デジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」の登場で熱くなっているペンタックスKマウント。2021年8月下旬に発売されたAPS-Cフォーマットの大口径標準ズーム「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW」を「K-3 Mark III」に装着して、その実力を試してみた。
ファン待望の大口径標準ズームがついに登場
「PENTAX K-3 Mark III」を手にしているユーザーで、このレンズを待っていた人は多いのではないだろうか。今年2月に開発発表された際は、年内の発売予定とされていた。さては年末のボーナス商戦に投入かと思いきや、夏の終わりに登場となった。
開放のナチュラルなボケがスナップでも使いやすい
フルサイズに比べるとボケが小さいAPS-Cフォーマットだが、F2.8ならば一般的には十分なボケが得られると思う。右上の看板にピントを合わせているが、そこからのボケ方もなだらか。ボケ味も前後ともナチュラルだ。
先代モデルからの進化ポイントは?
焦点距離と明るさが同じ先代モデルが発売されたのは2007年。そこから14年ぶりのリニューアルで、フィルター径こそ77mmで変わらないが、鏡筒はフルサイズ対応のレンズ並みに太くなった。それはもちろん画質を追求した結果で、数々の特殊ガラスやHDコーティングを採用することで、収差や逆光の影響を大幅に低減している。
耐逆光性能も十分オールラウンドに使える
HDコーティングにより、逆光時のゴーストやフレアも低減。あえてレンズには厳しい状況を撮ってみたが、おそらく印刷ではわかりにくい程度のゴーストが現れるにとどまった。
特殊ガラスを贅沢に使った新世代★レンズ
光学系にはEDガラスと異常低分散ガラスをそれぞれ1枚ずつ、非球面レンズとEDガラスを使用した非球面レンズをそれぞれ2枚ずつ採用している。
画質性能にこだわり、新レンズはサイズアップ
先代と今回発売の2代目を比較。フィルター径の77mm、最大径の84mmは同じだが、全長が18.5mm伸び、重量が147g増えた。ひと回りサイズアップした印象だ。
ホールディングしやすいサイズ感を実現
大柄だがホールディング性は良好。ズームリングの感触はサイズを考えるとまずまずといったところか。電磁絞りを採用し、マウントは絞りリングのないKAF4と呼ばれるタイプだ。
フィールドでも安心の防塵防滴構造を採用
もっとも全長が伸びるのはズームが望遠端のときだが、鏡筒の移動量は少なめ。また防塵防滴構造になっており、内部に水やホコリが侵入しにくい。フードは花形が付属する。
「K-3 Mark III」ユーザーなら必携の一本
実写できたのは試作版だったが、性能の片鱗は十分に感じることができた。もともと高い解像力を持つ「K-3 Mark III」と組み合わせれば、どんなジャンルや状況でも高いパフォーマンスを発揮するはずだ。
AF駆動のモーターも、先代のSDM (超音波モーター) から動画撮影にも適したPLM (パルスモーター) へアップデート。さらに静かで高速なAFを実現している。最短撮影距離は先代と同じく30cmだが、ピントがシビアになるマクロ域でも、特にAFに関するストレスは感じなかった。マニュアルフォーカスもモーターを介しての駆動になるが、ピントリングのトルク感はそれを意識させないほど滑らかだ。「K-3 Mark III」のユーザーであれば必携の一本といえるだろう。
PLMによるAFが狙った瞬間を逃さず捉える
速さをウリにする超音波モーターに対し、パルスモーターは静粛性が特徴。AF-Cでの追従性が気になるところだったが、あれこれ試した限りでは十分過ぎる性能。特に不満は感じられなかった。
花をキレイに描く柔らかな近接描写が◎
最短撮影距離の30cmで撮影。さすがに遠景のときのような鋭いキレ味はないが、決して甘いわけではなく、ピントが合った部分はしっかりと解像している。マクロ域ではこれくらい柔らかいほうが使いやすい。
HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
発売日 2021年8月27日
希望小売価格 236,500円 (税込)
マウント ペンタックスKマウント (KAF4)
焦点距離 16〜50mm (35mm判換算 24.5〜76.5mm相当)
レンズ構成 10群16枚
最短撮影距離 0.3m
最大撮影倍率 0.24倍
絞り羽根 9枚 (円形絞り)
フィルター径 φ77mm
最大径×長さ 約φ84×117mm
質量 約712g (フード装着時 約750g)
※本レポートは『CAPA』2021年9月号掲載の記事を再構成したものです。撮影にはベータ機を使用しています。