世界的に波乱の年だった2022年。2023年こそは明るく楽しい写真ライフが実現できることを願って、プロ写真家の皆さんに「2022年に買ってよかったモノ」を一斉調査しました。さあ、どんなアイテムが出てくるかな?
村上悠太さんの2022ベストバイ「キヤノン EOS R7 / EOS R6 Mark II」
コンパクトなボディに本格AFと高速連写、価格設定も嬉しい「EOS R7」
2022年はキヤノン EOS Rシステムにとって、大きめの話題が続いた。まずは6月に発売になった「EOS R7」だ。EOS Rシステムで初めてのAPS-Cセンサー採用とあって、望遠レンズを多用する鉄道写真のカテゴリーでは強い味方となる一台ということで即購入!
また、もう一つの特徴として、以前のEOSシリーズ (一眼レフ) に比べて平均的に高価格な印象のあるEOS Rシリーズの中では比較的安価な価格設定なのもうれしい。さらに安価な機種として同時発表となった「EOS R10」もあるが、最近のカメラでは標準装備ともいえるボディ内手ブレ補正が省略されていたりもするので、ある程度タフに使うユーザーなら断然「EOS R7」をオススメしたい。
高性能AFと高速性能が頼もしい
EOS Rシリーズは「EOS R3」以降、AFシステムが1段階ブラッシュアップされており、被写体を検出し、トラッキングを行う (追従する) 仕様をメインとしたAFシステムが搭載されている。「EOS R7」にもその機能が採用されているほか、メカシャッターではEOS Rシリーズ最速の約15コマ/秒の高速連続撮影を実現。電子シャッターなら最高約30/コマでの撮影が可能だ。動きもの撮影となる鉄道写真では、やや気になる電子シャッター使用時の「歪み」については、走行中の列車をアップで真横がちに撮影するような、最も歪みが生じやすい条件下で撮影しなければ、ほとんど目立つことはない。
このカメラ特有の点というと、やはりサブ電子ダイヤルの位置だろうか。これは「EOS R7」が登場して以来、たびたび賛否が話題にあがるポイントだが、非常にコンパクトな設計となっている「EOS R7」にとっては、親指を置く場所を考慮しても今の位置が最良だと感じている。
一方で、相対的に一眼レフ機に比べてバッテリー消耗が早いミラーレス機だけに、バッテリーを2個搭載できるバッテリーグリップがオプションで用意されていないのは少々残念なところ。ただし、バッテリーグリップを使用しないユーザーも多いと思うので、そうした方にはこれは些細な問題だし、それ以上にこのコンパクトなボディに本格AFと高速連写、そしてAPS-C機としてはEOS史上最高解像度の約3250万画素CMOSセンサー搭載という仕様は、焦点距離が約1.6倍になるという特徴とともに、新しい「強さ」をEOS Rラインナップに与えてくれた印象だ。
<実写作例>
同時発表でキットレンズでもある「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」で撮影。高性能AFと焦点距離が約1.6倍になるAPS-Cセンサーを生かし、キットレンズでもこんな迫力カットが撮影できた。
高感度域の画質と画素数が進化した「EOS R6 Mark II」
そして12月15日には「EOS R6 Mark II」が発売となった。正直、2022年の新型ボディは「EOS R7」「EOS R10」だけだろうと予想していただけに、このカメラの発表はまさに寝耳に水だった。
高画素で緻密な描写力を持つ「EOS R5」に比べ、撮影時も撮影後もハンドリングが容易な「EOS R6」は、どちらかというと軽量な機材構成で目に入ったものをどんどんスナップ的に撮影していくスタイルが多い僕にとって、こちらの機種を日常的に多用するケースも多く、仕事以外でも家族スナップなどを撮影するためにもう一台「EOS R6」を買おうかと検討するくらいだったので、発表の知らせに飛びつくように予約を入れ、購入を決定した。先代モデルから約2年と、やや早すぎる更新のようにも思えたが、実際には「Mark II」と名乗るのに相応しい、着実な進化を遂げている。
念願の「鉄道検出」に対応
まずは連写性能だ。メカシャッターでは先代モデルと変わらない約12コマ/秒だが、電子シャッターで約40コマ/秒と上位機種「EOS R3」以上の連写速度を達成。もはや、「EOS R6 Mark II」のフルスペック画質で記録した動画から切り出す、そんなレベルの連写速度といっても過言ではない爆速さだ。
続いてAF性能は今のEOS RシリーズのスタンダートとなっているトラッキングAFを搭載。最近のカメラでは特に注目される「被写体検出」には、個人的に念願だった「鉄道検出」がついに搭載。これまでモータースポーツなどが主流だった「乗り物検出」内に実装され、ほかに飛行機も検出可能となっている。驚きの機能として、新幹線のようにノーズの長い車両の場合は、先頭部分の「運転室の窓」部分を検出し、追従。先ほどの約40コマ/秒連写との併用ももちろん可能で、AF、高速連写両方の面から鉄道撮影をサポートしてくれる。
夜の鉄道写真に新たな表現をもたらしてくれる
加えて画素数も先代の約2010万画素から約2420万画素にアップ。「EOS R6」というと、画素数をあえて抑え、その分高感度特性を高めている機種でもあるが、高感度域での画質はそのままに今回、画素数を約410万画素ほどアップしている。高感度域での画質はそのまま、と書いたが、実感としては解像感が上がっているせいもあり、画質も初代モデルより向上しているというのが素直な感想だ。
高感度特性が高いカメラというと、夜景や暗いところでの撮影適性が高いカメラ、というふうに思えるかもしれない。もちろんその認識で間違っていないのだが、最近では開放F値を暗めにすることで、これまでより軽量なレンズや、従来では実現しなかった焦点域までカバーするズームレンズなども登場しており、そうしたレンズを使用する場合にも高感度特性の高さはメリットになる。
そのほか、従来ではブラしたり、バルブでの撮影が定番だった夜間の鉄道撮影についても限りなく「写し止める表現」を用いることができ、これもまた新たな表現に繋げることができる。室内や悪天候時など、思いのほか「暗い場所」というのは多く、こうした撮影場所で気兼ねなく高感度を使用することができる「EOS R6 Mark II」は自由度の高いカメラと言えるだろう。「EOS R7」ではラインナップされていないバッテリーグリップも、「EOS R5 / R6」用の「バッテリーグリップ BG-R10」が使用できるのもプロフェッショナルな現場では心強い。
<実写作例>
夜の路面電車をISO8000でスナップ。高感度撮影が得意な機種は、シャッターチャンスに強いカメラとも言える。
以上、今年は2台のカメラを購入、どちらも「買ってよかった!」と感じている2台だ。この増備で現在メインで使っている機種は「EOS R5」「EOS R6 Mark II」「EOS R7」となり、「EOS R5」のみがAFシステム、そしてアクセサリーシューが従来仕様の機種となった。こうなってくると必然的に期待したいのが次の「R5」、そして「R1」の存在だ。2023年もキヤノンがあっと驚くような新機種を出してくれることに期待しながら、明るい新年を迎えたい。