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【ウメの撮り方②】寄りも引きも、撮影のポイントは“ボケ”描写!

花が少ない冬の時期に、小さな花を咲かせるウメ。開花期は地域によって大きく異なり、温かな沿岸部では1月下旬から、平地では本格的な春を前にした2月中旬から3月に開花します。紅やピンク、白などが主流で、公園や梅園など多くの場所で見ることができます。被写体としてもかわいらしくて最適です。

 

 

クローズアップは程よいボケで周囲を見せてウメの木を撮る場合は前ボケを入れよう

ウメは小さいので、クローズアップしようと花に近づけば、背景は自然と大きくぼけます。枝がぼけてすっきりするのはいいことですが、あまりにも背景をぼかしすぎると、凹凸がなくなり平坦な画面になってしまいます。主役のウメを強調しつつ、周りにも花があるなど、背景の様子を感じさせる程度にぼかすのが有効です。

ウメの木全体を狙う場合は、引いて撮るので背景はぼけにくくなります。しかし、前ボケなら手前の花に近づけば入るので、大きな前ボケをウメの木に重ねることができます。また多重露光機能を使って、ボケを重ねる撮り方もウメで使えるテクニックです。紅白と色の違うウメをぼかして重ねると、彩りがアップしてきれいです。

 

基本テクニック

ぼかしすぎは禁物、背景を感じる程度のボケにする

ウメを撮る場合、中途半端なボケでは枝がうるさく感じられるのでなるべく大きくぼかしたいが、ぼかしすぎると背景が紙を置いたように平面的になり雰囲気が出ない。ボケはぼかすか、ぼかさないかの両極ではなく、細かくコントロールすることができる。絞りの値を変えるなどして、ベストのボケ具合を探ろう。

 

F2.8

 

〇 F5.6

 

F8

 

クローズアップすると背景はぼけやすいが、ぼかしすぎると背景が平坦に写るので注意
絞りを変えて比較した。300ミリ相当の望遠レンズを使ってクローズアップしているので、背景がぼける要素は整っている。絞りを開放F2.8にすると、背景が大きくぼけた。すっきりとしてはいるが、背景に何も感じられずに平凡だ。少し絞ったF5.6では程よく陰影が出て、背景にもウメがあるのが感じられる。 F8まで絞り込むと主役の存在を邪魔するほど背景がうるさくなってきた。撮影距離やレンズの焦点距離によって結果は変わるので、絞りを変えて何枚か撮ってみるといいだろう。

 

 

応用テクニック①

ウメの木を狙う場合は前ボケを取り入れて華やかに仕上げる

ウメの木を狙う場合、サクラに比べて花のつき方が少なく、開花のころは葉もまだ出ていないので、彩りに乏しく、画面が寂しくなってしまう。これに色を加えて華やかに仕上げるには、青空を背景にするか、紅いウメのボケを入れるかだ。しかし曇っていたら空は白いし、引いて撮るとボケは小さくなる。そこで、周囲の木を見渡して紅いウメを前ボケにしてみよう。

 

ウメの木を引いて撮影。背景を花のボケで埋めるのは難しく、周囲にも緑がないので、彩りも乏しい。ほぼモノトーンの画面だ。
 

 

紅いウメの前ボケを大胆に取り入れる
引いて撮るときも、前ボケなら入れられる。距離の離れた2本の紅いウメを主役と前ボケにし、手前の花に近づいて大きくぼかした。ぼかすと面積が広がるので、紅いウメの前ボケによって、ピンク色の部分が画面に散りばめられて華やいだ。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/320秒) +1.7補正 ISO250 WB:晴天 アート機能:ファンタジックフォーカス

 

 

応用テクニック②

多重露光機能を使ってボケ描写を重ね合わせてカラフルな写真に仕上げる

多重露光機能を使って、シャープな画像にピンボケ画像を重ねてみよう。ピンボケ画像を重ねることで、ウメの枝の煩雑さを曖昧にでき、さらに色を広げてカラフルな写真にすることができる。多重露光なら、上の応用テクニック①のように前ボケが作れないシーンでもボケを作り出せ、重ねることが可能だ。

 

左写真:紅白のウメが混ざり合い、色はあるので一見きれいだが、中距離程度のクローズアップは枝がうるさく感じられてしまう。そこで多重露光を行う。まずはピントの合った写真を撮影。
右写真:これは、2回目の露光で写す画像のイメージ。上の写真と同じ場所を、ピントを外してぼかしている。AFではピントが合ってしまうので、 MFに切り替えている。
 

 

彩りアップとソフト効果が得られた
ピンボケ画像を重ねることで、ごちゃごちゃしていた枝が気にならなくなったし、彩りのある部分が広がって画面が華やかになった。また、ソフト効果を取り入れたようにやわらかな写りになり、早春ののんびりとした雰囲気が表現できた。
 

 
写真・解説/吉住志穂