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瀬戸内海の島々と現代アートを巡る撮影旅――2019年夏のおすすめ撮影スポット②直島・豊島・犬島

森の中に銅精錬所遺構が眠る犬島

「瀬戸内国際芸術祭2019」は会場の多くが香川県内の島となっている。唯一、岡山県岡山市にあるのが犬島。古くは大阪城築城の頃から切り出し続けられた花崗岩を産出する島として、近代では銅精錬の島として知られた。いずれも現在は使われておらず、石切り場の跡は巨大な池となり、銅精錬所の遺構(国の近代化産業遺産に選定)は、その一部が再生され、犬島精錬所美術館として現代アートの人気スポットとなっている。島は現代アート作品の展示空間ともなっており、集落の中に点在する作品を巡りながら、島の情景を撮影できる。

なお、島内の移動は徒歩のみ。1時間ほどで巡ることができる。アート作品を鑑賞する時間を合わせて2時間ほどあれば楽しめる。

◆犬島へのアクセス
犬島へは、直島・豊島からの航路と対岸の岡山市伝宝港からの航路がある。香川県側から犬島へ行く場合は、直島の宮浦港、豊島の家浦港を経由して向かう。
●宮浦港←→家浦港←→犬島港/四国汽船/直島から高速船で約55分、3往復
●伝宝港←→犬島港/あけぼの丸/高速船で約10分、最大8往復
※時刻・運賃は船会社webサイト、「瀬戸内国際芸術祭2019」webサイトを参照

 

▲直島からの高速船(右)が犬島港に停泊中。港の入口では、伝宝港からの高速船(左)が入港しようとしている。

 

海岸から見た犬島の銅精錬所遺構


犬島の東海岸に建つ犬島精錬所美術館から海沿いの散策路を南へ歩き、振り返ると、海岸に迫る森の中に銅精錬所の遺構が顔をのぞかせる。穏やかな海、緑の濃い森、レンガ造りの遺構の3要素で画面を構成し、パースを意識した構図を心がけた。焦点距離は40ミリ相当を選択。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 絞り優先オート F11 1/160秒 −0.7補正 ISO320 WB:オート C-PLフィルター使用

 

植物が茂り古代遺跡のようにも見える犬島銅精錬所跡


犬島精錬所美術館でアート作品を鑑賞し、建物の外に出ると、銅精錬所の遺構を巡る散策路に出る。階段を上り、精錬所跡を一望できる場所に出ると、黒いカラミレンガ(銅精製時に出るスラグを利用したもの)が格子状に積み上げられた遺構が広がる。植物が強い生命力で葉を茂らせ、遺構をのみ込もうとする様子に目を引かれる。画面に黒いレンガ造りの遺構を大きく入れ、C-PLフィルターで木々の葉の表面反射を抑え、植物の緑と黒いレンガのコントラストを意識して撮影した。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 絞り優先オート F13 1/60秒 −0.7補正 ISO320 WB:オート C-PLフィルター使用

 

朽ちて森に還ろうとしている犬島発電所跡


銅製錬所の遺構を巡る散策路の南端にあるのが、犬島発電所の遺構。屋根や壁は崩れ落ち、一部が残るのみ。特徴的なアーチ型の窓枠がよく分かるアングルを探し、132ミリ相当の望遠で建物の一部を切り取った。画面右寄り、手前には生命力あふれるツタを大きく入れ、朽ちゆく建物と対比させた。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 絞り優先オート F11 1/125秒 −0.7補正 ISO500 WB:オート

 

アクリルのレンズ越しに見える不思議な世界


犬島の集落のそこここに現代アート作品が点在する「家プロジェクト」。そのうちの1つが透明なアクリルの壁にレンズ状のアクリルを埋め込んだ「コンタクトレンズ」(荒神明香作)という作品。説明的に撮るとつまらないので、レンズの向こう側の家と観光客が上下反転して映る様子を50ミリ相当で切り取った。撮影前に背後の風景がどう映り込むか、どのアングルから見ると建物の輪郭が分かるか、十分に検討することが大切。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 絞り優先オート F8 1/320秒 −0.7補正 ISO200 WB:オート C-PLフィルター使用

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