス補正をかけることがほとんどです。しかし、ヒガンバナは濃い赤色なので、マイナス補正が基本となります。ちなみに前回の写真は、どれもマイナス補正を行って撮りました。しかし、同じ明るさばかりでは変化がないので、あえて明るくして、真っ赤なイメージを覆してしまうのもおすすめ。ベストな露出は見た目の明るさや色に合わせるだけではありません。花に対するイメージを露出というテクニックで表現してみましょう。

 

基本テクニック

花の色が赤く濃い色なのでマイナス補正が基本

ヒガンバナは花の色が濃いので、基本の露出はややマイナスになる。補正なしでは濃度が下がって白っぽく写るので、見た目の濃度になるように露出を調整しよう。フレーミングによって赤一色になることもあれば、林や青空が背景になることもあるだろう。背景の色やその面積によっても最適な補正量が変わるので、画面全体の濃淡を見て、おおよその補正量を判断をするといい。

 

±0

-2

花も背景も濃い色なのでマイナス2で適正になった

ここでの背景は深い緑色だ。ヒガンバナも背景も濃い色なので、露出補正なし(±0)ではかなり白っぽく写ってしまった。これでは露出オーバーだ。マイナス2の補正を行うことで、見た目の明るさに近づいた。

 

背景が暗い場合は大幅なマイナス補正が必要

主役だけに強い光が当たり、周囲は暗く落ちている場面。黒い画面に少しだけ赤があるので、大幅なマイナス補正が必要となる。ここでは、マイナス3で適正露出となった。数字にとらわれず、思い切った補正が必要となる。

300ミリ相当絞り優先オート(F2.81/800秒)-3補正ISO200WB:晴天

 

応用テクニック①

光の存在を生かしてローキー調に仕上げる

ローキーに仕上げるには、ただ露出を落とせばいいわけではない。それでは露出アンダーの失敗写真になりかねない。光による明暗差がある部分なら、露出をかなり落としても明部が残るので、ローキーが成功しやすくなる。秋のシックな雰囲気を出すためにも、差し込む光を生かしてローキー写真に挑戦してみよう。

 

夕暮れの群生地の木漏れ日を生かす

露出を補正なし(±0)から1段ずつ落として撮り比べてみた。左の補正なしでは見た目に近い明るさだ。そこからマイナス1補正した真ん中の写真は、花の色も残しながらボケにオレンジ色が乗ってきて、ローキー的な表現となった。さらに暗くした右の写真は、全体的に暗いが、夕暮れのイメージとしてはこれも○だ。

 

応用テクニック②

ハイキー調は色みにもこだわって仕上げるとより雰囲気が増す

ヒガンバナはマイナス補正が基本だが、それは明るさを見た目に近づける場合の話である。実際よりも明るく写して、ハイキー調に仕上げる撮り方もある。ハイキーにするには、フラットな光で撮るか、逆光で輝いた部分を狙うといい。そしてプラス補正をして明るくすれば、赤が薄くなってピンクっぽくなる。

 

前ボケのふんわり感もハイキー描写に合う

ハイキー的な雰囲気を作るのは、明るさだけではない。濁りのない色合いでふんわりとしたボケを入れると、軽やかな印象になる。ここでは逆光に輝くヒガンバナを前ボケとして大きく主役に重ね、プラス補正で明るく仕上げた。

300ミリ相当絞り優先オート(F2.81/200秒)+1.7補正ISO200WB:晴天

 

青っぽい仕上がりのハイキー描写も◎

普通に捉えた左の写真から、露出をプラス側に1.3補正してハイキーに、ホワイトバランスを「晴天」から2900Kに変えて青みを加えた。さらにポジションを少し変えて、前ボケがより花にかかるようにしている。細かな調整の違いだが、総合すると印象がガラリと変わる。

 

ヒガンバナの最適な露出は、基本的に、花の色が鮮やかなので、マイナス補正にしましょう。花の形が特徴的ですので、露出を大幅に補正することでとても幻想的な一枚にすることも可能です。鮮やかな赤を活かして雰囲気のある撮影をしてみましょう。

 

写真・解説/吉住志穂