今や空前のお城ブームが到来している。日本には数々の名城があり、最近ではそれを撮ろうと出かける人も多い。とはいえ、ただそのまま撮っただけでは見た目と同じ。お城を格好よく、また美しく見せるにはどのようにすればよいのか? 城郭写真を撮り続けるプロにその技を紹介してもらおう。
日本の名城を撮ろう! 城郭を表情豊かに描く撮影術
- 霧や光を利用して城郭を立体的に浮かび上がらせよう
- 天守をカッコよく見せるにはポジションとアングルが決め手
- 堀や石垣にも注目! お城の機能美を表現しよう
石垣やお堀にも隠された美しさがある
戦国期・中世の城とは、領内に侵入してきた外敵を迎え撃つと同時に、近隣の同盟勢力から援軍到着までの期間を籠城戦で持ちこたえるための軍事施設で、多くが山に築かれていた。合戦もなくなった江戸期以降は変化を遂げて、軍事機能に加えて政治機能や建築美を併せ持ち、平地へ築かれることが一般的になった。
ここで重要なのは、山の城であれ平地の城であれ、「堀」を備えているということ。水堀で優雅に船を浮かべたり、空堀でお花見をしたりと、現在では大変親しまれている場所だが、世が世ならば侵入者を撃退するための重要な施設だったのだ。
堀を入れることで天守が引き立つ
実際のお城撮影において大切なのは、そうした堀を画面に取り入れること。「城は堀」といっても過言ではなく、堀を入れることで天守が引き立ち、美しく見える。防衛設備である石垣もしかり。陰の出方や映り込みなど、天守と同様に光によって刻々と変化する表情にも意識を向けるようにしたい。
城郭を形成しているパーツを意識する
実は、城にオリジナルの天守が現存しているのは珍しく、たったの12城しかない。しかし、天守はなくとも、堀、櫓、門といった城郭を形成しているパーツを意識して写真にしていくのが城郭写真の基本である。その意味では、見えない角度から撮影できるドローンも手段の一つ。
光や構図はもちろん、お城についての知識を頭の片隅に入れておけば、さらに理想的な城郭写真が撮れることだろう。
[石垣] 復元天守よりも価値を感じる熊本城の二様の石垣
石垣の名城として知られる熊本城。武者返しと呼ばれる反り上がった石垣が鎮座して、天守を守護している。この城のうんちくを知れば、奥の復元天守よりも、手前の「二様の石垣」に文化的材価値を感じるはずだ。
<お城DATA>
熊本城 (熊本市中央区)
加藤清正築城による九州屈指の巨大城郭。平成28年の熊本地震により大部分が倒壊し、現在も復興作業が続けられている。
[堀] 防衛機能を果たすクランク状の水堀を生かそう
クランク状に折れ曲がった水堀は、ただのデザインではなく、敵を正面と側面から攻撃するための防御機能だ。ただ単純に桜を撮るのではなく、お城の堀を撮るという意識を前提にするとよいだろう。
<お城DATA>
弘前城 (青森県弘前市)
石垣改修のために曳家した天守を含め、江戸期の城郭遺構が多数残る。また、桜の名所としてシーズン中は多くの観光客で賑わう。
[堀と天守] 権力を誇示するがごとく造られた石垣を縦位置で表現
大坂城の特徴は、当時最新鋭の高石垣と広大な堀である。それらを意識して模擬天守と太陽の位置が理想的になるようなインパクトのある構図を狙っていきたい。「城は堀」であることを常に意識して撮影しよう。
<お城DATA>
大阪城 (大阪市中央区)
1620年、大坂夏の陣において豊臣家を滅ぼした徳川家により、新たな権力の象徴として当時の大坂城を破却し築城された天下の名城。
[門] 人工物が入らないように注意
門を生かすのも1つの手法。ただしここでは、菱門の枡形構造と天守に気を取られ、手前のカラーコーンが目立って写り込んでしまった。ついつい忘れがちだが、せっかくの被写体を台無しにすることもあるので注意したい。
[石垣・堀] 広く見せ防御機能であることを表現
三国堀をダイナミックに配置して、本丸に聳える連立天守を望む。天守との高低差を利用した防御機能を見せるとともに、本丸を守っているエリアであることを意識させたい。水堀の広さも強調できればさらに良いだろう。
[水壕] 雨水でできた水壕に映し出された中世の城郭の様子
土塀や櫓が曲くるわ輪に配置されている全体像を、引きのアングルで撮影する。偶然にも前日に降った雨が空堀に溜まって水壕となり、強い日差しが城郭を水面に映り込ませ、湖に浮かぶ船のようになった。
<お城DATA>
逆井城 (茨城県板東市)
後北条氏が支配した中世をイメージして、城址に築かれた模擬建築。高いクオリティで訪問者を戦国期にタイムスリップさせる。
[ドローンを使った表現] ドローンを駆使すれば山に隠れた城の姿が見える
ヘリコプター、あるいはクレーンを用いれば辿り着けるかもしれない鳥の目線。現代の空飛ぶカメラ・ドローンを駆使すれば、それが可能になる。山上に築かれた壮大な石垣を空中から見下ろすことも可能だ。
<お城DATA>
岩村城 (岐阜県恵那市)
武田と織田の城取合戦渦中、守将であった女城主おつやの非業の死が歴史に残る。後に、石垣造りの近世山城に改修された。
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