『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年4月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「昔日」
森本羽音 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
老婆のふとした仕草を写した写真ですが、限られた情報をとても丁寧に扱っているなと思いました。深いしわは、体の要でもある首筋に一番はっきりと刻まれています。背景の光に照らされた道は、彼女の歩んできた道かもしれません。写っていることには意味がある。そのことを感じる写真です。
2席「行く秋」(3枚組)
玉村心優 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
見れば見るほど癖になる写真です。その魅力は、わざとらしくないことかもしれません。自然乾燥させている大根の下に室外機の風が流れている、巫女さんが掃いた落ち葉がハート型になっている、その面白さを特に強調しようとしない切り取り方が、日常をシュールに見せてくれました。
3席「童心」
岡本優良 (岡山市東区 / 18歳 / 岡山県立西大寺高等学校 / 写真部)
気持ちの良い写真です。凧をあげる女性のニット帽も良いですが、なにより真っ直ぐに伸びた白い糸をメインの被写体にしたことがこの気持ち良さにつながっているのだと思います。女性の手から少し先の糸がしっかり見えるようにフォーカスと光、背景をコントロールできています。
入選「曖昧」
山本多笑 (愛知県大口町 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
サッカーのゴール裏から試合の行方を見つめる少女。画角の面白さもありますが、波打つゴールネットの描写が、少女の心の中を表現しているようです。ゴールネットや指、顔といった具体的なものにピントを合わせて写すのではなく、心情にピントが合った良い写真です。
入選「Hyo-on-room」
岩田昊大 (愛知県犬山市 / 17歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
「封印されていた冷蔵庫」というコメントが付いていました。暮らしの中にある禍々しさを思い切って写し取っています。人工的な光、垂れ下がった袋。あるがまま整えずに、画面いっぱいに写したリアルに、とにかく力があります。
入選「相棒」
南雲美紗稀 (新潟県長岡市 / 17歳 / 中越高等学校)
男たちの歩く姿が、長年の2人の関係を物語ってくれています。ただ仲が良いだけではなく、人生の労苦を語り合ってきた、そんな感じがします。プリントは、応募作品の中で一番きれいでした。撮ったものを大切にする作者の姿勢が表れていると感じました。
入選「謎めく」
中野 龍 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
スマホを触りながらニヤリと笑う少女。スポットライトもまたスマホの明かりを利用したそうです。半分欠けた顔が何を企んでいるのか、想像力を働かせます。少女のトレーナーの毛羽だった質感が、ざらっとした写真の雰囲気をうまく演出していますね。
入選「届かない」
濱口未来 (愛知県小牧市 / 17歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
鏡に映る自分の姿を撮ったのかなと錯覚しました。アクリル板で遮られた友人との関係。今のご時世を写していますが、同時に他人の中にいる自分の姿を探しているようにも感じることができました。
入選「加速」(3枚組)
福島湧翔 (福井県越前町 / 16歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
電車の車窓からのスローシャッター撮影。運転席の窓から見える風景は、実際に肉眼で見ても吸い込まれるような不思議な感覚を覚えます。それを表現するために技法を駆使した写真ですが、セレクトで変化も付けられており、技法に溺れずまとめられているのが良いと思いました。
入選「見えない世界」(4枚組)
丸山世梨加 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
実を付けるための日々のたゆまぬ努力が、文字通り実を結ぶまで毎日続いている。さりげない瞬間がしっかりと捉えられていて、赤い実が写らなくても美味しいイチゴが実るんだろうな、と想像までさせられます。滴る汗と、拭う瞬間という2カットがつながりすぎていました。工夫がほしかった点です。