スマホのカメラ機能は、1000万~2000万画素程度でスマホで扱うには必要十分な画素数を確保しつつ、画角などの異なる複数のカメラを搭載して幅広いレンジの画角に対応するといった方向性のものが多い。そうしたなか、サムスン電子は1/1.33型で約1億800万画素という、スマホ用としては非常に大型で超高画素な撮像素子ユニットを開発。このユニットは、これまでにシャオミ(小米科技)製スマホ「Mi Note 10 Pro」などに採用されてきたが、このたび、満を持して日本で販売する自社製スマホ、Galaxyシリーズに搭載してきた。それが、日本国内ではau(KDDI)が採用(2020年7月現在)する「Galaxy S20 Ultra 5G」だ。今回、このS20 Ultraのカメラ機能を試す機会を得たので、その写りや機能などを実写とともに紹介する。
カメラ性能に注目! Galaxy S20 Ultra 5Gの基本スペックをおさらい
Galaxy S20 Ultra 5Gは、6.9型で3200×1440ドットの有機ELモニターを採用。サイズは167×76×8.8mm、質量が222g。iPhone 11 Pro Maxなどに近い比較的大きめなサイズのスマホで、同社のハイエンドモデルとなる。SoC(CPU)にはクアルコムの上位モデルであるSnapdragon865(au版)が採用され、RAMが12GB、ROM(内蔵ストレージ)が128GBとなっている。それだけに価格も税込16万5980円(au Online Shop、新規契約、一括払い)と高価だが、ハイスペックなだけでなく、ミリ波を含む5G回線に対応するなど、長く快適に使える仕様になっている。
カメラ機能は、アウトカメラに13mm相当F2.2で約1200万画素の超広角カメラ、25mm相当F1.8で約1憶800万画素の広角カメラ、103mm相当で約4800万画素の望遠カメラを搭載するほか、ToF(深度測位用、30万画素)カメラも装備。インカメラは32mm相当F2.2で約4000万画素となっている。このうち、やはり気になるのは約1憶800万画素の広角カメラということになるが、設定を「108MP」モードにしたとき以外は、アウトカメラは基本的に約1200万画素の記録画素数となる。
広角カメラについては9つの画素を束ねて1つの画素として扱う「ナノビニング」技術を採用し、暗所撮影時におけるノイズの発生を抑えつつ、約1200万画素で低ノイズでの記録が可能となっている。逆にいうと、108MPモードでは「ナノビニング」は解除されるはずなので、1憶800万画素を生かすなら、できるだけ明るい場所での使用が好ましいということになる。
このほか本機では動画撮影機能にも力が入っており、フルHDでの記録のほか、8Kでの撮影にも対応。4Kテレビがようやく普及しつつある状況で8Kは必要ないと思うかもしれないが、現時点でも広角で撮影して見たい部分を拡大して見るといった使い方が可能であり、今後8Kモニターが普及する可能性も考えれば、将来に渡って楽しめる機能の1つといえる。
オート撮影でも十分に実用的なカメラ機能
本機カメラ機能(カメラアプリ)の設定は、大きく「シングルテイク」「写真」「動画」「その他」の4つに分かれている。このうち、スマホ任せで撮影する場合は「写真」「動画」を選ぶとよい。画面比やフラッシュの有無、自動シーン認識機能といった基本的な設定を行うだけで簡単に撮影でき、タッチ操作によるピント位置の指定や露出補正なども可能だ。ISO感度やシャッター速度などの露出、ホワイトバランスを調整しながら撮影したい場合やRAW(DNG)で撮影したい場合は、「その他」にある「プロ」「プロ動画」設定にすることで可能になる。ただし、108MPや8Kでの撮影は、それぞれ「写真」「動画」でのみ設定できるようになっていて、いわゆるオート設定でしか撮影できない仕様のようだ。(従って、RAWでの108MP記録は少なくとも今回試した限りでは標準アプリではできなかった)。
実際に使ってみると、色再現がかなり鮮やかで、色ノリの良い仕上がりになる印象。それに不満がなければ、「写真」でのオート撮影で露出補正もほぼ必要ないと思える仕上がりになる。108MP記録が行える点を考えても、RAW記録が必要ないのであればオートで十分だと思う。また、AIによるシーン自動判別機能も搭載されており、風景や花、人物などを高い精度で認識する。顔認識などを含め、自動で最適な設定にしてくれるので便利だ。
このほか、同社独自の機能といえる「シングルテイク」は、カメラを被写体に向け、動画クリップを撮るような感じで最大10秒程度撮影することで、被写体に最適化された写真や動画クリップなどを複数作成し、より好ましいものをリコメンドしてくれる機能。作成されたデータはひととおり保存されるので、どのように撮ったらいいか考える余裕はないがとりあえず撮っておきたい……といった場合に便利だ。
1憶800万画素や100倍ズームの実力は? いろいろな撮影を試してみた
ここでは意図的に露出を変えて撮る必要がある場合や、一部のシーンモードを使用して撮る場合を除き、オート撮影となる「写真」「動画」モードを使用して撮影した。また、シーン自動選択機能は「オン」を基本とした。
本機の撮影機能で特に気になるのは、108MP(約1憶800万画素)設定での画質や、4つのカメラを用いた画角変化などだと思う。まずは108MPモードでの画質を試してみた。
通常撮影モード(約1200万画素)に比べて圧倒的に解像感は高いものの、圧縮率が高めで1憶800万画素オーバーという数値ほどの解像感は感じられない。全体の描写を見てみると、通常撮影モードのほうが階調が豊かに感じられる部分もあり、解像感の高さが優先されるような被写体以外では通常撮影モードのほうが見栄えのする写りになるかもしれない。
<108MP設定(約1憶800万画素)>
<通常撮影(約1200万画素)>
圧縮率が高いためか、約1憶800万画素という数値ほどの解像感は感じられないが、約1200万画素の通常撮影に比べると確かに解像感はかなり高いことがわかる。一方で明部や暗部の階調を見ると約1200万画素で撮った画像のほうが良好に見える。特徴のある2つの設定を使い分けられるのが本機の魅力の1つだ。
次に画角変化については、デジタルズームを含めると0.5倍~100倍まで対応とのことで、計算上、13mm相当から2600mm相当程度までの画角に対応することになる。しかも、103mm相当の望遠カメラは約4800万画素となっているので260mm相当程度となる10倍前後までであれば、約1200万画素でほぼ画質劣化なく撮影できることになる。
実際に撮影してみると、30倍では画像がぼやけた印象になるが10倍では十分実用的な写りが得られる。ちなみに100倍では、三脚を使っても周囲のわずかな振動で画面が揺れて見えるほどなので、三脚などを使って撮影しないと思った範囲を画面に入れることすら難しいと思う(2600mm相当なので、当然といえば当然なのだが)。ただ、スマホでこれだけ遠くまで写せるという点は面白い。
<0.5倍(13mm相当)>
<1倍(25mm相当)>
<2倍(50mm相当)>
<4倍(103mm相当)>
<10倍(260mm相当)>
<30倍(780mm相当)>
<100倍(2600mm相当)>
デジタルズームが必要ない、0.5倍、1倍、4倍の画質は十分だが、4倍カメラからの切り出しとなる10倍も約1200万画素の画質としては概ね満足できる。ただし、30倍や100倍は、AIを活用したデジタルズームということで面白さは感じるものの、画質的には、ぼやけた印象が拭えない。また、十分な明るさがあれば手持ち撮影も可能と思うが、極端に画角が狭いのでフレーミングは難しい。
基本的な記録画素数を約1200万画素にすることで、暗所撮影時の画質を向上させたとのことで、夜景撮影時の画質も気になるところだ。そこで、プロモードを使用してISO感度や露出値を変えながら実際に夜景を撮影してみた。プロモードでは1倍から6倍までの画角が使用できるため、1倍、2倍、4倍、6倍の各画角で撮影したが、広角カメラ(1倍)や2倍、4倍ではISO800程度まで、6倍ではISO400程度までなら画質的に許容できると感じた。ただし、いずれもプロモードでは、広角カメラの画像からの切り出しとなるためか、低感度でも6倍になるとややぼやけた写りになる印象だ。
<元画像(1倍)>
<ISO400>
<ISO800>
<ISO1600>
<元画像(4倍)>
<ISO400>
<ISO800>
<ISO1600>
<元画像(6倍)>
<ISO400>
<ISO800>
<ISO1600>
ISO感度が手動設定できるプロモードを用い、ズームを1倍、4倍、6倍、感度はISO400~1600までを掲載。いずれも、感度アップするほど解像感は低下する。それでも、いわゆるノイズはあまり目立たないので、解像感を気にしなければISO800以上の高感度も実用的だ。
本機でもう1つ注目したいのが、8Kで撮れる動画撮影機能だ。現状、デジタルカメラでも8Kで撮れる機種はほとんどなく、およそ3200万画素で撮れる動画の画質も気になるところだろう。実際に8Kで撮影した動画の1コマを切り出してチェックしてみると、さすがにおよそ3200万画素の画像としては多少ぼやけた印象となるものの、フルHDに比べるとかなり細かい部分まで再現されているのがわかる。色再現は、写真と同様の鮮やかで色濃い仕上がりなので、十分な明るさがある状況であれば、見栄えのする動画撮影が可能だろう。
<8K動画撮影からの静止画切り出し>
そのほかの撮影機能に目を向けてみると、背景をぼかす機能として「その他」に「ライブフォーカス」が用意されている。これは、被写体の背景に「ぼかし」「大きな円」「回転」「ズーム」「カラーポイント」の5つのエフェクトを適用する設定だ。このほか、シーンモードにある「料理」も、色再現の最適化のほかに被写体の前後がぼけるエフェクトが適用される。ただ、広角カメラ使用時は、センサーが大きいこともあり、近接撮影であれば、自然と背景がぼけてくれる。
シーンモードには「ナイト」モードも用意されている。このモードでは数秒かけて夜景を撮影して合成。手持ちでも簡単に美しい夜景を撮影できる。このほか、「写真」モードでは最大100枚までの連写が可能。実際に撮影してみたところ、5秒弱で100枚となったので、AFは固定されるようだが20コマ/秒以上の撮影が期待できる。
【まとめ】JPEGのみのオート撮影でも比較的満足度の高い仕上がりに
数あるGalaxyスマホのなかでも、Sシリーズはフラグシップモデルだけあって高機能で、カメラ機能も充実しており、予算が許すなら満足度の高いスマホだと思う。将来的に5Gが普及して今まで以上にスマホでの大容量データの送受信が容易になったら、高画素で写真や動画が撮れるメリットも増すはずだ。
また、約1200万画素となる通常撮影では多くのシーンで満足度の高い写真が撮れ、明るく条件の良いシーンでは約1憶800万画素で高解像に撮るといった使い分けが楽しめるのは、写真を撮るうえで大きなメリットになるはずだ。できれば、プロモードで108MPモードが使えれば、RAW現像することでより解像感の高い画像にできるのではないかと思わなくもないが、JPEGのみのオート撮影でも比較的満足度の高い仕上がりになるので、本機の画作りの傾向が気に入れば不満はないと思う。
いざ購入するとなると価格がネックになりそうだが、スマホ本体の基本性能が高く、長く使える点も考えると面白い買い物なのではないだろうか。