機材レポート

iPhone 11のカメラ機能の実力は? 超広角カメラやナイトモードを実際に試してみた

カメラ好きでも、普段の記録はスマホのカメラ機能で済ませているという人も多いと思う。実際、スマホのカメラ機能は独自の進化を続けていて、画素数はもちろん画質の面でも普段使いなら十分満足のいくレベルになっていると思う。2019年9月20日に発売された「iPhone 11」シリーズは、そうしたカメラ機能において、ワンランク上を目指した製品で、カメラ機能に特に力が入っている。本稿では、そうしたiPhone 11のカメラ機能について、シリーズ最上位モデルのiPhone 11 Pro Maxを中心に実写を交えて解説する。


▲iPhone 11シリーズは、iPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Maxの3機種の展開。いずれも13mm相当の超広角カメラが加わり、ノーマルモデルでは「デュアルカメラシステム」、Pro/Pro Maxでは、52mm相当の望遠カメラを加えた「トリプルカメラシステム」を採用している。

 

13mm相当となる超広角カメラを搭載

iPhone 11シリーズは、SoCに新世代の「Apple A13 Bionic」が採用され、Neural Engine(機械学習専用エンジン)や高性能GPUの搭載などにより、通常処理はもちろん、グラフィック性能も高速化・高度化されている。従来機種に比べると、今後の発展性の部分も含めて文字どおり1世代バージョンアップしているといえるだろう。

そうしたなか、本シリーズで何より特徴的なのが、13mm相当となる超広角カメラの搭載だ。これは、約120度の画角でF2.4の明るさを持つ1200万画素のカメラで、静止画、動画ともに使用可能。13mm相当というとレンズ交換式カメラでさえ選択肢が限られる超広角域だ。

実際に使用してみると普段使いには広すぎるようにも感じられるが、遠近感が誇張されるその写りは、被写体にグッと近寄ることができれば、普段使っているカメラとは、明らかに違う写りが得られて新鮮だと思う。加えて、トリミングなどの加工が前提といえるスマートフォンなら、また違った楽しみ方もできそうだ。

動画においては4K撮影対応ということもあり、この超広角でフィックス撮影を行うなどすると、ビデオカメラでさえ難しい広がりのある空間表現が楽しめるだろう。もちろん、従来からある広角カメラも抜かりはなく、26mm相当でF1.8、光学式手ブレ補正機能搭載(超広角カメラには非搭載)の1200万画素カメラとなっている。

iPhone 11 Pro/Pro Maxでは、これに加えて52mm相当の画角を持つ望遠カメラも装備されている。これは、絞りがF2で従来機種に搭載されている望遠カメラより明るくなっており、光学式手ブレ補正機能も搭載されているので暗い場所でも撮りやすくなっている。また近距離撮影においては光学的なボケ描写も期待できる。


▲iPhone 11(左)とiPhone 11 Pro Max(右)。違いはサイズと望遠カメラの有無だけにも思えるが、実はモニターのクオリティーなども違っている(写真は専用ケースに入れた状態)。

 


▲Pro Maxのレンズ部分。従来モデルから搭載の手ブレ補正付き26mm相当F1.8に加え、52mm相当F2(F値が明るく手ブレ補正付き)と13mm相当F2.4が追加されている。

 


▲ズームは、0.5倍、1倍、2倍とカメラごとの3ステップと、デジタルズームを含む10倍までのスケール表示を切り替えて使うことができる。

 


▲動画記録設定の画面。最大で4K60fpsでの記録が可能。

 

では実際に、画角がどの程度変化するか比べてみた。次の写真は上から13mm相当、26mm相当、52mm相当、136mm相当(5倍ズーム・デジタル併用)、270mm相当(10倍ズーム・デジタル併用)で撮影したもの。

<13mm相当>

 

<26mm相当>

 

<52mm相当>

 

<136mm相当(5倍ズーム・デジタル併用)>

 

<270mm相当(10倍ズーム・デジタル併用)>

 

超広角/望遠カメラとポートレートモードを試す

どんな写真が撮れるのか、描写力はどの程度なのか、ここからは実際にiPhone 11 Pro Maxを使って撮影した写真をもとに解説していこう。

<超広角カメラ>


13mm相当で撮影。近接撮影でのデフォルメ効果はかなりのもの。かなり近寄ってもピントが合うので、思い切って寄って迫力を出そう。超広角特有の歪みも強めに出るので、その生かし方もポイントだ。

 


同じく13mm相当で撮影。吊り橋に近寄って見上げた。いかに強烈に遠近感が強調されるかがわかると思う。

 

<ポートレートモード>


iPhoneには従来から「ポートレートモード」という背景を大きくぼかす機能が備わっていたが、iPhone 11ではその精度が以前よりも高くなっているという。人物以外にも適用でき、背景が結構大きくぼける。ただし“前ボケ”は再現されないようなので、手前側を画面に入れないのがコツ。

 

<望遠カメラ>


52mm相当で花に近寄ってみた。ポートレートモードなしでも、ここまで近寄れば背景は十分にぼけ、前ボケも作り出せる。上手く使い分けよう。

 

「ナイトモード」搭載で夕景・夜景スナップも楽しめる

次にカメラ機能で注目したいのが「ナイトモード」の搭載だ。これは、カメラが暗いと判断すると自動的に設定されるモードで、自動で複数枚の画像を撮影し、シャープに写せた部分を本体内で画像合成。ノイズ処理やコントラスト調整などを行って、暗い場所でもブレの少ない画像を生み出してくれるというモードだ。

光学式手ブレ補正機能も搭載されているので、もともと多少薄暗い程度ならブレなく撮れるのだが、このモードがあれば夜間でも手持ちでブレの少ない画像が撮れる可能性が高まる。ただし、この機能は超広角レンズ使用時には機能しないようなので、広角か望遠レンズ使用時に限られる。


▲ナイトモード機能時の画面。左上の黄色いマークがナイトモードに入った目印。ここでは「1秒」と表示されているが、最大10秒までの表示が出て、その間連写が続き、合成処理されるという。

 

次の写真は、上から13mm相当、26mm相当、52mm相当で撮影。前述のとおり、13mmではナイトモードは機能しない。画質は少し荒れが見られるが、超広角なのブレにくい。ほかの2枚は、ブレていないのはもちろんだが、ナイトモードの効果でノイズ処理も十分に効いている。

<13mm相当(ナイトモードなし)>

 

<26mm相当(ナイトモード)>

 

<52mm相当(ナイトモード)>

 

このナイトモードのおかげで、夕景・夜景のスナップも気軽に楽しめる。


夕景のスナップ。自動でナイトモードに切り替わり、複数枚の画像が撮影&合成されてブレのない明るい画像になる。動きのある部分は、合成からはキャンセルされ、ブレた状態で写るようだ。

 


26mm相当を使って、夕暮れどきに輝度差の大きい照明入りの看板を入れて撮影してみた。この場合も自動でナイトモードに入ったようで、輝度差を適度に緩和して再現された。

 


52mm相当で撮影。これもナイトモードが機能した。空の雲の様子や建物の暗部のディテールまで十分に写っている。ただ、点光源のゴーストが出ているのは少し残念。

 


52mm相当で夕景を撮影。撮影データを確認すると、ISO200、1/50秒とのことだが、光学式手ブレ補正も搭載され、多少暗くてもブレなく撮れて画質的にも十分満足できるものだった。

 

どのモデルを選ぶかは「望遠カメラの有無」と「ディスプレイの違い」を考慮したい

iPhone 11とiPhone 11 Pro/Pro Maxの違いは、カメラに関しては望遠カメラの有無だけといって差し支えないと思うが、モニター部分の仕様も思いのほか異なっている。iPhone 11は、6.1型の「Liquid Retina HDディスプレイ」採用で解像度は1792×828ピクセル。Proは5.8型、Pro Maxは6.5型で「Super Retina XDRディスプレイ」採用で2436×1125ピクセルの解像度を持つHDRディスプレイだ。

重さはiPhone 11の194gに対して、Proが188g、Pro Maxが226gとなっていて、サイズもProが一番小さい。このほか、耐水性やボディの質感などにも違いがある。価格は、iPhone 11が7万4800円(64GB・税別・アップルストア価格)でProが10万6800円(同)、Pro Maxが11万9800円(同)。iPhone 11がお得ではあるが、仕様の違いを考えるとPro/Pro Maxを選ぶのも悪くなさそうだ。


▲Pro Maxの6.5型モニターは、高精細で色再現も美しい。iPhoneで写真を見ることが多いなら、やはりiPhone 11 Pro/Pro Maxを選びたいところだ。

 

面白い超広角カメラと実用的な望遠カメラ

iPhone 11シリーズのカメラ機能の最大の魅力は、やはり13mm相当の超広角カメラだろう。これは、カメラファンにとっても嬉しい機能といえると思う。一眼カメラでこのクラスの画角の交換レンズを買おうと思うと、国内メーカー製なら10万円以上はするはずで、海外メーカーの低価格レンズでも数万円はかかる。

実際のところ、使用頻度が高いレンズではないと思うので、少し試してみたいという程度なら、このiPhoneのカメラ機能でもいいのではないかと思う。画質面やゴースト/フレアの発生のしやすさといった面で課題はあるものの、気軽に持ち運べて、多彩な画角で撮れるのは楽しいはずだ。

今回はiPhone 11 Pro Maxを主に使ったが、実際のところ、面白さでは超広角カメラに軍配が上がるが、使って便利だと感じたのは52mm相当の望遠カメラだ。それは、「望遠」といっても52mm相当でありカメラユーザーにとっては「標準」の画角であること、歪みが少なく写りに違和感が少ないこと、近接撮影での背景ボケが思いのほか自然なことなどによるもので、特に近接撮影で使いやすいと感じた。

これらの点から、ここではカメラユーザー視点ということで、超広角、広角と“標準”が切り替えられる、iPhone 11 Pro/Pro Maxを、あえてオススメしたいと思うのだが、どうだろうか?