伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年11月号 アザーショット【前編】
ニコンZマウントの望遠レンズは「Z 9」の登場以降、拡充してきたが、どのレンズもハイグレードのS-Lineシリーズだった。そこに登場したのが、お手ごろ価格帯の望遠ズーム「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」と、超望遠ズーム「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」。テレコン使用時も含めた描写性能をチェックしてみた。
前編では「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」を描写を実写作例で見ていこう。
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』の人気連載「レンズパラダイス」。本記事では2023年11月号の「レンズパラダイス」に掲載しきれなかったアザーショットとインプレッションを紹介します。
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 実写チェック
- NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR 実写チェック
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
[マウント] ニコンZマウント [最大径×長さ] 約φ83.5×151mm [重さ] 約795g [レンズ構成] 14群19枚 [最短撮影距離] 0.27m (70mm時) 〜0.85m (180mm時) [最大撮影倍率] 0.48倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ67mm
参考価格 181,500円 (税込)
軸上色収差が補正されパープルフリンジは出ていない
テレ端開放で撮影。金属の反射にパープルフリンジはなく、軸上色収差はしっかり補正されている。ピントの合った部分は非S-Lineレンズとは思えないほどシャープな写りだ。フィルター径が67mmと小径のためか、テレ側開放は、ビネットコントロール [標準] でも周辺減光はそれなりに目立つが、ワイド側はそこまで目立たない。
最短撮影距離は短いがワイド側は周辺解像に緩さがある
望遠ズームとしては最短撮影距離が短く、テレ端で85cm、ワイド端で27cmと、特にワイド側で被写体に寄れるのが特徴だ。ただ、ワイド側の近接撮影時は、周辺画質の低下が大きく、F11くらいに絞っても周辺解像に緩さが残るため、主被写体を画面中央に配して、周辺はフワッとぼかした撮影が適している。
クセのある被写体は二線ボケになりやすい
想像していたよりも解像性能は高いものの、ボケ領域まで諸収差が少なくボケのコントラストが弱まらないため、ボケは硬め。コントラストの強い光点ボケに縁取りが出たり、木の枝や葉っぱの反射など、反射面に少しクセがある被写体の微ボケが二線ボケになりやすい。曇りで柔らかな光であれば、大口径ならではのフワッとしたボケが楽しめる。
1.4倍テレコンを使用しても解像低下は少ない
多摩動物公園のレッサーパンダ。動物園の撮影では180mmでは望遠不足なことも多いが、テレコンを装着できるのがこのレンズの強み。特に、1.4倍テレコンなら開放F4の明るさを保てるので、「タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」よりも暗いシーンに強く、解像の低下もさほど感じない。テレコンの価格が高いのが難だが、小型軽量と望遠力を両立したいときには悪くはない選択肢かも。
■Z TELECONVERTER TC-1.4x 使用
2.0倍テレコンを使っても実用レベルの画質
2倍テレコンを併用して、植物園のスイレンをドアップで撮影。2倍テレコンを使うと開放F値が2段落ちてF5.6になるが、思ったよりも解像やコントラストの低下は少なめで、十分実用になる画質。もちろん、「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」の描写には及ばないものの、登山など少しでも軽い機材で超望遠の領域も撮影したいときは便利な組み合わせだ。水面の反射に輪線ボケが出ているが、これはマスターレンズの特性でテレコンとは関係なし。
■Z TELECONVERTER TC-2.0x 使用
後編では「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の描写力をチェックします。
本記事で紹介していない実写作例と詳しい解説は『CAPA』2023年11月号でご覧ください。
※参考価格は記事公開時点の量販店価格です。