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【雪景色撮影の超攻略術⑥風景編】影は、絶好のスパイス!光とのベストポジションを探そう

2018年平成最後の冬、風景としての雪、スナップとしての雪、「雪」でも様々な撮影描写ができます。今回は、被写体としての「雪」を撮るテクニックの数々をご紹介いたします。

雪景色撮影は、当たり前ですが画面の中に雪の白が多いということに注意が必要になります。ホワイトバランス、露出、構図、光という項目ごとに、白い被写体を印象深く表現するための基本テクニックはもちろんのこと、寒さ対策、スノーレジャー、寒冷地での撮影機材のトラブル対策など、冬の撮影で必要な知識を盛りだくさんにご紹介していきます。

 

 

雪以外の要素を使って変化を付けることで実際に見るよりも印象深い雪景色に仕上げる

一面に降り積もった雪景色。その広大さに目を奪われてただカメラを向けただけでは、白一色の単調な写真になってしまいます。冬ならではの風景を印象深い作品に仕上げるために、工夫すべき一歩進んだポイントをご紹介します。
 

 

① 大雪原に描かれた影を生かしてメリハリを出す

大雪原を前景にして雪山を撮影。雪原の広がりは出たが、凹凸や陰影があるわけではなく、単調な印象は拭えない。

上の写真よりもポジションを後ろに移動して、樹木の影が雪面に写り込むようにした。大雪原に描かれた影によりメリハリがつき、生き生きとした広がりの感じられる雪景色となった。

34ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/160秒) -0.7補正 ISO100 WB:晴天

 

 

影は雪景色に絶好のスパイス

単調になりがちな白一色の雪景色にあって、影はメリハリを出すために欠かせない。特に樹木とそれによって描かれる影はどこにでもあり、雪景色撮影の絶好のモチーフだ。影を生かすことで雪面の広がりや奥行きを出しやすいのも魅力。光の方向と撮影位置で影は変化するのでベストのポジションを探そう。
 

 

②サイド光で陰影が生まれ立体感が感じられる

サイド光により適度な陰影が生まれ、山並みを立体的に描き出せた。暗い部分があることでメリハリがつき、雪山の白が際立って見える。日陰の青みによって、冬山らしい冷たさも感じられる。

57ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/1000秒) 補正なし ISO200 WB:晴天

 

 

③幾筋もの影で雪面を印象的に切り取る

雪面の凸凹が目立ち、背景の白樺に雑木が混じって雑然としている。影を生かすならすっきりとした雪原に描かれた影を狙いたい。

雪面は緩やかな曲線となっており、そこに描かれた2本の木の影が美しい。背景には白樺以外の木も混じるがバランスよく並んでいる。

白樺の木をワンポイントにして、幾筋も描かれた影を切り取った。影の描かれた雪面を大きく捉えることで狙いがはっきりと伝わる。煩雑になるものは極力フレームアウトするのが肝要だ。

93ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/800秒) -1補正 ISO200 WB:晴天

 

 

色みのない雪景色を単調にしない工夫が大切

雪景色を撮影する際には、単調な画面にならないようにすることが特に大切です。紅葉や桜、新緑といった風景撮影では、鮮やかな色が大きな魅力となりますが、雪は白く、また積雪が地面を覆っているので、フラットな印象になりがちです。だからといってアクセントになるような被写体が都合よくあるとは限りません。

そこで、冬は太陽が低く、長い影ができやすいことを利用して、影を積極的に画面に入れてみましょう。カメラの向きや撮影位置を変えることで影の入り方を変えることができるので、状況に合わせて撮影者が動くことが大切です。
 

④鳥の羽のようなイメージを切り取る

鳥の羽のような模様を望遠レンズで切り取った。広く見せてしまうと羽根のイメージを阻害する岩などが見えてしまうため、イメージを引き出す部分だけをていねいに切り取ることが重要だ。

260ミリ相当 絞り優先オート(F35 1/2秒) -1補正 ISO200 WB:晴天

 

 

思い切ったアップで氷の迫力を引き出そう

雪景色の撮影時に同時に狙えるのが、さまざまな氷の造形だ。その迫力を引き出すには望遠レンズを使ってクローズアップするのが基本となる。氷の様子が面白くても全体を見せてしまうと説明的になって迫力は出しづらい。被写体の部分を切り取り、氷や水の流れだけで画面構成してみよう。
 

 

⑤格好いい枝ぶりとともに氷柱と波しぶきを捉える

冬の湖岸では波しぶきによる氷柱が発達しやすい。特に天候が荒れて波風が立った後が撮影チャンス。湖面に張り出した枝から下がる大きな氷柱を、波しぶきとともに生き生きと捉えた。

51ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/50秒) 補正なし ISO100 WB:晴天

 

 

雪景色とともに撮れる冬の被写体が氷です。なかでも凍った滝、つまり氷瀑は魅力的な被写体となります。しかし、氷瀑の全景を捉えて絵になるのは形の面白さが感じられる一部の滝に限られます。全体を捉えるより、部分を切り取ったほうが氷瀑の迫力を出しやすいでしょう。

川や湖にできる氷も色みはなくとも形はさまざまなので、造形的な美しさが狙えます。余分な部分はカットして、見る人のイメージが刺激されるような構図を目指しましょう。朝夕の青みが強く出る時間帯であれば、氷の冷たい雰囲気が倍増します。
 

 

⑥画面いっぱいに氷を捉えると迫力が出る

横位置で滝全体を見せようとすると左右のスペースが余ってしまい、岩ばかりが目立つため、滝の存在感は弱くなってしまう。

滝全体を見せようとせず、氷と滝の流れが混じった所だけを切り取った。画面内の氷の面積を多くすることで、氷瀑の迫力を強く出せた。全体を見せるより、氷部分を密にするのが大切だ。

180ミリ相当 絞り優先オート(F29 1/2秒) -0.7補正 ISO100 WB:晴天

 

 

PLフィルターの使用に注意!

冬の空気は澄んでいることが多く、雪の強い反射により露光量も少なくて済むため、青空の描写はフィルターなしでも十分。 PLフィルターを使うと青空がどす黒くなりやすいので要注意。
 

 

写真・解説/深澤武