CAPAのモータースポーツフォトコンテスト「流し撮りGP 2025」第6戦の結果を発表します。
撮影機材の性能をきっちりと引き出しきった作品が多数
第6戦は、撮影条件や照明環境を見据えて、撮影機材の性能をきっちりと引き出しきった作品がそろいました。画質、発色、画面構図などカメラやレンズの性能を把握して、それらを高いレベルで写真に生かしきっています。あっと驚くパンチ力には欠ける印象ですが、写真を「作品」にまとめ上げる意思と、それを裏付ける落ち着いた計算力を感じる「頭脳ゲーム」的なバトルを感じました。機械 (マシン) を使って競うスポーツを、機材 (カメラやレンズ) の力を活用する映像芸術で楽しむ。これもまた「流し撮りGP」の楽しさですね。
〈流し撮りGP審査委員長〉小林 稔 (日本レース写真家協会 [JRPA] 会長)
GP1位「秋燈」細井 渉

作者コメント
刻々と暗くなる空と、限られた走行時間。光を読み、構図を探り、マシンの呼吸に寄り添うようにシャッターを切った。闇を貫いたマシンは、赤いテールライトを路面に滲ませながら、静寂を裂いて走り去っていった。
小林 稔 審査委員長の講評
ヘッドライトに照らされるコース前方の景色、くっきり区切りよく影になるマシン脇から後方はテールランプの赤が強く印象的に路面を照らす。画面は明確に夜間走行なのに、それぞれの色彩や画質は崩れることなく見事にクリアに再現されている。発色、画質、解像力、フォーカス、低ノイズなどなど、最新機材の超高性能をあますとことなく引き出して、この場の撮影環境で獲得できるドラマを高品質に映像化しています。クールで静かな良作です。
GP2位「Magic hour」中谷 洋

作者コメント
メタリックカラーのヘルメットに写るマジックアワーの空や景色が印象的な1枚になりました。先を見据えるアランの熱視線も撮影することができました。
小林 稔 審査委員長の講評
見惚れるばかりのシャープでクリアな走り作品です。ライダーの表情はおろか、ライディングスーツの縫い目や表面質感まで感じられる超解像感に圧倒されます。見たい部分がここまでシャープだから、背景の流れや画面右下の前ボケが一層効果的に効いてきます。機材が持つ最高レベルの性能を再現できる環境が揃っていて、それらをまとめ上げる撮影技術がかみ合った作品。写真全体を包む柔らかめの光線状態も作品にベストマッチです。
GP3位「夕焼け」吉田和孝 (ルーキー応募)

作者コメント
鈴鹿1000kmの決勝レースです。陽が落ちて紅く染まった夕焼けのスプーンカーブでポール・トゥ・ウィンの優勝をはたした32号を撮影しました。金網越しの撮影位置で夕焼けの空を大きく入れるため、レンズは絞り値の小さい (明るい) 50mm F1.2で撮影して、金網を前ボケにして消しました。
小林 稔 審査委員長の講評
グラデーションの美しい紅の空は陰りなくクリアに写したい! 50mm F1.2という超大口径パワーで、目の前にあるはずの金網フェンスはまったく感じられないボケ像となり消されています。絞り開放という画質的にはつらい領域の撮影なのに、夕闇でもピタリとフォーカスされたマシンの描写はシャープでクリア。最新機材の総合性能をしっかりと出しきった作品です。
GP4位「歓喜の瞬間」下山裕大

作者コメント
最終コーナーのスタンドから、23号車がトップチェッカーを受ける瞬間を狙いました。走行ラインが予想していたよりもサインガード側に寄ってくれなかったので焦りましたが、「マシン・チェッカーフラッグ・優勝に沸くチームの人々」を1枚に写し込むことができたと思います。
小林 稔 審査委員長の講評
マシン・チェッカー・ピットクルーの三位一体感。1レースに1回限り1発勝負の「優勝シーン」を作品にまとめ上げています。
GP5位「残響の雨」榎良久 (ルーキー応募)

作者コメント
雨のSUGOを表現しようと思って挑戦しました。霧雨の中の静寂を感じてもらえるように、あえてスローシャッターで撮影してみました。
小林 稔 審査委員長の講評
低速シャッターの限界点に挑戦して作品にまとめた姿勢を評価したいです。雨の感じを訴求するレタッチ調整はまだ開発の余地あり。軟調画面の色彩や明るさの設定は次の課題としましょう。
GP6位「ウイニングラン」拭石 学 (ルーキー応募)

作者コメント
SUPER GT 第5戦 鈴鹿300kmレースでは、久々に強いNISMOを見ることができました。予選2位からスタートしてピットワークで逆転しトップに立ち、そのまま優勝した23号車です。フィニッシュドライバーの千代勝正選手のウイニングランを撮影しました。PCのモニターで拡大して見ましたが千代選手…嬉し泣きしてるかなぁ???
小林 稔 審査委員長の講評
優勝ドライバーの表情を狙う。コックピットに光が入る位置と角度を計算してアップで狙う。だんだんと定番化してきた「ヘルメット越しのポートレート」が成功しました。
GP7位「ファンと共に」上本修司 (ルーキー応募)

作者コメント
夕陽も落ちてコースは夜。ライトスティックがきらめく中、颯爽とホームストレートを走り抜ける00号車を撮影しました。近くにライトスティックを持った00号車のファンの方がたくさんいたので、画面内にその人々を入れることで躍動感とファンと共に走っている感じを出せたと思います。
小林 稔 審査委員長の講評
写真は少々乱暴なのですが、その場の雰囲気を伝える映像として「ファンの歓喜」がしっかりと伝わってくる。良い写真です。
GP8位「太陽に照らされて」森康彦 (ルーキー応募)

作者コメント
土曜日の夕方です。太陽が数分だけコースを照らし出した瞬間がとてもきれいで広角で撮りたくなりました。太陽がまぶしすぎるのでハーフNDを使って空側を減光して撮影しています。
小林 稔 審査委員長の講評
サーキットの風景写真としてドラマチックでまとまりのある作品です。ハーフNDが見事にバッチリとキマリました。短い時間の日照だったので、マシンの車列や富士山の見え具合などは、次回の課題としてお楽しみに。
■流し撮りGP 2025 年間ランキング