高層ビルやシンボリックなタワーなどのランドマークから路上や路地といった街の情景まで、都会ならではの被写体の撮影方法を、これまでたくさんご紹介しておりますが、今回は、撮影時のカメラの設定やレンズの選び方、太陽光の撮影での取り入れ方など、基本的なテクニックやコツをご紹介いたします。
写真撮影において、レンズワーク(レンズ選び)はとても重要です。景色を広く切り取ったり、遠くのものを大きく撮ったりするという話だけではなく、レンズには焦点距離ごとに描写の特徴があります。その特徴を生かすことで、狙いどおりの都市風景写真が撮れるのです。
広角レンズは広い範囲を写すことができるほか、遠くのものと近くのものの大きさの差が広がり、遠近感が強調されます。一方、望遠レンズは遠くのものを引き寄せて大きく撮れるだけでなく、近くにあるものと遠くにあるものの距離感を縮められたような描写になります(これを「圧縮効果」といいます)。また、広角レンズはボケが作りにくく、望遠は大きなボケを作りやすいという特徴もあります。
さらに都市風景では、広角よりも画角の広い魚眼レンズを使うのも面白いでしょう。魚眼レンズは画面の四隅ほど歪みが強く出るので、意図的に被写体を四隅に置くと効果的です。
表現に合わせてレンズを選択する
まずは、目の前の風景のどの範囲を切り取りたいか、または被写体をどのくらいの大きさに撮りたいのかを考える。広範囲を撮りたければ、おのずと広角レンズになる。遠い風景を大きく撮りたい、風景の一部分を切り取りたいのであれば望遠レンズが有効だ。
広角レンズ(16ミリ相当)
画角の広さと深い被写界深度を生かして撮る
16ミリ相当の広角レンズを使って、スカイツリーがそびえる下町風景を撮影。広角の広い画角を生かして周辺の光景を取り入れつつ、深い被写界深度によって絞りF11で手前から奥までシャープに捉えることができた。
望遠レンズ(100ミリ相当)
引き寄せ効果と圧縮効果を生かして撮る
望遠レンズの描写の特徴である「引き寄せ効果」と「圧縮効果」を生かして撮影した。東京駅のドーム部分をクローズアップし、さらに後ろのビルが圧縮させたことで、街の密度感やにぎやかな雰囲気を表現できた。
魚眼レンズ(12ミリ相当)
左右のビルが内側に弧を描いて目を引く
魚眼レンズを使って渋谷の街を撮った。左右のビルが内側に弧を描いて歪み、目を引く。魚眼特有の強い遠近感によって、手前の影は長く伸びている。現場は人であふれていたが、小さく写ることで散漫な印象はない。
レンズ選びは、被写体をどう描写したいか、どこをフレーミングするかに関わってきます。広角レンズ、望遠レンズ、魚眼レンズなど、様々なレンズがありますので、撮影イメージに合わせて、効果的にレンズを選びましょう。