春の花といえば真っ先に思い浮かぶのが「桜」。桜が盛大に咲いている姿を見ると、自然とカメラを向けたくなります。ですが、桜は色が淡く、その繊細な色が出にくいため、桜を美しいまま撮影するのは至難の業です。そこで今回は、桜をきれいに撮るテクニックやコツを紹介しましょう。
サクラだけを捉えてその魅力を引き出すのか、脇役を入れてサクラが咲く雰囲気を生かすのか
どんなイメージでサクラを撮影したいのか、表現意図をはっきりと持つことが構図決定の第一歩です。サクラだけを捉えてサクラの魅力を引き出すのか、脇役を入れてサクラが咲く雰囲気を生かすのかでフレーミングは違ってきます。樹齢数百年という貫禄のあるサクラなら画面いっぱいに見せたいですし、シダレザクラならしなやかな細い枝を切り取ると繊細さを引き出せます。人物や作業小屋などのモチーフを生かせば、山里らしいサクラ風景になるでしょう。脇役を入れるときは、左右や対角などにモチーフを配置するとバランスのとれた構図になります。
基本テクニック
サクラの樹形に注目して形や線を生かして切り取る
サクラの一部を切り取るとき、幹や枝のライン(流れ)を生かすとまとまりのある構図に仕上げやすい。サクラの優しさを出したいから細い枝を生かす、サクラの貫禄を出したいから太い幹を生かすなど、しっかりとした表現目的を持って撮影しよう。構図になる形を見つけようとするとつまらない写真になってしまうので注意したい。
きれいな扇形に見えるポジションを探して撮影
18ミリ相当の広角レンズで見上げるように撮影することで、シダレザクラらしい大きく枝を広げた特徴ある樹形を生かすことができた。扇形を生かすなど、樹形が格好よく見えるポジションを探すことが大切だ。
18ミリ相当 絞り優先オート(F13 1/60秒)+0.3補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
横に流れる枝のラインに注目
横方向に並ぶ3本の枝に注目し、望遠レンズでサクラの枝ぶりを切り取った。すっきりとした背景に整った形を見せることで構図の核を作り、サクラの淡い色合いや優しい質感を生かすことができた。
対角線を生かして伸びゆく印象に
対角線方向に太い幹と分岐した枝を配置し、画面いっぱいにサクラの枝ぶりを見せることで旺盛な樹勢が伝わるように心掛けた。画面内で最も長いラインとなる対角線を生かすと、伸びゆく感じを伝えやすい。
応用テクニック①
脇役があるときは上下や左右、対角に配置してバランスをとる
主役と脇役がある場合、画面のどちらか一方に片寄ってしまうと、バランスが悪くなる。主役と脇役を画面内に無駄なく配置できるよう、上下左右のバランスが取れるポジションを選ぶことが大切だ。そのうえで、大きさの大小をコントロールするため、撮影距離やレンズの選択も大切にしたい。
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右下に人物を置いてバランスを整える
棚田が広がる農村に咲く一本ザクラ。サクラを真ん中に小さく捉えると、左右の空間が空いてしまってやや散漫である。サクラをやや左寄りの上部に画面いっぱいに見せて迫力を出し、脇役となる人物を右下に置くことで上下左右のバランスを整えた。
300ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/20秒)-0.7補正 ISO100 WB:晴天 PLフィルター
主役の花筏を画面下部に広くとり上部に控えめに枝ぶりを入れる
花筏の広がりを生かすため、画面の7割を花筏が占めるように作画した。花筏だけでは単調なので、美しい枝ぶりを画面上部に控えめに見せている。主役を大きく、脇役を小さく、それぞれ上下に配置する画面構成である。
66ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/13秒) +0.7補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
応用テクニック②
意図的に空間を取り入れて周囲の余韻を伝える
サクラをクローズアップするとき、マクロレンズでただ大きく捉えるだけではもったいない。ボリューム感を出したいなら画面いっぱいに見せるのも効果的だが、意識して空間を取り入れることで、余韻を伝えることにも挑戦してみよう。水面からは静けさや冷たさ、ナノハナなら華やかさ、黒々とした森からは力強さを伝えられる。
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ナノハナの彩りを加えて華やかな写真に
花だけを大きく捉えると形や質感はよくわかるが、図鑑的かつ説明的な写真になってしまう。画面下部に背景のナノハナの黄色を取り入れると、彩りが加わって華やかさや空間による広がりを感じさせることができた。
105ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/160秒)+0.7補正 ISO200 WB:5000K
写真・解説/深澤武