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途上国のGDP、コロナ前の予測から6%低下と世界銀行が警鐘。先手必勝が鍵

2023/2/7

2023年の世界の経済成長は1.7%。わずか6か月前に予測されたのは3%だったのに、そこから大きく減速し、2023年の経済成長は1.7%にとどまると、世界銀行が先日報告書をまとめました。過去30年間で3番目に低い成長率となり、特に途上国に大きな影響を及ぼすと考えられています。

途上国の経済はかなり停滞しそう

 

2023年1月に世界銀行が発表した『世界経済見通し(Global Economic Prospects)』によると、世界の経済成長率は2021年が5.9%、2022年は2.9%でしたが、2023年は1.7%と大きく減速すると見られるのです。

 

この大きな要因は、予測を超えるインフレの進行と、それを抑制するための急激な金利の上昇。さらに新型コロナウイルスの再流行や、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界各国との緊張状態なども関係しています。

 

これらの影響を受けて、先進国の約95%、新興国・発展途上国の約70%で経済成長率が下方修正されたのです。これは、2009年のリーマンショック、世界に新型コロナウイルスが蔓延した2020年のマイナス成長に次いで、過去30年間で3番目に低いとのこと。

 

中国を除く新興国と発展途上国の経済成長率は、2023年は2.7%。2022年の3.8%からこちらも大きく減速すると予測されています。GDPレベルは、新型コロナウイルスが感染拡大するパンデミック前に予測されていた水準より約6%も低下するとのこと。

 

先進国の景気が減速すると、貿易などを通じてその影響が東アジア、太平洋、ヨーロッパ、中央アジアなど世界各地に波及します。先進国だけに限ってみると、経済成長率の鈍化はさらに顕著。例えばアメリカは、前回の予測を1.9%も下回り、2023年の経済成長率は0.5%。ユーロ圏は1.9%マイナスの0%。中国は4.3%(0.9ポイント下方修正)。先進国全体の2023年の経済成長率は、2022年の2.5%から0.5%に減速するとされているのです。さらに長引くエネルギー価格の上昇や、紛争、気候変動による自然災害なども重なり、新興国や発展途上国に逆風が押し寄せると見られています。

 

投資なしではSDGsは不可能

さらに、世界銀行が指摘したのは、新興国や発展途上国への投資額の減少。2022年から2024年にかけて、これらの国々への投資額の総額は、平均で約3.5%増加したものの、過去20年間の投資額と比べると半分以下になるといいます。世界銀行の見通し局長を務めるアイハン・コーゼは「強力で持続的な投資が増えなければ、開発や気候関連の目標達成に向けた前進は不可能だ」と述べています。

 

また、この報告書では、人口が150万人に満たない37の小規模国にも着目。これらの国ではコロナ禍による景気後退が顕著で、観光業が長期にわたり不況となったことで経済成長が遅れていると言います。

 

世界銀行のデイビッド・マルパス総裁は、「世界の経済成長の見通しが悪化するにつれ、国際開発が直面する危機はますます深刻化するだろう。政府財務の高止まりや金利上昇に直面する先進国にグローバル資本が吸収され、新興国と発展途上国は数年にわたる低い成長に遭遇する。これにより、教育、健康、貧困、気候変動などにおける取り組みはさらに悪化するだろう」と危機感を募らせています。

 

このようにネガティブな状況では途上国への投資に躊躇する企業が多いと思われますが、こうした状況下だからこそ他社に先駆けて行動することがビジネスの成功につながります。また、マクロな視点では成長率が鈍化しているとしても、ミクロな視点で見れば成長著しい分野もあります。マクロ経済だけで判断すると悲観的になりますが、現地に行くと勢いを感じる国も多い途上国。まずは現地の情報を詳細につかみ、いち早く行動してみてはいかがでしょうか?

 

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