『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュ−。今回は『CAPA』2023年3月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「その先に」
森 心碧 (埼玉県八潮市 / 16歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
暗闇に伸びる植物がストロボに照らされ映し出されています。この写真の魅力は植物の動きにあります。まるで何かを絡め取るようなクルクルと巻いた枝の様子に異様さが感じられます。撮り方の面白さだけではなく、それぞれの枝の長さや曲線を見極め、動かぬ植物の動きが見事に表現されました。
2席「カメラ小僧」
中川美来 (愛知県豊田市 / 15歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
空港でしょうか? 駅でしょうか? カメラ小僧をストレ−トに撮った作品ですが、少年の貫禄が出ていますね。写真を実際に撮っているところではなく、首からたくさんカメラを下げ、先を見つめている様子を撮ったことで説明ではなく、佇まいに目を向けることができました。
3席「半透明人間」
渡邉結衣 (岐阜県御嵩町 / 16歳 / 岐阜県立東濃実業高等学校)
皆が同時に起立して、座る。当たり前のことですが、ちょっと怖さのある写真です。まるで個人の意思がなくなってしまったかのように感じるのは、ブレを用いて透明な人間を表現したことによるものです。マスク姿であることも、声を発することができない人の象徴のように感じ取れます。
入選「春支度」
鰐渕真央 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)
テニスコ−トの雪かき。先が長そうですね。このどうしようもない道のりを楽しんで進むテニス部員たちの姿がほほえましいです。構図の面白さもありますが、「意味あるのかい?」とツッコミが聞こえそうな撮影者のユ−モアが写っています。
入選「独り占め」
吉田有輝 (岐阜県関市 / 18歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
極端に大きく写し、異様な存在感のある扇風機が稽古の暑さと熱さを表現しています。「あつい! 構図になんてこだわっていられない!」というかのような思い切りの良い構図へのチャレンジが良いですね。
入選「空中浮遊」
橋口 澪 (愛知県豊田市 / 16歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
大縄跳びの影を主題にした面白いアイデアの作品です。脚と影、大縄のラインが画面の対角にやわらかな曲線を描き、絵としても美しいと思います。残念なのは画質が著しく低いこと。トリミングなのか、デ−タの扱い方の問題か。気を付けると良いと思います。
入選「夢を見た」(4枚組)
泰地彩央 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
想像にはなりますが、大きなブロックを中心に1か所で、一人の女性をモデルに撮影されたのだと思います。4枚の組写真にむだがなく、絵の強弱の変化がしっかりと出ています。1枚目の写真の後ろに舞台となるブロックが見えている、この入り方がすごい。
入選「二つの世界」
浅井美乃 (川崎市高津区 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
ベランダから家の中を撮った写真ですが、家の中の男性の後ろ姿と、ガラスに反射した夕暮れの雰囲気がとても合っています。仕事を終えて帰宅した男性。疲れています。これから冷蔵庫の中のビ−ルに手を伸ばすのではないでしょうか。そんな物語が想像できる良い写真です。
入選「放課後」
高橋夢永 (愛知県小牧市 / 16歳 / 愛知県立小牧高等学校 / 写真部)
とてもまっすぐで気持ちが良い写真です。感染防止のマスクなのだと思いますが、大きな黒板消しから舞い出る大量のチョ−クの粉を避けるため、面白がって付けているようにも見えます。コロナ禍の情景を明るく捉えた素晴らしい写真だと思いました。
入選「舞台裏」(4枚組)
中野 龍 (愛知県豊川市 / 豊川高校 / 写真部)
お祭りの裏舞台を撮った組写真というのは、ともすると説明的になりがちです。しかしこの組写真は説明ではなく、道具と人が合わさり、人が神に化けていく様が見事に表現できています。1枚目を始め、どの写真も部分の切り取り方、抽象化の仕方が秀逸です。