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【2023ベストバイ】やっと出会えた魅力的な価格の75mm単焦点「フォクトレンダー ULTRON 75mm F1.9 MC」

久しぶりに行動の自由が戻ってきた2023年。プロ写真家の皆さんに「2023年、買ってよかったモノ」を一斉調査しました。2024年の明るく楽しい写真ライフの参考になれば幸いです。さあ、どんなアイテムが出てくるかな?

プロが買って良かったモノ教えます! 2023ベストバイ特集

大浦タケシさんの2023ベストバイ「フォクトレンダー ULTRON 75mm F1.9 MC」

【2023ベストバイ】大浦タケシさん
愛用する「ライカM モノクローム」に装着した「ULTRON 75mm F1.9 MC」。鏡筒とカメラ本体との持ったときの重量的なバランスがいい。それにしても「ライカM モノクローム」は発売開始の2012年に手に入れたもので、すでに11年選手。新しいモノクロ専用機が欲しいのだが、買えるのはいつになることやら。

75mmの焦点距離が新鮮! 被写体との距離感がしっくりくる中望遠レンズ

2023年は、新たにカメラやレンズに手を出すことはそう多くはなかった。中古も含めカメラは1台も手に入れてないし、レンズも比較的手ごろな価格帯の数本にとどまっている。理由は自らの経済的なものと、生業で必要とするカメラ・レンズの登場がなかったことが大きい。そんな状況で手に入れた数少ないレンズの1本が、VMマウントの「ULTRON 75mm F1.9 MC」だ。

なぜ焦点距離75mmかというと、10代後半よりスナップ撮影には90mmの中望遠レンズを携えるようにしているが、四捨五入すると還暦となる年齢に達したころから、画角が少し狭く感じることが多くなったからだ。ちなみに35mmのレンズも同様にスナップ撮影で長年使用していたが、こちらは画角が少し広すぎるように感じることが多くなり、35mmに代わり50mmのレンズを携えることがほとんどとなっている。

レンジファインダー機の場合、90mmよりも広い画角の中望遠レンズは75mmしか選択の余地がないが、これまでは自分の懐具合に見合ったものがなく、ちょっとハードルが高く感じていた。しかし、2023年初めに本レンズが発表され、焦点距離とともにそのプライスタグがたいへん魅力的に思えたことは言うまでもない。

2タイプからマットブラックペイント仕上げのMCを選択

マルチコート (MC) とシングルコート (SC) の2タイプが選べ、選択したのは前者。オールマイティなコーティングであることに加え、外装がマットな仕上げのブラックペイントであったからだ (SCは艶のあるブラックペイント)。この数年、クルマもマットブラック塗装のものを時折見かけるが、MCの外装仕上げはそれを思い起こさせ、何となくカッコいいというミーハーな選択だ。もちろん貧乏性なので、プロテクトフィルターも同時に購入した (笑)。

待ちに待った75mmであるが、使用開始当初はファインダーに表示されるフレームを幾度か見間違えることがあった。75mm用と50mm用のフレームがカメラのファインダーに同時に表示されるのだが、75mmのフレームは四隅しか表示されない簡素なもののため、シャッターチャンスと思って慌ててカメラを構えると、上下左右を罫線でしっかりと表示する50mmのフレームで被写体と対峙してしまうのだ。気持ちが落ち着き冷静にファインダーを見直すと、間違ったフレームでアングルを決めていたことに気づくのだが、ときすでに遅し。窮屈なアングルの写真や、被写体が中途半端に切れている写真が残るばかりであった。

現在ではフレームにもすっかり慣れ、同時に本レンズでシャッターを切る機会が格段に増している。それは画角から得られる被写体との距離感が自分の感覚に妙にしっくりくることが理由である。もっと早くこの焦点距離の面白さを知っていたらと、今更ながら思うばかりだ。球面レンズのみで構成されるシンプルな光学系のレンズだが、写りに不足を感じることがなく、「ULTRON 75mm F1.9 MC」はとても良い2023年の買い物であった。

作例

新しくできた麻布台ヒルズで撮影。元々住んでいた方々も多く、2023年の祭りはより一層賑やかであった。75mmの焦点距離から得られる被写体との距離感は、自分にとってアングルが決めやすく都合のよい画角だ。

【2023ベストバイ】大浦タケシさん
ライカM モノクローム ULTRON 75mm F1.9 MC 絞りF2.4 1/2000秒 ISO160