晴天時に捉える紅葉は色鮮やかで映えるが、撮影日が晴ればかりとは限らない。悪天候を逆手にとって、秋雨に潤う紅葉を狙ってみよう。しっとりと情緒のある紅葉風景もオツなもの。撮影のカギはPLフィルターの使い方にアリ! 基本編に続いて、応用編では雨のテカリや霧を生かした撮影テクニックを紹介する。
目次
- 基本編
- 応用編
立体感や湿潤感を得るにはテカリの生かし方が大事
雨に濡れた広い風景はPL効果を強くすることで、鮮やかな色合いを引き出せる。そのうえで霧や雲を生かすと雨らしさを表現でき、風景としての奥行きや広がりも感じられるようになる。雨の日は山間部を中心に霧が出やすいので、そのチャンスを狙いたい。また水滴がついた実や紅葉をアップにするのも雨を表現するためのよい方法だ。
ガラスのような完全に平面の被写体ならPL効果は均一になるが、樹木や草、川など、さまざまなモチーフからなる風景では効果にばらつきが出る。色づいた葉にPLを強く効かせたとき、反射面の角度が異なる幹や草にはテカリが残る。このテカリをアクセントとして取り込むことで艶やかさが生まれ、雨らしい雰囲気となるのだ。
また、紅葉した樹木のみを切り取るなら、一部にテカリが残るようにすることで雨天らしさ、さらに明暗のメリハリも引き出せる。このような狙い方でテカリを完全に取ってしまうと、平面的な写真になりやすい。
PL効果最大で広い風景を艶やかに写す
赤や黄色、そして緑色が入り交じり、カラフルな秋色に包まれた高瀬渓谷。PL効果を最大にしてテカリを取り、紅葉が持つ深みのある色を引き出した。広い風景から雨の日らしい艶やかさが伝わってくる。霧に霞む渓谷を背景に見せることで、山深い峡谷らしさも感じられるようになった。
紅葉を画面いっぱいに切り取るときはテカリを少し残して立体的に
枝振りのよいカエデの大木を望遠レンズで切り取った。赤一色のカエデゆえ、PL効果最大でテカリを完全に取ってしまうとやや平面的な印象に。PL効果を加減してテカリを残すと、それがアクセントとなってメリハリが出た。また若干マイナス補正するとで、深みのある赤色を引き出している。
PL効果 [中]
PL効果 [最大]
部分的なテカリで濡れた幹を強調する
雨が滴るブナの森。雨に濡れた幹や苔の湿潤感を生かすため、ブナの大木に近づいて広角レンズで見上げるように撮影した。幹や苔むした岩のテカリを取るように調整するのだが、曲線を描く幹は角度によってPL効果に差が出る。このことが部分的なテカリとなり、雨らしさを表現できた。
水面反射を残して雨上がりの湿潤感を引き出す
草木は濡れて艶やかで、霧に包まれた渓流に朝の光が差し始めた。落葉をメインにしつつ、霧に包まれた川面を見せることで奥行きや湿潤感を引き出した。PL効果最大では水面反射がほとんどないため、PL効果中で青空を映す適度な反射を残し、雨上がりの雰囲気を引き出した。
PL効果 [小]
PL効果 [中]
PL効果 [最大]
霧を生かして遠近感を引き出しつつ、雨天の雰囲気を盛り込む
落差270mの羽衣の滝。雨天時は雲底高度が低く、落差のある滝の上部には霧が出やすい。滝だけを切り取れば迫力を出せるが、背後の霧を取り入れることで雨らしさや滝の高度感を引き出した。黄色を中心としたしっとりとした色合いを生かすため、PLは効果最大にしている。
霧なし
【ワンポイントアドバイス】曇り空を見上げるようなときは透過光なのでPLは不要
曇りの日でも表面反射はあるので、PLフィルターを使えば色の深みを引き出せる。ただ空を見上げて撮るようなシーンでは透過光となるので、PL効果は期待できない。PLフィルターのメリットと、ブレなどのデメリットを比較して、使用するかどうかを判断しよう。
雨の日の撮影スタイルは? 撮影後の機材管理もしっかりと
雨の日の撮影スタイルだが、三脚にホルダーを取り付けて傘を差し、自分自身は上下雨具を着て撮影に臨んでいる。傘を差すことでカメラが直接濡れないよう守り、レンズ交換も可能になる。防塵防滴のカメラが雨で故障したことはないが、レンズやファインダーが曇ってしまうと撮影が困難になる。
撮影後はタオルで水滴をぬぐい、自宅に戻ったらしっかりと自然乾燥させる。レンズ内に水分が残っていると曇りとなって現れるので注意しよう。