2025年10月10日〜12日の3日間、ドイツのニュルンベルクでカメラショー「Imaging World (イメージング・ワールド)」が開催された。今回が初開催にもかかわわらず、主要なカメラメーカー、レンズメーカーをはじめ各種用品メーカーや代理店、販売店なども加わって、100社を超えるブースが出展した。どんなイベントだったのか、会場の様子をレポートしよう。

フォトキナの再来を期待して「Imaging World」の取材を決行
かつてドイツでは、世界最大の写真・映像用品展示会「フォトキナ」が、ケルンメッセを会場に隔年で開催されていた。2018年まで、およそ70年間も続いた歴史あるイベントだったが、コロナ禍後に再開されることはなかった。その後、ハンブルクで「フォトピア・ハンブルク」が2021年から2023年まで開催されたものの、わずか3回で終了。ドイツで開催されるカメラショーとしては、「Imaging World」は実に4年ぶりとなる。
日本にいると詳しい情報はなかなか入って来ないので、もどかしく思うことも多いのだが、ドイツではしばらく大きなカメラショーがなかったことや、日本のカメラメーカーが勢揃いしていること、100社以上が出展するといった情報から、どんなイベントになるのか、気になってしょうがなかった。もしかしたら「フォトキナ」の再来のようなイベントになるのかも。そんな期待もあって、初開催の「Imaging World」を取材することにした。

フォトキナの開催地だったケルンやライカカメラ本社のあるウェッツラーには、これまで何度か訪れたことがあるが、ニュルンベルクを訪れるのは初めてだ。フランクフルトから高速鉄道で約2時間半の歴史ある街で、会場のニュルンベルクメッセは地下鉄1号線のメッセ駅に直結していて、中央駅から乗り換えなしで行くことができた。

ブースはシンプルで商談エリアがとにかく広い
プレス登録を済ませて会場に入ると、開放的なエントランスホールがあって、コンテストの入賞作品などが展示されていた。2階と3階には会議室がいくつもあって、セミナーやワークショップの会場になっている。ちなみに「Imaging World」の入場料は前売りの週末パスが25ユーロ (約4,300円)。ワークショップ参加費にはパス料金が含まれていて、129ユーロからだった。

ニュルンベルクメッセは大小12の展示ホールで構成される大規模な展示場だが、「Imaging World」で使用されているのは1ホールだけ。注目されるような新製品や参考出品が登場するようなタイミングでもないこともあってか、やや閑散とした印象だった。ちなみに会場内では展示のみで販売はされない。

オープニングセレモニーのようなものはなく、スタッフも観覧者も同じ入り口から入るので、フォトキナや日本のCP+で見られたような入場待ちの列もない。なんとなく開場してしまったのは、ちょっと拍子抜けだった。とはいえ、セミナーやワークショップのタイムテーブルはびっしり埋まっていて、学生っぽい若い来場者の姿も見られる。

会場には比較的小さなブースがいくつも並んでいて、中央あたりにメインステージが設けられている。展示会場の規模はCP+の半分ぐらいしかないが、出展社数は多いので見どころも多そうだ。

ブースの作りは基本的にシンプル。展示してある機材も思ったほど多くはない。取材をしているうちにわかったのは、以前は販売店向けに開催されていた、いわゆるB to Bの商談会だったものを今年から「Imaging World」と銘打って一般ユーザーにも開放したとのこと。派手さがないのも納得できる。

ビジネスショーの名残りなのか、商談エリアはとにかく広い。出展社やメディアのパスを持っていれば自由に出入りできる。プレスルームはなかったがWi-fiが使えるので、メールをチェックしたり原稿を整理する程度には不自由しない。しかも軽食とドリンクがフリーサービスなので、終日会場に詰めているスタッフやメディアにとっては便利なスペースだ。

フリースペースの商談エリアのさらに奥には、見慣れないキューブ状の白いエアクッションが並んでいた。入り口に会社名の書かれたプレートが置かれているのを見ると、どうやらクローズドな商談スペースらしい。遮音性も高そうなので、外部に聞かれたくない話をするのに都合がよさそうだ。

各社のブースをチェック!
展示エリアは、小さくシンプルなブースが比較的多く、日本では見ないメーカーのロゴもちらほら見かける。また、出展しているのが販売代理店だったりもするので、1つのブースにいろいろなメーカーの製品が並んでいるところもある。一方で、カメラメーカー各社のブースは大きくて見応えのあるところが多かった。
キヤノン
ジャングルをイメージしたキヤノンのブース。スタッフもサファリジャケット風のユニフォーム姿で接客していた。

ブース脇に置かれていたキッチンカーのようなバンは、プリントサービスカー。荷台にはキヤノンのプリンターが並んでいた。

ソニー
豊富なレンズを試すことができたソニーのブース。カウンター後ろには望遠レンズと接写を試せるコーナーが設けられていた。カウンター左サイドのステージにはコンビニのように製品が並べられ、バックパネルには大阪の写真が使われていた。

右サイドのステージでは撮影の解説が行われていた。ブース裏にあったコンテナは、メンテナンスサービスの受付カウンターだった。

富士フイルム
富士フイルムブースでは、XシリーズとGFXシリーズの現行ラインアップをカウンターに並べて、タッチ&トライができるようになっていた。

最も人気があったのは、instax “チェキ”。ノベルティが手に入るクレーンゲームには、長蛇の列ができていた。

ニコン
想像していたよりもずっとコンパクトだったのが、ニコンのブース。

最新機種のレンズ交換式シネマカメラ「ZR」は1台しかなかったものの、カウンターの上に置かれていて自由に触って操作感を試すことができた。注目度は高く、タッチ&トライの順番待ちができる場面もあった。

ライカ
オープンなブースが多い中、城壁のような壁に囲まれていたのがライカブース。壁面にはライカ100年の年表と著名な作品が展示されていた。

ブースの中には「M11」シリーズ、「D-LUX8」や各種ライカWatchなどが展示されていたが、一番スペースを取っていたのはプロジェクターの「Cine 1」。35mmモノクロームフィルム「ライカMONOPAN 50」はパッケージが展示されていたものの、残念ながらプリントやネガを目にすることはできなかった。

パナソニック
黒と赤を基調にしてシックなデザインでまとめられたパナソニックLUMIXブース。フルサイズ機もマイクロフォーサーズ機も展示されていて、レンズを含めて全アイテムを試すことができた。ミニステージも用意されていた。

OM SYSTEM
OM SYSTEMブースのイチオシは「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS」。ブース正面にカットモデルを展示して、性能の高さをアピール。「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO」など、望遠系レンズのタッチ&トライコーナーも設けられていた。

リコー
リコーブースの注目アイテムは、言うまでもなく「GR IV」。壁面にはGRデジタル20年の歴史が年表で紹介されていた。フィルムカメラの「PENTAX 17」や、デジタル一眼レフカメラの「PENTAX K-1 Mark II」なども展示されていた。

シグマ
モノ作りの姿勢をアピールするかのように、シンプルな作りに徹した感のあるシグマブース。レンズは機種を絞って展示していたが、「Iシリーズ」のシルバーモデルもしっかりアピールされていた。

最近よく目にするようになったΣ (シグマ) マークもあった。

タムロン
タムロンブースは、空港のターンテーブルを模した展示で来場者の注目を集めていた。撮影シーンを象徴するようなアイテムと、その撮影に適したレンズをパッケージしたバッグがエンドレスで回っている。

隣のカウンターには、キヤノンRFマウントやニコンZマウントのレンズも並んでいた。

フォクトレンダー
いくつものショーケースを並べて、ロングセラーレンズから最新レンズまで、豊富なラインアップをしっかりと見せていたのはフォクトレンダーのブース。長年愛用しているユーザーが多いようで、ブースの滞在時間も長かった。


EIZO&ワコム
EIZOとワコムの共同ブースでは、モニターとタブレットが一緒に紹介されていた。モニター、タブレットを取り扱っているブースはほかには見かけなかったので、ドイツでのシェアは相当高そうだ。

ヤシカ
日本でも注目を集めているヤシカのレンズ一体型デジタルカメラ「FX-Dシリーズ」から、「FX-D100」と「FX-D300」の実機が展示されていた。フィルムシミュレーション機能を内蔵するなど、フィルムカメラの操作感とデジタルの利便性を融合させた新世代カメラという位置付けだ。レトロなパッケージにも注目が集まりそうだ。

コダック&アグファ
殺風景な印象のコダック&アグファのブースで展示されていたのは、カメラ機能を搭載したフォトプリンターだ。製品を置いたままでスタッフが不在なのはかなり不用心だが、商談中だったのかもしれない。

銘匠光学
TTArtisanブランドの折りたたみ式インスタントカメラ「203T」。チェキフィルムを使用する凝ったつくりのレトロデザインで、CP+でも注目を集めていたカメラだ。今秋発売予定だったが、すでに10月。近日発売予定・価格未定のままで、情報は更新されていなかった。

HOYA
HOYAのブースでデモが行われていたのは、スモークマシーン「INJA PRO」。霧や煙状のスモークだけでなく、ボール状のスモークを作ることもできるそうだ。バッテリーが交換式なのも使い勝手が良さそうだった。

ハーネミューレ
海外のカメラショーでは、インクジェットペーパーやプリントサービスなどの出展がよく見られるが、「Imaging World」ではハーネミューレだけがブースを出していた。大きくはないブースだが、立体的な構成で、多くの用紙を紹介していた。

ブース以外の面白いエリアを発見
会場の一角に、シートで囲まれた気になるエリアがあったので覗いてみると、アナログプリントをまとめて展示しているエリアだった。大判のフィルムカメラや引き伸ばし機も展示されていた。さまざまな35mmフィルムもあって、根強いフィルム人気が感じられる。

会場のあちこちに、かなり異質な空間が設けられている。ブースが埋まらなかった空きスペースを無理やり埋めたというわけではなく、実際に撮影ができるように主催者が用意したエリアとのことだった。


会場の外にあるフォトスポットでは、クレーン車のゴンドラに乗せてもらって撮影ができる。天気が良ければ高い位置から面白い写真が撮れそうだが、あいにくの雲り空だった。

ニュルンベルクのカメラミュージアムも、エントランスホールに出展していた。アンティークなカメラに加え、ブロックで作ったユニークなカメラや針穴カメラなど、さまざまなカメラを手にすることできた。カメラミュージアムに行ってみたいと思わせてくれる。

「TIPAアワード2025」授賞式も開催
私も選考に参加した「TIPA World Awards 2025」(TIPAアワード2025) 受賞盾の授与式が、「Imaging World」1日目の終了後に隣のホールで開催された。「Imaging World」に関わったほとんどの人が着席して、食事をしながら贈呈式を見ることができる。規模は過去最大だろう。「Imaging World」の閉場後に、毎日アフターコンサートが開催される会場でもあるので、これまでにないレベルの豪華で大規模なセレモニーとなった。

受賞者全員による記念撮影の後には、アフターコンサートも行われた。

「Imaging World」の会場が思ったほど広くなかったこともあって、パリのフォトイベント「Salon de la Photo」にも足を伸ばして取材することにした。次回は「Salon de la Photo」の様子をお伝えしよう。
