特集

御朱印帳ならぬ「鉄印帳」プロジェクト始動! 地域経済と観光業の活性化を目指す

第三セクター鉄道等協議会が、全国40社の第三セクター鉄道と共同で行う「鉄印帳」事業が2020年7月10日にスタートする。「鉄印帳」とは、寺社巡りで人気のある御朱印帳の鉄道版。地方の第三セクター鉄道の指定場所に行くと、御朱印ならぬ「鉄印」が集められる。そうして、全国にある40社を巡る新しい鉄道の旅だ。

 

現在第三セクター鉄道は、沿線での人口減などによる利用者減少という厳しい環境に置かれているが、このプロジェクトを通じ利用者の増加を図るとともに、地域経済と観光業の活性化を目指すという。旅の記念に、また40路線全制覇を目指して、第三セクター鉄道の旅に出かけてみては?

 

「鉄印帳」とは

今回のプロジェクトに参加する40社の鉄道会社の指定窓口にて販売する「鉄印帳」(税込定価2,200円)を購入し、記帳料(300円~)を支払い各社オリジナルの「鉄印」を集めるというもの。

▲こちらが実際の「鉄印帳」。布製ハードカバーに金文字があしらわれている。

 

「鉄印」は、各社趣向を凝らしたもので、実際に手書きで書き入れるものや作り置きした鉄印に割り印を押すもの、地元出身の書家の書をあしらったものなどさまざま。各鉄道会社の個性が表れていて、それを集めるだけでも楽しい。

▲6月23日、東京都内で行われた「鉄印帳」事業の記者発表の際にいただいた、三陸鉄道リアス線の「鉄印」。沿線随一のビューポイント大沢橋梁を行く列車が描かれている。

 

「鉄印」の集め方

まずは、「鉄印帳」事業に参加する全国の第三セクター鉄道の指定窓口のいずれかで乗車券を提示の上「鉄印帳」を購入。今回の事業に参加するのは、以下の40社。各社の指定窓口はこちら

※現在BRT導入に伴う駅改良工事を行う阿佐海岸鉄道は、工事完了後にスタート

 

▲記帳料を支払うと各社オリジナルの「鉄印」が「鉄印帳」にもらえ、窓口にて受け取ることができる。

 

2社目以降は、同じく乗車券を提示し記帳料を支払って「鉄印」を集めていく。なお、40社すべての鉄印を揃えると、シリアルナンバー入りの「鉄印帳マイスターカード」を有料で発行。カードを提示することで、各鉄道会社のイベントへの優先参加などの特典を予定している。

 

「鉄印」を集めながら撮影を楽しむ旅へ~「鉄印帳」の旅・オススメ5路線~

「鉄印」を集めるのも楽しいが、せっかく旅をするなら、ぜひとも沿線において撮影も楽しみたい。ということで、筆者がこれまでに訪れた路線のなかから、乗って楽しく、鉄道撮影も楽しめる、オススメの5路線を紹介しよう。

※新型コロナウイルス感染症等の影響により、運行状況が平常時と異なる可能性があります

 

(1)会津鉄道会津線(西若松~会津高原尾瀬口間57.4㎞)

▲塔のへつり駅を過ぎて直ぐに阿賀川の美しい流れと塔のへつりの断崖が見える

野岩鉄道と接続する会津高原尾瀬口駅から「鉄印」の指定窓口のある会津田島駅を経由し、福島県会津地方の西若松駅(列車はすべて会津若松駅まで直通)までを結ぶ。東京の東武線浅草駅から会津田島駅まで直通特急列車のリバティ会津のほか、東武日光駅と会津若松駅(喜多方駅まで直通運転することも)との間には直通快速のAIZUマウントエクスプレスが走る。

 

山間を行く走行写真のポイントもあるが、茅葺き屋根の駅舎で有名な湯野上温泉駅や、途中車窓に見え隠れする阿賀川の流れを車内から狙ってみるのも面白い。

 

(2)真岡鐵道真岡線(下館~茂木間41.9㎞)

▲多田羅駅を出発して直ぐのポイントは、迫力満点の写真が狙える

今回「鉄印帳」プロジェクトに参加している第三セクター40社の中で唯一SLを動態保存している(SLもおか)のが真岡鐵道だ。SLを象ったユニークな駅舎の真岡駅にて「鉄印」がもらえる。

 

関東平野の端の田園地帯を走るローカル線で、桜並木の下をナノハナが彩る北真岡~西田井間の区間はあまりにも有名。迫力あるシーンを狙うなら、SLが停車する駅からの出発シーンを狙ってみたい。また、緑色に赤いラインを施したイチゴ模様の普通列車も可愛らしい。

 

(3)長良川鉄道越美南線(美濃太田~北濃間72.1㎞)

▲赤池駅から歩いてアプローチできる第三長良川橋梁を行く観光列車ながら

鵜飼で有名な長良川に沿ってのんびりと走るローカル線長良川鉄道。車窓に望む美しい風景を見ながら沿線の味が楽しめる観光列車のながらが人気だ。「鉄印」はいずれも古くからのレトロな雰囲気の駅舎が目を引く関駅、郡上八幡駅の2カ所でもらえる。

 

途中何度も鉄橋を渡るが、駅からのアプローチが近く、迫力あるシーンが撮れるのが美並苅安駅と赤池駅の間にある第三長良川橋梁。ガーター橋とトラス橋の複合橋梁で、古い橋脚もフォトジェニックだ。

 

(4)京都丹後鉄道宮津線(西舞鶴~豊岡間83.6㎞)

▲由良川橋梁を渡る観光列車丹後あおまつ。丹後由良駅から徒歩で15分ほど

京都丹後鉄道宮津線は、京都府の北部、若狭湾の沿岸と丹後半島の付け根を走っている。京都丹後鉄道はこのほか宮津駅と福知山駅を結ぶ宮福線と2路線あるが、「鉄印」は宮津線沿線随一の観光名所に近い天橋立駅でもらえる。

 

天橋立を走る俯瞰ポイントがいくつもある中、駅からも歩けて人気なのが丹後神崎駅と丹後由良駅との間にかかる由良川橋梁だ。由良川の河口にかかり、その先は大海原が広がる絶好のロケーションである。

 

(5)松浦鉄道西九州線(有田~佐世保間93.8㎞)

▲海を臨みながら走る松浦鉄道の普通列車。撮影ポイントまでは鷹浜口駅から徒歩だと片道30分ほどかかるので、余裕を持って出かけたい

島嶼部を除いた日本で最も西にある鉄道が松浦鉄道だ。長崎県の北西部、松浦半島と呼ばれるエリアをぐるっと約1周、半島を囲うように走る。「鉄印」は、その最も西の駅である、たびら平戸口駅にてもらえる。

 

撮影としてのオススメは、内陸部を走る西側の区間ではなく海沿いを行く東側の区間。伊万里湾に沿うような形で、途中何カ所も海を見渡す。特にオススメしたいのが、鷹浜口駅と前浜駅の間。沿線でも数少ない直接海に面している貴重な区間である。