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花火を適切な明るさで美しく仕上げるには? 花火写真家のリアルRAW現像&レタッチ術

写真家のリアルRAW現像&レタッチ術・花火編/金武 武×オリンパス Workspace

写真家は作品を仕上げるときに、どのくらいRAW現像やレタッチをしているのだろうか。今回は夏の代表的な被写体である花火写真について、鮮明に仕上げるリアルなRAW現像術を花火写真家の金武 武さんにうかがった。

 

<Before(元画像)>

<After>

 

適正露出に仕上げることがマスト!カラーごとに輝度や彩度を調整して全体の描写バランスを整えよう

打ち上げ花火は暗い和火から明るい銀冠菊まで、さまざまな明るさの花火がある。スターマインのようにいくつもの種類の花火が一斉に開花する場合は、ISO、絞り、シャッター速度、NDフィルターなどで露出調整を試みても、露出オーバーやアンダーになってしまう花火が必ず出てくる。

また、デジカメで表現できる光の幅(ダイナミックレンジ)は人の目よりも狭いため、オーバーやアンダーになってしまうのも理由のひとつだ。花火は明暗差の広い被写体である。それでも撮影時には絞りやNDフィルターなどを駆使し、可能な限り適正露出で撮っておくことを心掛けよう。これによりRAW現像がよりラクに、そしてきれいに仕上げることができる。

多少の露出オーバーやアンダーならRAW現像である程度は見た目に近い明るさや色調に再現することが可能。だが、あくまでも最終段階の微調整程度と考えておこう。完全に白トビしてしまった画像はRAW現像でも再現することはできない

今回はオリンパス PEN-Fで撮った色鮮やかなワイドスターマインの写真を、同社の無料現像ソフト「Workspace」で調整する工程を紹介する。青、橙、紫、緑、紅(赤)などさまざまな色が並ぶスターマインは、色によって花火の輝度が異なる。一般的に青は暗く、緑は明るく写る。また紅(赤)は彩度が高過ぎることが多いので、色ごとに調整を行なって見た目に近い色合いに再現していく

 

-金武流RAW現像術-5色の花火が上がるワイドスターマインを鮮明に仕上げる

使用ソフト 【オリンパス Workspace(ver. 1.1)】

Workspaceは、以前のViewer3(2019年3月31日終了)よりも調整できる幅が広く使いやすい。特にカラーごとに「輝度」と「彩度」を調整できるようになったのが良い。また編集フィルターに「明瞭度」と「かすみ除去」も追加された。

 

手順①露出オーバーのハイライト部を落として花火の色を引き出す

5色の花火の中で緑色の花火と噴出花火が白っぽく、露出オーバー気味に写ってしまった。まずはハイライトを落とし、オーバー気味の箇所を抑える。ここではハイライトを「-12」に設定した。もし緑花火だけを撮影するなら、ひと絞り絞って撮影すれば露出オーバーにはならない。

 

<手順①での仕上がり>

Before

After

 

手順②マイナスの露出補正で画像全体の明るさを抑える

ハイライトを下げても緑花火や噴出花火はまだ露出オーバー気味のため、露出補正を「-0.8EV」まで下げる。オーバー気味だった緑花火と噴出花火の露出が見た目に近くなってきた。これにより、夜空の黒の締まりもよくなった。

 

手順③緑色と青の輝度を調整する。緑は落として青は上げて全体のバランスを整える

色調整の項目から、カラーごとに調整を行う。ハイライトを落として露出補正をマイナスにしたが、まだ若干緑花火は明るい。緑の輝度スライダーを「-5」ずつ下げて、ほかの色とのバランスを見る。さらにマイナス補正で暗めになってしまった青の輝度スライダーを「+7」「+4」に上げて明るくする。

 

<手順③での仕上がり>

Before

After

 

手順④強めに色が出る赤系統の彩度を下げて完成

ピクチャーモードを「ナチュラル」にして撮影しても、赤系統の花火は濃く写ることがある。赤花火が濃いとほかの色とのバランスが悪く感じるときがあるので、赤の彩度を落とす。今回は赤~ピンクの彩度スライダーを少しずつ下げることで、全体の鮮明度合いが整った。これで完成。

 

<手順④での仕上がり>

Before

After

 

<Before(元画像)>

<After>

 

【コラム】「輝度」と「彩度」の違いとは?

「輝度」とは色の明るさのこと。Workspaceでは色ごとに輝度(彩度)の調整ができ、輝度を上げるとその色が明るくなる。輝度を下げると暗くなる。「彩度」とは色の強弱のことで、彩度を高くすると色鮮やかになる。彩度を低くすると色が抜けて、グレーっぽい色になっていく。