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ワケあって4年間も購入を我慢した超望遠ズームをついに導入――【2019年買ってよかったモノ:写真家・今浦友喜さんの場合】

2019年の振り返り企画…ということで、プロの写真家やカメラライターに「2019年買ってよかったモノ」(※)を一斉調査! なぜ買ったのか、どうして“よかった”のか、ざっくばらんに語ってもらいます。今回は、写真家・今浦友喜さんの2019年ベストヒットアイテムをご紹介!

※2019年の新発売製品に限定していません

 

今浦友喜さんの2019年買ってよかったモノ:フジノンレンズ XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR

え、いまさら? とは言わないでほしい(笑)

 

私が2019年に「やっぱり買ってよかった〜」と思うものは「フジノンレンズ XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」だ。ご存知、富士フイルムXシリーズのレンズラインナップで最望遠のレンズで35mm判換算150-600mmとなる超望遠ズームレンズ。2016年1月の発売からもうすぐ4年。もっと最近発売した印象だったので、この原稿を書きながらちょっと驚いた。逆に言えばよく4年も購入を我慢したものだ。

 

600mmの画角ともなれば一般的には使う機会の少ないレンズだろう。風景写真のフィールドでもそれほどの望遠は必要ないのでは、と思われるかもしれないが私は“寄り”の風景や生き物の撮影も好んでするため、超望遠レンズの使用頻度が比較的高い。寄りといっても等倍マクロレンズで撮影するようなサイズ感のものではなく、近くの被写体を適度にクローズアップ撮影したい程度のため望遠レンズでの切り出しが最適というわけだ。

 

XF100-400mmは最大撮影倍率は0.19倍で最短撮影距離が1.75m。決してクローズアップが得意とは言えないスペックだが35mm判換算で約0.3倍あれば十分に寄りの画は作れる。超望遠域のクローズアップ撮影ともなれば被写体にフォーカスを合わせた状態でカメラ位置を上下左右に少し移動するだけで背景や前景を大きく変えることができるため、画面の主役に対しての脇役の選択肢が非常に多いのが特徴だ。

 

また言うまでもないが600mmの画角は風景の切り出し能力がすこぶる高いので「あの辺りを切り出したら画になるかな」と思った場所にレンズを向ければだいたいイメージ通りに撮れてしまう。写真撮影では自分の足を使って画面を作り込んでいくのが基本とは考えているものの、それは広角から中望遠くらいでの話。望遠域では被写体が遠く足での調整が物理的に不可能なシーンが多いため、被写体を発見したポジションからズーミングだけで多くの撮影をこなせるXF100-400mmが最強の選択肢なのだ。

 

それだけの性能を秘めていながら重量が1375gでこの焦点距離のレンズとしては比較的軽いのがいい。携行性も悪くないし、手ブレ補正も5.0段という強力っぷりなので手持ち撮影もなんのそのだ。

 

ではそれほど自分に合っていると感じながら、なぜいまさらの購入に至ったかといえば理由はふたつ。まずひとつ目は、数年前にズームレンズを主体とした撮影スタイルになってから、フレーミングを決めるために三脚を立てたらその位置で足が止まってしまっているように感じたため、Xシリーズを本格的に使い始めるタイミングで「原点回帰して単焦点レンズだけで撮ろう」と決めていた。そんな理由もあってここ数年は単焦点レンズにこだわっていたのでXF100-400mmの魅力は理解しつつも我慢していた。

 

もうひとつは機材総量の問題。XF100-400mmは超望遠レンズとしては小さいとはいえそれなりに大きいため、単焦点レンズが容量のほとんどを支配していた僕のカメラバックには入る余裕がなかったのだ。そんな折、広角から中望遠まで便利に使える「XF16-80mmF4 R OIS WR」が登場したことで、そろそろズームレンズを解禁してもいいかなと思いXF100-400mmとXF16-80mmのズームセットを導入したということだ。

 

そんな紆余曲折があり晴れてXF100-400mmを使い始めたわけだが、結論から言えば、4年も我慢するんじゃなかった(笑)。風景写真におけるバリエーションカット、望遠マクロの画作り、生き物撮影など対応力に富んだレンズだと再確認した。やはり自分に合っていると思う機材は素直に使うことが一番だ。

<XF100-400mm使用作例>

紅葉の撮影中に冬桜が咲いているのを見つけた。紅葉の並木からは20mほどの駐車場を挟んだ反対側に位置していたが、回り込んでXF100-400mmの望遠圧縮効果と望遠ボケを利用して画面を作り上げることができた。花つきはポツポツといった感じのため単体では画になりにくかったが、背景にさまざまな被写体を選択できるXF100-400mmだからこそ撮影できた状況だ。

X-T3 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR F6.4 1/200秒 -2.7EV ISO 250