多くのカメラマンはRAW現像で仕上げることを前提に撮影しているが、その現像工程は意外にも簡潔だったりする。ここでは風景写真家・萩原史郎さんが実際に行っているRAW現像術を3ステップで解説してもらった。
雪景色は冬らしい冷たい色とメリハリを強調するのがコツ
<Before(現像前)>
日没間際の池。ホワイトバランスは「晴天」を使ってはみたものの、冬の寒々しい空気感や色味が物足りない。メリハリ感も欲しい。
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<After>
RAW 現像で風景全体に青みを付け、池のシャドウ部を引き締めたところ、冬らしさがストレートに感じられるようになった。
現場ですることとRAWに任せるところを分けて考える
RAW現像時にできることは撮影現場では省き、その分、アングルを探すことや構図を追い込むこと、シャッターをたくさん切ることに時間を割く、これが私の表現スタイルだ。JPEGの撮って出しを否定するものではないが、写真に「己」を注入して作品化するには、RAW現像は私にとっては必須の工程となっている。
もちろん現場でしかできない絞りやシャッター速度のコントロール、フィルターワークなどはしっかりと行う。しかし、明るさの微調整や色合いの追い込み、明暗の強弱などは、誤解を恐れずに言えば、ラフである。
例えば雪景色。雪の白を輝くように白く表現する必要があったり、あるいは極寒の温度感や凛とした空気感が欲しかったりする場合、それを現場で完了させようとするとデリケートな設定や調整が必要になる。ゆえに、一枚の撮影に時間がかかってしまいかねない。私は現場では、雪を白トビさせないこと以外には頓着しない。色味に関しても追い込んだりはせず、基本はホワイトバランス「晴天」のまま撮り進めている。
そして明るさや色合い、コントラストなどを中心にRAW現像を行えば、自然風景の範疇を超えずに作品化することができる。そのためのソフトとしては、オリンパス「Workspace」は十分な内容を備えている。ぜひこのソフトを使いこなして、「己」が感じられる作品を作り出してほしいと思う。
色温度とシャドウ調整で寒々しい描写に仕上げる
萩原史郎 × Olympus Workspace × 雪景色
ステップ1. 色温度「4500K」で画像全体に冬らしい青みをかける
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ホワイトバランスは「晴天」をベースに撮影をしているが、これはフィルム時代のデーライトに相当するので、経験上慣れているから。日没間際の撮影なので、「晴天」ならもう少し青みがかかるかと思ったが案外、青みが弱かった。そこで4500Kに設定し、冬らしい冷たい色を画面全体に施した。
ステップ2. 「色調整6」ブルー系を最大値にして、湖面のみさらに青みを強くする
雪の青みは4500Kで十分に出せたが、水面はもう少し青くしたい。そこで「色調整」の中のブルー系である「6」を最大値へ。これによって青が強い水面の色が強調された。同じブルー系でも「7」はやや軽やかな色をしているため、冬の荘厳な青を出すには「6」のほうがベターと判断した。
ステップ3. ハイライト&シャドウのうち、シャドウだけを「-2」にすることで湖面の暗部を引き締める
ここまで調整してきた結果、狙いどおりの青を画面に施すことができた。しかしフラットな光の下での撮影だったので、ややメリハリに欠けた印象だ。そこでコントラストを調整できる「ハイライト&シャドウ」のうち暗部だけを調整できる「シャドウ」を「-2」にすることで、池の暗部を引き締める。その結果、メリハリのある仕上がりとなった。これで完成!
ステップ2
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ステップ3