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巨大化するグリーン市場の形勢に変化。途上国でリープフロッグの可能性がじわり高まる

2023/4/26

二酸化炭素の排出量を減少させたりすることで持続可能な社会を実現するための技術を指すグリーンテクノロジー。その市場規模は世界で1.5兆ドル(約200兆円※)と大きいものの、この分野では先進国が発展しているのに対して、途上国にはかなりの遅れが見られます。両者の間で差が広がりつつありますが、途上国の中にはポテンシャルの高い国もあり、先進国や国際社会の支援によっては先進国に一気に追い付く可能性もあります。

※1ドル=約133.8円で換算(2023年4月21日現在)

途上国がギャップを飛び越えるためには先進国の手助けが必要

 

先進国との差が開く

先日、UNCTAD(国連貿易開発会議)が発表した「テクノロジーとイノベーション報告2023」によると、2020年における世界のグリーンテクノロジーの市場規模は1.5兆ドルでしたが、2030年には9.5兆ドル(約1271兆円)に拡大することが見込まれています。

 

しかし、その中で重要課題として指摘されているのが、先進国と途上国の間で急速に拡大するギャップ。例えば、再生可能エネルギーや電気自動車に関連する技術の輸出では、先進国は2018年の約600億ドル(約8兆円)から2021年にはその2.6倍の1560億ドル(約20兆円)超に急増したのに対して、途上国では570億ドル(約7.6兆円)から3割増の約750億ドル(約10兆円)にとどまり、この3年間で世界の輸出に占める途上国の割合は48%から33%に15%減少しました。

 

UNCTADはグリーンテクノロジーにおけるギャップを、最先端技術への準備状況を評価するフロンティアテクノロジー準備指数で捉えています。この指数は情報技術インフラへの投資や関連スキルの向上、これらの分野を発展させるビジネス環境などによって変化。フロンティアテクノロジーには人工知能をはじめ、ブロックチェーンやドローン、遺伝子編集、ナノテクノロジーなどがあります。

 

フロンティアテクノロジー準備指数が示すランキングを見る限り、上位5か国は米国、スウェーデン、シンガポール、スイス、オランダという高所得国で占められていて、日本は19位。対照的に、ラテンアメリカやカリブ海、サハラ以南のアフリカの国々などは、まだ最先端技術に適応する準備が整っていないとのこと。

 

このような差を途上国が単独で埋めることは難しく、先進国や国際社会の支援とグローバルな枠組みがどうしても必要です。同報告書は、急速に発展するグリーンテクノロジー分野から発展途上国を除外しないように、国際社会が協調しながら迅速に行動すべきだと主張。今後数年間で急拡大するグリーンテクノロジーの波に途上国が現段階で乗り遅れると、技術的・経済的に成長する機会を逃してしまうと警鐘を鳴らしています。

 

リープフロッグを起こすためには…

しかし、そういった中でも一部の途上国は大きく進歩しています。例えば、アジアではインド、フィリピン、ベトナムといった国々のフロンティアテクノロジー準備指数が予想よりも高いことが判明。46位のインド、54位のフィリピン、62位のベトナムでは現地の政策が奏功した結果、順位が高くなりました。

 

インドは比較的低コストで利用できる高スキル人材の供給が豊富なことから、R&D(研究開発)とICT(情報通信技術)が好成績を収めています。その一方、フィリピンとベトナムは、電子機器を中心とするハイテク製造産業の水準が高いことが反映されました。

 

途上国のフロンティアテクノロジーが発展すると、リープフロッグが起きる可能性が高まります。基礎的なインフラが未整備である途上国が、先進国が歩んできた発展段階を飛び越えて、最先端技術に一気に辿り着いて普及させるこの現象は近年、アフリカやインドなどで起こっています。

 

とはいえ、多くの途上国はグリーンイノベーションの推進に向けて、先進国や国際社会の支援がまだ必要。途上国がリープフロッグを実現するためにも、先進国からの技術支援や投資が不可欠です。

 

UNCTADの報告書が述べているように、気候変動は待ったなしの問題とされているため、グリーンイノベーションには時間の制限があります。この取り組みを迅速に進めるためには、各国の政府主導による関連法律の整備やインフラ構築などが必須。途上国が波に乗り遅れないように、先進国が積極的に各国の政府に働きかけていくことが重要といえるでしょう。

 

 

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