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実際の撮影現場を再現した1日集中講座! ハッセルブラッド「中判デジタルカメラH6D講座」潜入レポート

「ハッセルブラッド・ジャパン ローカルアンバサダー 長山一樹氏による中判デジタルカメラH6D講座」が、2019年10月27日(日)、東京・渋谷のスタジオ Go-SEES 広尾で開催された。講師の長山一樹さんは、ファッションをはじめ広告や写真集など第一線で活躍するコマーシャルフォトグラファーだ。学生時代から長年ハッセルブラッドを愛用しており、ハッセルブラッドのアンバサダーの一人でもある。

 

手書きスライドを使って撮影に対する姿勢やハッセルブラッドの魅力を熱弁

今回の講座は、昨年3回に分けて行われた講義の内容をさらに精錬したもの。実際の撮影現場を再現するために、1日集中講座としてスタジオを借り切って行われた。

 

午前中は「プロフェッショナルフォトグラファーの存在意義」をテーマとした座学。スーツ姿で撮影に臨む長山さんの撮影スタイルを裏付ける、撮影に対する意識やモノへのこだわり、写真家としての姿勢、継続することの重要性といったことなどについて語られた。

簡潔にまとめられた手書きのスライドには、長山さんの熱い想いとともに強いメッセージが込められているようにも見える。ちなみに約30名の参加者は、写真家を目指す学生をはじめスタジオマンや写真家といった面々で、女性の姿もあった。有料セミナーということもあって、会場はピンと張り詰めた緊張感が漂っていた。

ハッセルブラッドを選ぶ理由については、ハッセルブラッドをあえて“不便なカメラ”という言い回しをして、「不便だからこそ感覚が養われる、イメージが明確にできるカメラである」ことを解説した。それは、ハッセルブラッドを長年仕事で使い続けているからこその表現と言えるだろう。確かに中判カメラのハッセルブラッドは、一眼レフカメラやミラーレスカメラに比べれば、機動性も速写性も及ばない。

 

しかし、中判・大判カメラだから気づかされることも多くあり、そうしたカメラで撮ることは、自分を試されるような面もあると長山さんは語る。それがハッセルブラッドをメインカメラとして使い続けている理由でもあるのだと。予定していた時間をややオーバーして、午前中の講義は終了した。

 

スタジオを再現して「ファッションポートレートの極意」を実演

午後は「ファッションポートレートの極意」と題した実演。実際の撮影現場の流れを見せる形でモデル、スタイリスト、ヘアメイク、メイクを交えてのシューティングが行われた。

 

ユニセックスをテーマにしたファッションポートレートということで、モデル、スタイリスト、ヘアメイク、メイクがそのイメージに合わせて作り込んでいく。撮影現場ではフォトグラファーは監督として動く必要があるといったフォトグラファーがとるべきポジション、あるいはコミュニケーションの重要性など、現場で必要なノウハウや普段の撮影でやっていることを、解説を交えながら実演して見せてくれた。

セットも実際の撮影をイメージして作られている。手前からモデルに向けて1灯、背景に4灯をセットし、それを「天紗」という天井に張ったディフューザーで光をやわらげる構成だ。天紗はピンと張らずに斜めに垂らすことで、ソフトな光を作り出している。本番さながらのスタジオ撮影をフォトグラファーのすぐ後ろで見ることができる機会だけに、緊張した空気が張り詰める。撮影前にスタジオマンが動き回ってセットを完成させるところから見学できるのは、なかなかない機会だろう。

長山さん愛用のレンズは100mmと150mmで、ほとんどこの2本しか使わないといってもいいそうだ。背景を多く入れたくないというのがその理由。長山さんの作品が持つ独特の空気感、距離感を生み出しているのが、この35mm判換算でそれぞれ約55mm、約82mmの準標準レンズだといえる。レンズを変えて、作品の印象がどう変わるのかなども実際に撮影して見せてくれた。

撮影後には、モデルをはじめスタイリストやヘアメイクなどのスタッフにも質問できる機会が設けられた。これもなかなかないことだ。モデルやスタイリストからみてフォトグラファーにどうして欲しいと思っているのか、今回の撮影でどんなところに気をつけたのかといった鋭い質問が寄せられた。

 

会場には注目のデジタルカメラバッグ&中判カメラボディの展示も

会場には、長山さんも愛用しているハッセルブラッドのHシステムのほか、デジタルカメラバッグ 「CFV II 50C 」と 中判カメラボディとして最小の「907X」も展示され、手にすることができた。907Xは、現時点では月面着陸50周年記念モデルとして発表されたスペシャルエディションのみで、一般モデルはまだ未発表ということもあり、長山さんも参加者も興味津々の様子だった。

今回の講座では、第一線で活躍するコマーシャルフォトグラファーの話を聞き、撮影を間近で見ることで、実際の撮影現場の雰囲気を感じることができた。また、モデルやヘアメイク、スタイリストのナマの声を聞くことができたのも大きな収穫だろう。最後まで気の抜けない講義だったが、それだけ充実した内容で、参加者も満足できたに違いない。