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メルカリで売れやすくなる商品撮影のコツ、自宅できれいに撮れる「4つの鉄則」

商品撮影は専門のカメラマンがいるくらい実は奥が深くて難しいもの。でも基本はライティングと商品の形を正確に写すこと。フリマアプリ「メルカリ」への出品も兼ねて挑戦してみませんか?「より注目を集め、選ばれやすくなる商品撮影のコツ」をプロが伝授。出品時のポイントも聞きました

 

お聞きした人:井川拓也さん

1975年、大阪生まれ。人物や商品の広告撮影を中心に、ソニーのαアカデミーの講師としても活躍中。著書に『いちばんやさしい新しい写真 & カメラの教本』(インプレス)、『今すぐ使えるかんたんmini SONY α6400 基本&応用 撮影ガイド』(技術評論社)など。

 

わかりやすく伝わる写真で初速が変わる!

「押さえるべき「4つの鉄則」を解説

メルカリなどのフリマアプリでは商品の状態を正しく伝えて、購入者に信頼感や安心感を抱いてもらうことが大切です。特別な照明機材を用いなくても、基本は窓からの自然光でOK。少しのコツを押さえるだけで、写真の印象をグンと良くできます。

鉄則 1  ブツ撮りはサイド光を活用して立体的に撮る!

・ 順光はNG!「サイド光」で立体的に撮る

・ 「明度差が少ない」写真のほうがわかりやすい

・ 写真を上下二等分した際、「上半分」の明るさが全体の印象を決める

井川「窓ごしのやわらかい自然光が商品右上から照らすようにセット。白レフ板を使って、写真全体のトーンを整えましょう。部屋の照明は消しておくとホワイトバランスでの色調整が容易です」

 

「わかりやすい写真」と「かっこいい写真」は違います。まずは、気をつけたいのが光の使い方。物に対し順光で撮ると「手前が明るく奥が暗い」写真になりがち。カーテンなども用いて、やわらかい光の調整を。

 

鉄則2 商品からなるべく離れて望遠寄りのレンズで撮る!

・ 物が歪んで写ってしまうので、レンズを近づけての撮影はNG!
・「なるべく離れて撮る」だけで、商品の形を正確に写せる
・ 望遠レンズがなければ、離れて撮って中央を大きくトリミング

商品の全体を見せようとすると、ついレンズを近づけて撮ってしまいたくなるが、それは歪んで写る原因になってしまう。一見、Beforでもよく撮れているように見えるのだが、比べると差は歴然。素人っぽさから抜け出すためのコツだ。

形良く写すには実際の位置関係が大切。いわゆる標準レンズであっても離れて撮り、中央をトリミングして使う。

撮影時の実際のセッティング。三脚と後で紹介する「撮影用ボード」は使っているが自宅の一室でも十分な写真は撮れるのだ。

 

鉄則3 カメラは三脚にセットして、商品を置き直しながら撮る!

・ カメラは手持ちせず、まずは三脚に据えて「アングル」から決める

・ 光の向きや商品を置く場所が決まれば、商品の再配置もやりやすい

・ 一度に複数商品を撮影するときにも、画角優先のほうが効率的!

・ 三脚の利用でシャッタースピードを稼ぎ、低ISO感度で撮る

室内でも三脚を用いるメリットはいくつもあるが、主には効率化と低感度撮影ができること。ブツ撮りでは商品の置き方にも悩むことが多いもの。手持ちで撮影していると、商品を置き直すたびにアングルも仕切り直しになってしまう。複数の出品物を撮る時にも、この方法ならスピーディーに撮っていきやすい。

 

鉄則4 10枚の写真で情報をたくさん伝える!

・ メルカリは一度の出品に写真10枚まで掲載OK、なるべく盛り込もう!

・ 付属品、商品の背面や側面、キズなどの気になる箇所も必ず写す

・1枚目の写真には「空白」を設けると、出品時の設定で文字を入れやすい(※メルカリ公式アプリからの出品ではアップロード時に文字入れや加工ができる)

・ 1:1の画像だとメルカリでは画面いっぱいに表示可能、初めからスクエア撮影もするのも手

 

メルカリを見ていると、意外に多いのが掲載写真の少ない出品物。10枚まで載せられるので、あらゆる角度から情報を伝えるようにしたい。購入者が直接手に取れないだけに、付属品をはじめ、商品の背面・側面などの細かい場所までケアしよう。中古店で自分が必ずチェックするようなポイントはどこかを思い出しながら、それに応えるような商品写真を押さえていくといいだろう。

井川「付属品が多い時は真上から俯瞰で撮る構図もわかりやすく便利です。窓の反対側は暗くなりがちなので白レフ板で光を回しましょう」

 

背面は液晶画面の程度を知らせよう

軍艦部もキズが目立ちやすい箇所だ

液晶の反射は手前に黒い紙を置くと消せる

キズは順光で撮るとはっきり映る

 

購入者の気持ちで撮ろう!

今回、自宅でのブツ撮りのポイントを教えてくれた井川拓也さんは、メルカリを上手に活用している一人。不用品などを出品するうちに「写真がきちんと撮れていれば、単純に売れやすいはずだ」と実践し、売れ行きを伸ばしてきた。時には捨てようとしていた衣類が10万円(!)になったことも。

「メルカリは手軽に出品できるのがメリットですが、撮影に手をかけすぎたら本末転倒。自宅で、自然光でも十分に撮れます。出品するものを貯めておき、カメラは三脚に固定して画角から決めれば、商品だけを入れ替えてまとめ撮りできるので効率的です」

大切なのは「購入者の気持ちになること」だ。迷っている商品ほど写真を何度も細かく見ることになる。使用程度やキズなど正確な情報を伝えることが大切になる。正しい写真は購入後トラブルを防ぎ、メルカリ内での評価も高まる。

「写真で伝えられることが多ければ、出品時の説明文も『詳しくは写真でご確認ください』で済むことが多く、これも効率化につながります」

なかでも「1枚目の写真」には気を使う。数多ある出品から目に留まるように、写真にスぺースを空けて機種名や使用程度などの文字を載せるのもコツ。

「購入者の方から『イメージ通りでした』と言ってもらえると嬉しいです」

イメージアップのためには物を置く背景に自作の撮影ボード(作り方は次ページに)を用いるのも良い。色も形も正確に伝えることで、気持ちの良い取引をしよう。

 

あると便利なブツ撮りグッズ

印象をアップさせる撮影グッズはさまざまあるが、この2点は費用もそれほどかからずに用意でき、印象を良くできる汎用性の高いアイテムだ。

撮影ボード

べニヤ板のサイズが大きければさらに大型の物も撮りやすい。1メートル四方程度のサイズが扱いやすい。

・「撮影ボード」は自作するとコスパが良い!

・ 1×1メートルのべニヤ板に、ネット通販などで手に入る「のり付き壁紙」を貼る

・ べニヤ板の表裏で違う壁紙を貼るのもおすすめ

・ スチレンボードは面積が大きくなると反りやすい。使うなら1センチ以上の厚みのものを

 

白レフ板

板を留めるテープは無色か白色を使おう。色付きだと光が反射した際に撮影へ影響が出てくる可能性があるためだ。

・ 自立する「白レフ板」は便利アイテム

・A4サイズのハレパネなどの白い板を2枚、透明or白色テープで貼り付ける

・ くの字型に自立するように内側をテープで貼るのがポイント

・大型商品の場合は、レフ板もA3サイズを2枚貼り付けたもので対応

 

売れやすくなるポイントをメルカリに聞いてみた

誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリマアプリだけに、出品物も多種多様。売れやすくなるポイントをメルカリの鈴木万里奈さんに聞いてみた。

鈴木万里奈さん 株式会社メルカリ PR

 

メルカリ出品のポイント①

写真はきれいに、なるべく多く

1枚目の写真が「表紙」になります。買い手の目に留まるよう、背景をシンプルにする、機種名を入れて目立たせるなど、撮影のポイントも活用して「わかりやすさ」を意識しましょう。全ての商品に対応してはいませんが、製品の元箱のバーコードを読み込むと、機種名や商品情報が自動で挿入されるため手間が減ります。

 

メルカリ出品のポイント②

値付けは「相場観」と「納得感」で決める

メルカリにはAIが相場観を判定する機能「売れるかチェック」もあります。ただ、思い入れのある機材は、まずは納得できる値段で出品し、売れ行き次第で値下げも考えましょう。

 

メルカリ出品のポイント③

商品情報は細かく書く

購入した時期・使用頻度などを記載するだけでなく、キズや汚れ、動作不良なども誠実に伝えましょう。メルカリはあくまで個人間取引のため、相手から信頼を得ることが何より重要。また、発送についても記載を。撮影機材は精密機器!丁寧な梱包はもちろん、物によっては「梱包・発送たのメル便」などプロに梱包を依頼できる配送方法を用いるのも手です。

 

メルカリ出品のポイント④

説明文には「手放す理由」のコメントも

「ネガティブな理由ゆえに売るのではないか」という買い手の疑念を払拭するため、「新しいものを購入したので」などの理由も明記。商品自体に問題がない旨を記載しましょう。

 

いつ出品するのがベスト?

「現在のシーズンから1〜2か月先に使われるものが売れやすい傾向にあります」

撮影機材であれば、いわゆる「格好のシーズン」に合わせて、持って行きたくなる道具を選ぶといいだろう。出品時間も売れ行きに関わるそうだ。

「最も取引が活発になるのはリラックスタイムの平日時前後。ほかにも、主婦向けの商品はお子さまを幼稚園などに送ったあとの平日昼間というように、買い手が多くなりそうなタイミングも意識してみるといいでしょう」

カメラやレンズといった機材の出品では商品写真に作例を交えるのも一案。メルカリの特徴は個人間取引のため、「親近感を与えられ、購入へのハードルも下がるのでは」とは鈴木さんの仮説。

メルカリでは世代を超えた「お下がり」も起きているという。フィルムカメラは代以下の世代がよく買っている。アナログツールは彼らに今ウケているのだ。自宅に眠る機材の出品は、誰かの新しい写真につながる機会かもしれない。

 

※雑誌『CAPA』2021年4月号の記事を、ウェブに合わせて再編集しました