『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年2月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「持ち主夕焼け」
大澤えりさ (東京都三鷹市 / 17歳 / 杉並学院高等学校 / 写真部)
ソファの赤と壁紙の派手な模様、ローファーの黒。まず視覚的な美しさに惹きつけられました。そして、二本の指に引っ掛けて靴に光を当てる謎な行為に違和感を抱きます。インパクトや遊び心だけに留まらず、優れた構図によってパワフルで美しい作品に仕上げたのが素晴らしい。
2席「時代」
伊藤優太 (埼玉県北本市 / 18歳 / 埼玉栄高等学校 / 写真部)
マスクを着けて下を向きスマホに夢中な人々。上にある巨大なデジタルの文字から、電車を待っていることに気づきます。これから満員の通勤快速に乗るのでしょう。監視カメラがそんな彼らの今をそっと見つめています。現在の日本の姿をユーモラスに写しています。
3席「でこぼこやま。」
榮林実乃里 (京都府亀岡市 / 7歳 / 亀岡市立大井小学校)
光の当たり方によって陰ができ、丸い物体がたくさん転がっているように見える光景。画面全体に埋め尽くした大胆なフレーミングによって迫力とユーモアのある風景に仕上げています。感じたままシャッターを押す。写真の楽しさを再確認できる作品です。
入選「軟体世界」
畑岸杏果 (埼玉県春日部市 / 16歳 / 埼玉栄高等学校 / 写真部)
鏡の歪みを利用したユニークなセルフポートレート。異常に伸びた胴体が奇妙です。制服と背景の配色が偶然マッチしたのもよかった。動きを付けたり時間帯を変えたりと、シリーズ化しても面白そうです。
入選「イカしてる? オレ」
吉田香音 (埼玉県さいたま市 / 15歳 / 埼玉栄高等学校 / 写真部)
画面の所々に色味のキレイな柄が散らばっていて、窓からの優しい光でファンタジーな雰囲気が出ています。カラー写真ならではの良さを感じる作品です。その中に埋もれている、とぼけた子どもの表情も良いアクセントになっています。
入選「さよなら春」
中野 龍 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校1年 / 写真部)
狭い空間で前屈みになる少女。綿毛を吹いているそうですが、一見そう見えず、黒く潰れた顔と身体が迫ってくるようで怖い。切なくロマンチックなタイトルとのミスマッチも含め、気になる作品です。
入選「夕浜」(3枚組)
南 健吾 (福井県越前町 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
故郷の浜辺を撮影した組写真。濃度の濃いプリントが素朴な夕暮れの風景をさらに美しいものに変えています。自分の生まれた場所をストレートに見つめる視線は、見る側にも心地よさを与えます。
入選「ミサイル発射」
道畑あおい (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
低い視線で狙い、威嚇するニワトリの迫力を見事に写しています。逆光によって逆立った羽とがっしりした脚をより力強く描いています。飼い主との喧嘩ということであれば、右上の足をもっと画面内に入れてもよかったと思います。
入選「親子」
大谷優菜 (岐阜県関市 / 18歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
切り取り方の妙により、ユニークな象のフォルムと優しい表情が際立ちました。強弱ある光もいい演出になっています。明るさを抑えると質感が出て、より印象的なシーンに変化します。微調整が大事ですね。
入選「風下がり」(5枚組)
湯川紗愛 (和歌山県田辺市 / 17 歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
どのカットも、その後が気になってしまう絶妙なタイミングで捉えています。写っている人々の表情が中途半端なところが魅力でもあります。撮影者の存在が感じられないスナップ群から、普段からかなりの数を撮影しているのが想像できます。