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【2020ベストバイ】1本で2度おいしい! いつもと違う写りのレンズでスナップを満喫 ─ 藤井智弘さん

1年で世界のありようがガラッと変わってしまった2020年。あっという間に1年が終わってしまったという方も多いのでは? ほんの少しでも楽しんで明るい2021年を迎えていただきたく、プロの写真家やカメラライターに「2020年に買ってよかったモノ」を一斉調査しました! さあ、何が出てくるかな?

藤井智弘さんの2020年ベストバイ「フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4」

フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4
まるで純正レンズのようにライカMにフィットする。金属製のレンズフードを装着した姿もカッコイイ。

ライカ純正ラインナップにない40mmがスナップにちょうどいい

ライカMシステム (いわゆるM型ライカ) で作品を撮ることが多い私は、レンズはライカの21mm / 28mm / 35mm / 50mm / 90mmを所有していて、ほぼ不満はない。しかし、時には少し個性的なレンズが使いたくなることもある。そうした「いつもとは違う写りが楽しめるレンズ」で気になっていたのが「フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4」だ。

35mmでも50mmでもない焦点距離は、かつてライカでも「ライカ CL」(ライツミノルタCL) 用に「ズミクロン 40mm F2」(ロッコール 40mm F2) が存在していたが、現在は40mmという焦点距離はない。そしてF1.4の明るさながらコンパクトなのがなんとも魅力的。しかもコーティングはマルチコートのMCのほかに、シングルコートのSCもある。

今年に入り、運よくこのレンズのSCを使わせてもらえる機会があった。試してみると、40mmの画角はスナップに使いやすい。私は普段スナップでは50mmが多いが、わずかに広く撮りたい場面で40mmはちょうどいい。デジタルの「ライカ M」や「ライカ M9」に装着したバランスも良好だ。そして描写力。「classic」の名前の通り、絞り開放ではクラシックレンズのような柔らかさがあり、絞ると現代のレンズらしい鋭いシャープさと高解像を持つ。1本で2度美味しいレンズだ。

さらにAPS-Cの「リコー GXR」のMマウントユニットに装着すると60mm相当。アダプターでマイクロフォーサーズに装着すれば80mm相当になり、どのフォーマットでも使いやすい。すっかり気に入って購入を決めた。

次に悩むのがコーティングだ。MCにするかSCにするか。コシナに問い合わせてみたところ、順光で撮ればほぼ同じ。逆光でフレアの出方が違う程度、とのこと。現代のレンズはマルチコートが当たり前なので、あえてシングルコートのSCにした。

現代のレンズながらクラシカルな味わい、アバウトさも意外性があって楽しい

描写や画角はとても気に入ったが、レンジファインダーのライカMシステムボディに装着すると、二点ほど問題点がある。ひとつがブライトフレームだ。ライカには40mmというフレームはない。ちなみに装着すると50mmのフレームが現れる。「ライカ M」ではライブビュー、もしくはEVFを使う方法もあるが、せっかくのレンジファインダー機なので光学ファインダーで撮影したい。そこで50mmのフレームより、二回りほど広く写るという「勘」で構図を決めることにした。デジタルなら撮影後にすぐ確認ができるので、よほど一瞬を狙った場合でなければ撮り直せばいい。むしろ、きっちり構図を決めたスナップばかりでなく、アバウトなのも意外性があって楽しい、とポジティブにとらえることにした。

もうひとつは6bitコードがないことだ。ライカの現行レンズには6bitコードがあり、Exif情報の記録や画質の最適化がされるが、ライカ純正ではないため当然不可能。せめて何のレンズで撮ったかわかるようにしたいと思い、マニュアル設定で近いレンズと判断した旧「ズミルックス 50mm F1.4」を選択した。ただしミラーレスに装着した場合も似たようなもの。これらは購入前からわかっていたことなので、問題とは言いながら大して気にしてはいない。それ以上に40mmが持つ画角と、現代のレンズながらクラシカルな味わいをもっと楽しみたいと思っている。

フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4 実写作例

フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4 作例

絞り開放ではハイライトににじみが出て、ボケ味もクラシックレンズのようだ。しかし現代的な解像力も併せ持っていて、このレンズだからこその写り。やや広めの画角も街で使いやすい。

ライカ M (Typ240) NOKTON classic 40mm F1.4 絞りF1.4 1/250秒 ISO200 WB : オート

 

 

〈文・写真〉藤井智弘